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TRAVEL

2022.03.31

モール温泉、毛蟹、アイヌ文化。白樺に囲まれた湖畔の宿「界 ポロト」を訪ねて

星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」。その19番目となる施設が、2022年1月、初めて北海道に開業した。選んだのは、アイヌ文化の復興、発展の拠点となるウポポイに隣接した地。アイヌ語で“大きな湖”を意味するポロト湖畔である。華美な観光地でもリゾートでもなく、ひたすら大自然に囲まれた、新しいレイクビューリゾートを作った星野リゾートの目論見とは? 新千歳空港から南西に車を40分ほど走らせ、まずは体感してみようと編集部が訪ねてみた。

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視界の先に広がる絶景と開放感に驚く

界 ポロトに到着すると、まず目にするのは白樺を多用したデザインである。聞けば館内に500本の白樺を使っているのだとか。アイヌ文化を尊重し、異なる民族との共生を体験できる施設を目指し、建築はNAP建築設計事務所の中村拓志氏に依頼。建物はポロトコタン(アイヌ民族の集落)に着想を得て、敷地内にポロト湖を大胆に引き込んだレイアウト。

コンセプトは“ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿”。客室のみならず、すべての施設からポロト湖がつねに視界に広がる開放感が、この宿の魅力なのだ。

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車寄せから建物のアプローチへと、白樺の柱がずっと続く。

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アイヌ民族の集会場をイメージした暖炉がロビーの中心に。

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ロビーから眺めるトラベルライブラリー。旅にまつわる本を備え、宿泊客はコーヒーやハーブティーなどを無料で利用できる。

客室はすべてポロト湖に面した造り。アイヌ民族が暮らすチセ(家)から着想を得たデザインで、その名称は「□の間(しかくのま)」とある。白樺の柱があるのはもちろん、木彫りのオールなどアイヌ民族の生活を思い起こさせるアートやファブリックなど、随所にアイヌの文化を感じさせる「ご当地部屋」という、星野リゾートならではのインテリア。

驚いたのは部屋の中央にあるテーブルだ。天然石を貼り合わせ、真ん中がほのかなオレンジに灯っているのは、宿泊者が「炉」を囲み、団欒してほしいという思いが込められているんだそう。部屋の調光を落とし、オレンジ色の灯りを眺めていると、心がなぜか温かくなり、旅の疲れを忘れて話が弾んでしまう。

客室は全4タイプ。眼前のポロト湖を眺めながらの露天風呂やテラスがついた部屋、さらに大きな2面窓がついた角部屋もある。

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定員2名の露天風呂付きの特別室。テラスで酒を飲みながら、時間によって様相が変わる湖を眺めるのが楽しい。

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特別室の露天風呂。冬季は雪に覆われたポロト湖を眺めながらの朝風呂がオススメ。

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部屋の鍵には、アイヌ文化から着想を得た文様が彫られたキーホルダーが。

世界でも珍しい“美肌の湯”モール温泉に浸かる

楽しみなのは温泉である。なにせここ白老町は、世界的にも珍しい“モール温泉”が湧出する街である。モール温泉は天然植物由来の腐植質の有機物を含有する茶褐色の湯が特徴。皮膚の再生を促す作用などを持ち、“美肌の湯”としても名高い。

界 ポロトにはふたつの温泉がある。まず夕食前に、白老町民からも愛されている「○湯(まるのゆ)」に出かけてみる。なんとも不思議な、まるで洞窟にいるかのようなドーム型の空間だ。高さ9.5mの見上げた天井に丸い穴があき、そこから夕暮れの柔らかい光が差し込んでいる。食事前のひと風呂にぴったりな、心が落ち着く肌にやさしい湯である。部屋に戻ると、空の色が夕暮れのグラデーションになって、湖を覆う雪とともに幻想的な光景に。お腹もすいてきたので、少し早めの夕食にでかけてみることにした。

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洞窟のような空間の「○湯(まるのゆ)」。

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陽が落ちる寸前のトワイライトタイムは格別な美しさ。写真右は界 ポロトのシンボルである湯屋。

