セレブリティがこぞって旅のコーディネイトを依頼するのが、富裕層向けコンシェルジュサービス、アルカディアの才津香果(さいつかぐみ。以下かぐみ)さん。これまで自身の旅にかけてきた自腹総額は9億円超え。非日常を求め世界を回り続ける彼女が紹介する、脳がバグる驚きの旅とは。連載最終回は、タイ最北のゴールデントライアングルに位置するラグジュアリーリゾートで象の暮らしにお邪魔する。

象と遊ぶ。それこそが旅の目的
密林の鳥たちのさえずりで目を覚ます。タイ、ラオス、ミャンマーの3ヵ国に挟まれた地、ゴールデントライアングルのラグジュアリーリゾートで迎える朝。
「タイ北部チェンライ国際空港に到着後、リゾート専用車に乗りこみ約1時間半。そのあとはメコン川からボートに揺られてたどりつくリゾートです。80ヘクタールの広大な敷地内、その大半はジャングルですから、テラスから動物が見えることもあります。あくまでも主役は動物たち。彼らの居心地のよさを考え自然を残したリゾートなので、その住処にお邪魔させていただくという気持ちになります」
テラスに設置されたプライベートプールからはジャングルを見下ろすことができる。
「プールに浮かべば、まさに森に抱かれているような感覚に。さらにこの大自然の中のリゾートではなんと、象と戯れることができるんですよ」
ゴールデントライアングルのラグジュアリーリゾートは、環境保護団体「ゴールデントライアングルアジアゾウ財団(GTAEF)」と連携し、森林伐採や密猟で危険にさらされている象たちをリゾートエリア内に保護する。この象たちと戯れることができるのが「マイ エレファント」と呼ばれるアクティビティだ。象たちの負担にならないよう注意を払いながら、安全に象たちと遊ぶことができる。
「1日を通して、象と過ごせる色んなアクティビティが用意されています。朝食時にはレストランに象が遊びに来たり、象とともに過ごすアフタヌーンティー、ロマンティックディナーまであります。なかでも私のお薦めは、象と森の中を散歩しながらのピクニック。シェフに好みを伝え、自分好みのランチBOXを持って、象と一緒にジャングルに出かけてみてください。
彼らは早く走ることもできるのに、私達と同じ速度でゆっくり歩いてくれるんですよ。タイミングが合えば、象と一緒に川に入って遊ぶことも。象は鼻で水を吹きかけてきて、彼らの仲間に入れてもらえたようでとても嬉しかったです。散歩中に象とコミュニケーションをとる方法も教えていただき、少しだけ意思疎通ができるようになり、帰るころには毎回、寂しい気持ちで一杯になってしまうんです。私は世界中で訪れたいリゾートが沢山あるので、気に入っても何度も通うリゾートは数少ないのですが、ここだけは彼らに会いに、何度も通いたくなってしまいますね」
夜は、専用の四駆に乗りこみ、施設内でもっとも高い場所にある見晴台からミャンマーに沈む夕日を眺める。タイやラオスのスパイスを効かせた料理をディナーで堪能したら、再びロッジで眠りにつく――。日々仕事のタスクに追われていても、この日だけはきっと、象とともに歩いた広大なジャングルの夢を見る。

才津香果/Kagumi Saitsu
1982年生まれ。アルカディア代表取締役。国内外の富裕層に向けた、会員制のコンシェルジュサービス会社を運営。ギフトのセレクトから、ラグジュアリーな旅の手配までオーダーメイドで富裕層の要望をかなえる。 Instagram:@kagumi.trip