京都に生まれ、京都で育ち、今も暮らす生粋の京都人、中村藤吉本店 代表取締役社長の中村省悟さんに、足しげく通う場所、思い入れのある品を教えてもらった。京の旦那衆のとっておきの京都とは──。【特集 京都の秘められしスポット】
京都の北の果てで市内とは違う京都を感じてほしい
他府県から来られる方に、僕が京都観光でお薦めするのは、京都の町を歩いてほしいということです。都市化された町の中に、大小さまざまな京都らしさがあって、それを自分で発見した時の嬉しさは格別です。
例えば雲ケ畑や賀茂川。雲ケ畑は賀茂川の源流地といわれる山間地域。市街からは、クルマで40~50分はかかる場所です。ここまで北に上がると、中心地とは違ったのんびりとした雰囲気が広がっています。神社仏閣や名所が多い観光地としての京都とはまた違ったのどかな場所。けれど歴史を調べてみると、さまざまな逸話も残っている。少し足を延ばして、出かけてほしい場所です。
逆に市街なら、隠れ家的な料亭や京都人が通う店を訪ねるのもいい。一日一客のみをもてなす「光安」は、正統派の和食店。白味噌椀は、ここが一番美味しいと僕は思っています。地元人行きつけ店なら「バブルガム」。イタリアンベースのレストランですが、ラーメンが美味しくて。確か『Ramenグランプリ2021-2022』の異業種部門でグランプリを受賞、店主の味のセンスが抜群なんですよね。
もしも、老舗の料亭やお茶屋へ行かれるなら、精一杯気負い、プレッシャーを感じて過ごしてほしい。なぜなら、年を重ねるとなかなかそんな感覚は経験できるものではないから。初めての緊張感や何も知らないという独特の焦りを、京都限定で楽しんでいただければと思います。
バブルガム
住所:京都府京都市下京区柏屋町12
Illustration=岡田成生