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2024.07.10

小山薫堂が山形に通う理由。美食&名湯のオーベルジュ「オステリア シンチェリータ」

進化する日本のオーベルジュたち。食と湯に一家言を持つ小山薫堂さんがその真価を堪能するために山形を訪れた。【特集 オーベルジュの誘惑】

「オステリア シンチェリータ」のカウンターで談笑する小山氏
Kundo Koyama
1964年熊本県生まれ。放送作家、脚本家、地域・企業のプロデューサーやアドバイザーなど多彩なジャンルで活躍。2025大阪・関西万博では、食のパビリオン「EARTH MART」をプロデュースする。また、「入浴」という行為を、文化としての「道」に昇華させる「湯道」を提唱し、初代家元として活動する。

3棟のみの美食の温泉オーベルジュ

その地は魔法の盆地と呼ばれている。

最上川の上流に位置し、四方を2000m級の山に囲まれた山形県南部に位置する置賜(おきたま)盆地は、水と土壌に恵まれた地域。乾いた風と豊富な日照量、夏は昼夜15℃にもなる寒暖差が、味わい深い米や野菜、果物など、この地ならではのさまざまな農作物を育てる。

さらに、県が認定する19人の「やまがた有機農業の匠」のうち、9人がこの地から選ばれている。豊かな自然のもと、熟練の生産者が心をこめてつくる逸品の食材により、置賜盆地は魔法の盆地と呼ばれるのだ。

そんな置賜盆地に2023年4月に誕生したのが、3棟のみのオーベルジュ「オステリア シンチェリータ」。そして、ここに足しげく通うのが、食と湯を愛してやまない小山薫堂さんだ。

「赤湯温泉にある旅館『山形座瀧波』の施設の一部をリニューアルして生まれたのが『オステリア シンチェリータ』です。『瀧波』は開湯930年以上の歴史ある赤湯温泉の老舗。僕は源泉の純度を守るために、源泉を空気に触れさせることなく足元から湧出させている、ここの岩風呂が大好きなんです。一滴も水を加えない十割源泉がとにかく素晴らしい。

その『瀧波』の南浩史社長が新たにオーベルジュを手がけたというので、オープンしてすぐに滞在したら、本当によかった。以来、何度か訪れています。南社長は『赤湯温泉を日本一の観光地に』と言う熱量溢れる方。常に新しいことにチャレンジする、その淀みなきパッションは、まさに“源泉掛け流しの情熱”です(笑)」

山形新幹線・赤湯駅からクルマで5分。小山さんが「オステリア シンチェリータ」に到着すると、まずはウェルカムスプマンテと地元の銘菓「なんじょだべ」や山形名物の玉こんにゃくなどでお出迎え。その後、部屋へ通される。この日宿泊するのは、緑を基調とした部屋「GRANO」だ。

客室3棟はいずれもメゾネットタイプ。内装は山形に縁のある日本画家、福王寺法林の屏風絵を主役に、絵画の色を基調に整えられている。「天童木工」の家具とともに、フィン・ユールの名作椅子が置かれているのは、その製造を県内の工房が担っていることから。そのほか館内履きの下駄も山形のものを用意するなど、メイド・イン・山形にこだわっている。

食べた後の余韻をベッドの中で味わう

小山さんは別棟の「湯室」で十割源泉の湯を堪能した後、ディナーへ。イタリアンのダイニング「スタンザ・デッラ・シンチェリータ」は、天井高4.7mの開放感溢れるオープンキッチン。8名のカウンター席を中心に、薪窯とイタリア製「ベルケル」の生ハムスライサーを備えた、このオーベルジュの心臓部ともいうべき場所だ。

シェフの原田誠氏は新潟県三条市の出身。地元のイタリアン「イル・リポーゾ」ではミシュラン(新潟2020特別版)にて一つ星を獲得。その名は新潟県内のみならず、食好きの間では全国で知られていた。その原田シェフが南氏と出会い、新潟でもなく東京でもなく、山形の地で新たな出発を決めたのだ。その理由は南氏の猛アタックに加え、置賜盆地の食材に惚れこんだから。

「置賜盆地の圧倒的な寒暖差が野菜や果物を美味しくしてくれます。加えて熱心な生産者も多く、年間を通して常にいい食材が手に入ります。長澤大輔さんによる舟形マッシュルームはスペシャリテのひとつになりました」(原田シェフ)

「オステリア シンチェリータ」の生ハムスライサー
フェラーリに例えられるイタリア製の最高級品「ベルケル」の生ハムスライサー。

この日のメニューは全13品。その最初のほうにタルト、コンソメ、クロケットの3品でマッシュルームは供された。それを口にした小山さんは言う。

「豊かな大地の味がします。地元食材の魅力を出しながらも主張しすぎることなく、イタリアンに着地させるセンスと技は流石」

メインの米沢牛はステーキで提供。薪で丁寧に火を通したステーキはとろけるような食感だ。肉の旨味、脂の上品な甘味にうっとりさせられる。

「『シンチェリータ』とは、イタリア語で『誠』の意味。原田シェフの名前からとられたそうです。そのシェフの“誠心誠意”の料理には自然への感謝、生産者への敬意が感じられます。南社長はもちろん、他県からやってきた原田シェフも、この地を誇りにしている。その想いが伝わってきます」

ディナーの後、部屋へ帰って温泉に浸かり、ワインを飲もうかと思っていると、玄関からチャイムの音が。部屋に運ばれてきたのは、夜食のための少量のリガトーニのボロネーゼだ。小山さんは嬉しそうに言う。

「ルームサービスではない、オーベルジュならではの気の利いたもてなし。街場のレストランでは味わえませんよね。そもそも食というものは、食べて終わりではなく余韻を楽しむもの。このオーベルジュでは、その余韻がずっと続きます。余韻が消えてしまう前にふかふかのベッドで眠りにつく。それって最高じゃないですか?

僕はいつも思っているのですが、究極のオーベルジュとは飛行機のファーストクラスではないか、と。食べた席で眠る、これ以上の幸せはありませんから。オーベルジュとは、食の幸福感を夢のなかに持っていくことができる、そんな特別な場所なのです」

【特集 オーベルジュの誘惑】

この記事はGOETHE 2024年8月号「総力特集:オーベルジュの誘惑」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=ゲーテ編集部

PHOTOGRAPH=太田隆生

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