師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。第15回は、「GINZA SIX」の仕かけ人であるおふたり。
エマニュエル・プラットが語る、辻 慎吾
大好きな人なんです。何より、仕事だけでなく人に対するビジョンを持っている。辻さんは人が好きです。僕も大好き。そうでないと、ブランドや街づくりの仕事はできません。パリとは違って、変化し続ける東京をデザインするという辻さん率いる森ビルのダイナミックなビジョンにも感銘を受けますね。
3カ月に一度のGINZA SIXのステアリングコミッティーではよく席が隣で(笑)。自分のビジョンを説明するのに、シンプルな言葉で伝えていたのが印象的でした。プロフェッショナルだけれど、笑顔がありマインドセットがオープンで心が若い。このプロジェクトでお互い理解が深まり、とても仕事がしやすかった。日本語だと「わかり合える」人ですね。
そして、ふたりともおいしいものとお酒が大好き。2015年に初めて一緒に行った、アメリカ大使館近くの日本料理店は今も覚えていますよ。たくさんワインボトルが空きましたね。ムッシュ辻のチョイス、いつも楽しみなんです。
(これより、WEB限定テキストです)
GINZA SIXは、ハードルが高いプロジェクトだと思いました。百貨店を最先端のショッピングモールに変革する。世界に知られる銀座。しかもこの規模。インバウンドも多い。どんなものが提供できるか。どう世界にアピールできるか。ベストなものをつくらないといけなかった。
でも、ステアリングコミッティーでは日本の人たちの効果的な仕事の仕方を垣間見ました。スタッフによる準備の丁寧さ。会議のタイムキープ。そして、発言したいトップが手を挙げるスタイルも新鮮でした。ラテン系とは違う(笑)。いいパートナーシップが組めましたね。次はまた、新しいステージでチャレンジしましょう。
辻 慎吾が語る、エマニュエル・プラット
リーマンショック後の2009年頃に、オフィス移転の提案をさせていただいたのが出会いでした。15年に、GINZA SIXの事業者のトップが集まるステアリングコミッティーで再びお会いして親しくなったんです。
LVMHは世界一のブランド企業です。そこを長く率いるプラットさんを心から尊敬しています。ブランドに対する考え方はもちろん、これほど日本や日本文化を理解されている方もいない。実は、森ビルとLVMHは似ているところがたくさんあるんです。森ビルも街のブランディングを非常に大切に考えている。LVMHはデベロッパーとしても活動していて、ホテルもつくっている。また、お互い文化活動に力を入れていて、自前の美術館も持っている。
プラットさんとは、これまでもいろんな話をしてきましたが、考え方がとても似ていて、なんとも話が合う。今回は3カ月ぶりのご来日なので、この後の食事も楽しみにしています。シャンパンが、よく冷えていると思いますよ(笑)。
(これより、WEB限定テキストです)
街づくりをする際に大切なことは、自分たちの目で見て、自分たちの足で歩いて、目指すべき街の姿を考えることです。プラットさんもお店を出される時には、店の前に立ち、人の流れをご覧になると言います。お店ができた後も、必ず様子を見に行かれる。やっぱり、こういう視点を持っている人がリードする会社が、時代をけん引していくんだと改めて思いました。
そして世界に対する鋭い洞察、とりわけ日本についての深い理解と独自の認識は、いつもとても刺激になります。今後は国内のみならず海外のプロジェクトでも、ぜひご一緒させていただきたいと考えています。
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン パリ本社 シニアアドバイザー エマニュエル・プラット(左)
1948年パリ生まれ。幼少期の10年を東京で過ごし、パリで大学を卒業後、84年~2013年まで日本のLVMHグループ各社の代表職を歴任。現在はパリ在住。
森ビル 代表取締役社長 辻 慎吾(右)
1960年生まれ。横浜国立大学卒。85年に森ビル入社。2001年、タウンマネジメント準備室担当部長、06年に取締役、09年副社長、11年より現職。