師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。第18回は、かつての上司と部下。
長谷川 晋が語る、島田 亨
シンガポールで、東京で、楽天時代に都合3年にわたって上司でした。僕は外資メーカー出身で、IT業界は初めて。島田さんは、僕にとって完全にニュータイプの上司。例えば、僕は考える時はフレームワークがあって、カチッと固まった型で考える。島田さんは、話を聞いて面白そうならすぐ後押ししてくれるタイプ。でも、スタイルは違うのに、最終的な結論でぶつかったことはありませんでした。これは本当に不思議でした。
転機は1年目の終わり、焼き鳥に誘ったことでした。僕が選んだ小さな店を、とても喜んでもらえて。カウンターで飲みながら、初めて人生相談をしたんです。将来の夢、キャリア、悩み......。そうしたら、上司としてでなく、人間として、人生の先輩として、本当に素でアドバイスをくださって。これをきっかけに、関係が大きく変わった気がします。
仕事だけではない。僕にとっては人生の師匠です。まだまだ学ばせていただかないと、です。
(これより、WEB限定テキストです)
それこそ経営者になってからは、「どこかいい会食場所はないですか」なんて質問までさせてもらっていて。長く海外にいましたから、わからないんです。しかも、こういう相談って、なかなかできない。「そうか、じゃあ相談を聞こう」と予約してくださった店が、お薦めの店だったりして、これまた本当に感激で(笑)。
僕を人に紹介してくださる時、「かつての相棒なんですよ」と言ってくれるんです。これは本当に嬉しいし光栄なんですが、ビジネス面でも人間力でも、僕はまだまだ未熟。「相棒」として、ふさわしい経営者になれるよう、頑張りたいです。
島田 亨が語る、長谷川 晋
シンガポールでの楽天アジアの立ち上げメンバーでした。異業種からの転身でしたが、短期間でキャッチアップする学習能力の高さに驚かされましたね。当たり前に学べないことを人並み以上の速さで学び、当たり前のことは人並み以上にちゃんとすっ飛ばさないでやる。ビジネスパーソンとしては、僕より圧倒的に能力が高いですよ。積んでいるCPUが違う。ただ、経営者としては僕のほうが経験がありましたから、伝えられることがあると思いました。
例えば、意思決定をしている様を近くで見せる。意思決定とは何かを感じてもらう。そんなふうに考えていたら、「意思決定って、どうやるんですか?」とストレートに聞いてきたりするわけです(笑)。改めて経営者としての、ポテンシャルの高さを実感しました。
フェイスブックへの転身は、会社としては痛かったけど、本当によかったと思いました。早く経営者として送りださないと、と考えていましたから、僕としても嬉しい出来事だったんです。
(これより、WEB限定テキストです)
今はかつての上司と部下ではなく、経営者対経営者として話をさせてもらっています。持っている課題や悩みは共通していますから、いろいろ僕も学ばせてもらっていますね。「こういうことは、晋だな」と思い浮かぶと連絡する。もちろん、フェイスブックメッセンジャーで(笑)。なんだかんだと2カ月に1回は会っています。
あくなき向上心からは、よりよい仕事を、という強い思いを感じます。それは、世の中をよりよくしていこう、というフェイスブックのマインドセットとリンクしているんでしょう。そういうところも大いにリスペクトしています。
フェイスブック ジャパン 代表取締役 長谷川 晋(左)
1977年生まれ。P&Gなどを経て2012年楽天入社。上級執行役員としてグローバルおよび国内のマーケティングを統括。15年フェイスブック ジャパン代表取締役に。
U-NEXT 取締役副社長COO 島田 亨(右)
1965年生まれ。リクルート、インテリジェンス取締役を経て、楽天副社長、楽天野球団社長などを歴任。エンジェル投資家としても知られる。