師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。第11回は、会社員時代の先輩と後輩。(WEBゲーテ特別版として、誌面の内容の続きが読めます)
枝廣 すぐ上の年次の怖い先輩が恐れていた先輩でした(笑)。新入社員時代、電通入社10年目の齋藤さんに社会人とは何か厳しく優しく教えてもらって。
齋藤 生意気な新人だったよなぁ。とにかく突っ張ってて。しかも、かわいげもなかった(笑)。でも、いいとこもあったから、もったいないと思ってた。
枝廣 最初はとにかく仕事がつまらなくて。これは果たして自分がやるべき仕事なのか、と。
齋藤 当たり前だけど、新入社員にできることは少ない。
枝廣 そうしたら、誰でもできることができないくせに、自分にしかできないことをやろうとするな、とバシッと教わって。
齋藤 テングになっていて、バキッと鼻をへし折られて成長した経験が自分にもあったから。
枝廣 日本全国114の放送局を全部覚えるのも試練でした。テストができなくて、罰ゲームにビッグマック4個食べて(笑)。
齋藤 そういえば、あったね、そんなことも(笑)。でも、会社で一緒だったのは1年だった。
枝廣 はい、送別会の幹事も引き受けさせていただきました。
齋藤 パイ投げはすごい企画だった。居酒屋で扉を開けると、ブルーシートが広がっていて、真ん中に等身大の僕の写真のパネルがあって、代わりに立てた、と(笑)。パイをさんざん浴びた後、みんなが寄せ書きしてくれた等身大のパネルを、タクシーで家に持って帰った(笑)。
枝廣 シュールでしたね(笑)。若い社員だけを集めた別の送別会では、独演会みたいにして話を聞いて。あの日に宣言したこと、今、実践されてますよね。
齋藤 えっ、何を言った?
枝廣 みんなを引きつれて歩けるような会社にする、って。実績も次々に上げて。「キャンディークラッシュ」が一般の人に知られる新しい方向に導いてくださったのも太郎さんですから。
齋藤 最初の頃はふんづまって、よく会社にいろいろ相談しに来ていたけど、あれよあれよと成長して、モバイルゲームは枝廣に聞け、なんて存在になったね。
枝廣 会社を辞める時も、転職する時も相談したら、思い切り励ましてもらいました。
齋藤 自分で選んだ道は絶対に成功する、が持論だから。成功させようとするからね、自分で。
枝廣 若い経営者もたくさん紹介してもらって。
齋藤 経営者って孤独だから。みんなの頑張りは励みになるし。
枝廣 いつか僕にご飯をご馳走させてください。どうしても払わせてもらえないので(笑)。
(これより、WEB限定テキストです)
齋藤 そういえば一度、黙って食事代を払ったことがあったよな。
枝廣 会社がうまくいき始めて、これくらいは払わせてもらいたいとこっそり払ったら、めちゃくちゃ叱られました。
齋藤 100万年早いって(笑)。
枝廣 なめんなよ、と(笑)。
齋藤 こういうもんでしょ。僕も先輩にずっとご馳走になってきたから。好きな後輩には、そういう先輩でいてほしいし。下にも慕われてかっこいいと思われたい後輩には、そうする。だせぇな、小せぇな、なんて思われてほしくない。先輩として、ずっと範でいないと。
枝廣 それでも一回でいいから、ご馳走したいです。引退の時でも、なんでもいいので、この日くらいは、とお願いしたいんです。
齋藤 ビジネスもそうだけど、本当に愚直で真面目できちんとしてるよね。もしかすると、やらなくていい努力だってしてる。
枝廣 これはゲームもクリエイティブも同じだと思いますが、同じことをやって通じる賞味期限はどんどん短くなっています。同じことを2度やれても3度はない。新しいチャレンジを、どんどんやっていかないと、ですよね。太郎さんの年に、太郎さんのようになっていたいんです。
dof代表取締役社長 コミュニケーション・デザイナー 齋藤太郎(左)
1972年生まれ。慶應義塾大学卒業後、電通入社。2005年dof設立。サントリー「角ハイボール」のコミュニケーション・デザインなどを手がける。
King Japan代表取締役 枝廣 憲(右)
1981年生まれ。一橋大学卒業後、電通入社。gloopsにてCMOを務めた後、2014年「キャンディークラッシュ」などのスマホゲームを手がけるKing Japanを設立。