GOETHE

MAGAZINE &
SALON MEMBERMAGAZINE &
SALON MEMBER
仕事が楽しければ
人生も愉しい

PERSON

2017.06.23

【松浦勝人】若い世代の感覚と働き方

素人目線

本当に大事なことは結局アナログで伝えるしかない

デジタルがどんどん進化をして、行き着くところまで行き着いてしまったら、どこかでアナログへの揺り戻しが起きるんじゃないかと最近感じ始めている。今どきの女子高生は、大切な話はLINEではしないという話を聞いた。LINEだと残ってしまうので、画面を撮影されてばら撒かれたら大変だから、重要な話は会って直接するという。

今、アーティストのオーディションに人工知能が使えないか、ということも考えている。エイベックスのアーティストの顔写真を学習させると、顔の骨格を解析して、「エイベックス黄金比」みたいなものが抽出できる。それでルックスを判定する。個人のFacebookに「いいね」がたくさんつけられているかどうか、SNSのフォロワー数が急激に増えているかなど、周囲の人がどう見ているのかという他薦の度合いも測定でき、人気者になる要素があるのか判定できる、そんな仕組みだ。

未読が出ると「早く返事をしなければ」と焦ってしまう

でも、どんな性格の人なのか、どんなことを考えているかまでは、人工知能にはわからない。プロデューサーが直接会って、膝を突き合わせて話をしていかないと、アーティストを育てていくことはできない。何度会っても「初めまして」みたいなそっけない感じでは、アーティストの隠れた才能を引き出すことはできない。最後の最後は、人間の感覚じゃなければわからないことがある。僕らの仕事にとっては、この「生身の感覚」こそが一番重要だったりする。

会社も同じ。エイベックスも在宅勤務、フリーアドレス、ペーパーレス、そしてSlackのような社内SNSを取り入れていくけど、デジタルな働き方が進むほど、生身のコミュニケーションが大切になってくる。

フリーアドレスというのは、最終的にはどこで仕事をしてもいいという働き方になる可能性があるということ。自宅にいてもいいし山手線に乗ってぐるぐる回りながら仕事をしてもいい。でもだからといって生身のコミュニケーションをなくしてもいいというわけじゃない。働き方や場所が変わっても、根底にあるのは人と人の「生身の感覚」。その瞬間、その表情などからにじみ出る情報をないがしろにするといい仕事はできない。

僕自身もデジタルに振り回されているところがある。LINEやSlackのアイコンに出る赤い未読のバッジ。あれが出てくると、「早く返事をしなければ」と焦ってしまう。バッジを残したままにしているのは気持ちが悪い。スマホに振り回され、仕事に集中できなくなる時もある。

働き方改革、現実の会社のなかでどう実現していくかが問題

だから、飛行機で移動する時が一番仕事が捗(はかど)る。電話もつながらない、ネットもつながらない。邪魔するものがないので集中できる。難しい考えごとをしなければならない時は、飛行機の中だと発想が次々と出てくるし、頭が整理できる。僕にとってはすごくいい環境。と思っていたら、最近Wi-Fiサービスとか始まって、ネットにつながってしまうんだよね。

今、頭のなかにずっとあるのが、働き方改革の問題。世の中は、残業をできるだけしない方向に動いていて、そこは僕も大賛成。長い時間働いた人が偉いという考え方なんてもうナンセンスだし、仕事は早く終わらせて、プライベートを充実させてほしい。休む時はしっかり休んでほしい。しっかり休まないと、いい発想なんか出てこない。

だから、方向性には大賛成なんだけど、じゃあ、それを現実の会社のなかでどう実現していくかというと、それがものすごく難しい。例えば、スタジオワークをする社員なんかは、自分が納得する完成度に達しないと、帰れと言っても帰らない。

「自分がやりたくてやっているんだからいいじゃないですか」と反論されてしまう。楽曲の完成度を高めたいというプロフェッショナルな自負心と、ルールをどう折り合いをつけていけばいいのか。でも彼らは、オンオフがはっきりしていて、3日スタジオにこもったら、3日休むみたいなことができるから、まだ方法はあるのかもしれない。

思いもつかない発想が出てくることを期待している

他の社員に関してもそう。就業時間中にテレビをチェックする、Facebookに何かを書く。僕らにとっては、音楽番組やワイドショー番組を見るのも仕事のひとつ。Facebookに書き込みをするのも仕事に関係している。でも、そんなことをやっていると、帰る時間は遅くなってしまう。じゃあ、時間内にテレビを見るな、Facebook禁止、早く帰りなさいと強制したら、多分エイベックスの業務はおかしくなってしまう。この矛盾をどう解決したらいいかずっと考え続けている。

僕の時代は、「24時間戦えますか」というCMが流れているような時代で、本当に睡眠3時間とかで働いていた。だから、まったく発想を変え、今の時代にうまくあてはまる働き方を考えろと言われても、自分ではなかなか思いつかない。でも聞けばわかる。「あ、そういうやり方をすればいいのか」と教えてもらえれば、理解することはできる。

だったら、僕が考えるより、働いている本人に考えてもらったほうがいい。若手社員に「こういう風に働きたい」と言ってもらったほうがいい。彼らは、僕とは根本から感覚が違っている。そういうこともあって社内にジュニアボードというプロジェクトを設置した。20代、30代の若手社員を中心に、会社のことを議論するプロジェクト。働き方だけではなく、新規ビジネスについても、僕なんかには思いもつかない発想が出てくることを期待している。

デジタルとアナログ。古い世代の感覚と若い世代の感覚。ルールと現実の現場。場合によっては矛盾するいくつもの要因が絡み合う方程式を解いていくのは僕だけでは難しい。僕にできるのは、方程式を解くため新しい組織や仕組みを用意し、若い人にできるだけ裁量権を与えて、意見をよく聞くことだと思う。複雑な働き方の方程式も解けかかってきている。4月からは、新しい組織が始まり、まもなく人事制度も変わる。エイベックスが変わっていく、最初の一歩が始まった。

PICK UP

STORY

MAGAZINE

1月号 Now on sale

キーワードは隠れ家!? 新しい時代の邸宅特集/表紙 近藤真彦

2021年1月号

最新号を見る

定期購読はこちら

MAGAZINE

1月号 Now on sale

キーワードは隠れ家!? 新しい時代の邸宅特集/表紙 近藤真彦

11月25日発売の「ゲーテ1月号」は新しい時代の邸宅特集! そのほか「仕事に効く”個性派”高級ウォッチ」や「賢者8人が選ぶ!秘蔵ワインリスト」も必見!

最新号を購入する

電子版も発売中!

定期購読はこちら

SALON MEMBER

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

Salon Memberになる