毛蟹とホタテのブイヤベース鍋は、北海道ならではの味わい方

適度なプライベート感が保てる半個室の食事どころでは“毛蟹と帆立貝の醍醐鍋”がメインの特別会席をいただいた。先付け、お椀の次にアイヌ民族が交易に使った丸木舟をイメージした宝楽盛り(八寸やお造りなど)が目の前に一隻ずつ並び、一気にテンションが上がる。目に楽しく、舌に味わい深く、驚くほど箸が進む。

そしてメインの鍋はブイヤベース仕立て。毛蟹は濃厚な甘みを放ち、北海道では祝いの席に欠かせないご馳走というのがうなずける。鍋の出汁はチーズを加えた雑炊で〆、思い残すことなしの夕食だ。

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界 ポロトでの夕食は、基本会席と特別会席の2つから選べる。

翌朝は少し早起きして、旅館のプログラムのひとつである「現代湯治体操」に参加した。場所はロビーの横から庭を抜け、とんがり屋根の湯小屋「△湯(さんかくのゆ)」の中にある湯上がり処だ。アイヌ文化の建築の特徴である“ケトゥンニ”を基本構造としたとんがり屋根は、アイヌ民族が狩をする際に利用した小屋だったと聞く。

湯上がり処には備え付けのドリンクやアイスキャンディーが用意されている。この日のドリンクは、ミネラル豊富な“イタドリ茶とほうじ茶のブレンド”と、ビタミンたっぷりの“カシス酢”。どちらも入浴で体から奪われるものを補給するので、入浴の前後に飲むことを勧められた。そしてガイド役の“界の湯守り”に教えてもらって全員で体操を。それはユニークな丹頂鶴をイメージした動きで、思い切り身体を伸ばしたり、深い呼吸をしながら肩や首を動かし、疲れをリセットする体操。これでタイミングよく、目の前のポロト湖に鶴が飛来してくれたらなーなど考えながら約15分の行程。

身体がほぐれたところで、ドリンク2種を交互に飲んで温泉へ。△湯には内風呂と露天風呂があり、今は雪景色であるが、夏になると露天風呂と湖がつながるようなインフィニティ感を味わえる。内風呂は源泉掛け流しの“あつ湯”と、ゆったり長くつかれる“ぬる湯”がある。3つの湯を繰り返し楽しんでいると、あっという間に時間が経ち、慌てて朝食へ。

朝ごはんは、鮭のつみれと白味噌、じゃがいもの入ったすり流し鍋が胃袋を温め、なんともやさしい味で和む。がごめ昆布入り山わさび、いくらの醤油漬けなど、北海道らしい食材が並ぶ和食膳は、しっかり食べ応えのある朝食だ。朝のポロト湖には、早くもワカサギ釣りに来た釣り人たちがテントの設置している。その姿を眺めながら、またも清々しい開放感。ポロト湖の懐にひたるとは、まさにこの気分なんだと改めて感じる。

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△湯は窓の形も何もかも三角。内湯から露天風呂へと抜ける光が美しい。

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手前がカシス酢、奥がイタドリ茶とほうじ茶のブレンド。

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朝ごはんは、じゃがいもや鮭など、地域色を感じる食材や調理法で作られる和食膳。

アイヌの文化も学べ、登別や支笏湖も近い

朝食の後は、ロビーの暖炉を囲み、界 ポロトが独自のご当地の文化を体験してほしいと提案する「ご当地楽」というプログラムで、アイヌ民族が魔除けとして日常的に見につけていた“イケマ”という植物を使ったお守り作りを体験した。また隣接するウポポイには、アイヌの歴史や文化を学べる「国立アイヌ民族博物館」や伝統芸能の上演なども行われている。家族や友人とともに、今まで知らなかった北海道の歴史を学ぶ機会はぜひとも作るべき。さらに連泊するなら、登別や支笏湖など、足を伸ばせる観光地にも出向きたい。北海道の大自然を味わう拠点として、開放感を存分に味わえる界 ポロトはお勧めしたい宿である。

界 ポロト
住所:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
TEL:0570-073-011(界予約センター)
客室数:42室
料金:1泊¥28,000〜(2名1室利用時1名あたり、サービス料・税込、夕朝食付)
アクセス:JR白老駅より徒歩約10分、新千歳空港より車で約40分

TEXT=今井 恵

PHOTOGRAPH=杉村 航

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