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2021.09.06

こんな無人島ライフがあったのか!? 絶海の孤島「ジープ島」に身ひとつで移住した男の生きざま

エグゼクティブが行きつくのは、一国一“島”の主!? 無人島に魅せられ、自らの夢を実現するために熱狂する男たちの三者三様の無人島ライフを徹底取材。無人島には、無限の可能性とロマンがある!

ジープ島

西太平洋の島々が集まり形成される国家、ミクロネシア連邦。なかでもひときわ小さいのがジープ島で、直径はわずか34mほど。

ブルーラグーンジャパン代表 吉田宏司「自然のなかにいると“本当の自分”が見えてくる」

日本から南南東へ約3800㎞、赤道北側に沿うように島々が連なるミクロネシア連邦・チューク諸島。原始のままの豊かな自然が息づき、ダイビングの名所としても知られるこの美しい地に、ブルーラグーンジャパン代表の吉田宏司氏が移住・開拓し、ジープ島と名付けた小さな島がある。

ダイビングクラブを主催し、世界中の海を巡っていた吉田氏が、初めてチューク諸島を訪れたのは1989年。そこでダイビングショップを営むキミオ・アイセック氏と出会うのだが、これが吉田氏の運命を大きく転換させることになる。

「キミオは日本語が堪能で、『ようこそいらっしゃいました』と迎えてくれたんですが、その笑顔がキラキラ輝いていてすごく素敵だったんです。ショップは簡素だし、乗っているトラックはボロボロでしたけど(笑)」

島周辺の海

島周辺の海はダイバー垂涎(すいぜん)の抜群の透明度を誇り、珊瑚と熱帯魚の“競演”も見物。

会社経営者として成功を収め、買いたいモノを買い、夜の街を毎日のように飲み歩く。吉田氏がこれまで送ってきた生活とは対極にある暮らしが、そこにはあった。

「モノを手にすることを原動力に、急かされるように働いてきたけれど、そんな生活にちょうど疑問を感じ始めた頃でした。だから何も持たない、けれど豊かな人生を送っているキミオに惹かれたのかもしれません」

その後吉田氏はダイビング客を連れ、たびたびチューク諸島を訪問。そして’97年、「ダイバーを大勢送客してくれたお礼がしたい」というアイセック氏とその息子からの申し出に、「あの無人島を買ってほしい」と頼む。それが、ダイビング中に昼食をとるためによく上陸していた島、現在のジープ島だった。

吉田氏と妻

吉田氏と妻、日本人の友人たちでパーティを楽しんでいた時の1枚。

「200歩も歩けば沿岸を一周できるほど小さく、本来は珊瑚に囲まれた美しい島。でも、当時はダイナマイト漁の影響で珊瑚礁が3/4くらい死滅していました。ここを、360度珊瑚で囲まれた島に戻したいと思ったんです。それに、一度何もかも捨てて自分の人生を見つめ直したいという気持ちもあって」

アイセック親子は、約束どおりその無人島を購入。40歳だった吉田氏は、現地の青年ひとりだけを伴い、リュックひとつでその島に移住し、開拓を始める。

「鳥のさえずりで目覚め、夜は満天の星の下で眠る。『これぞ理想の暮らしだ!』と、感動しきりでした。まあ、それも最初の頃だけでした(笑)」

自然の織り成す美しいパノラマ

朝焼けから満天の星まで、自然の織り成す美しいパノラマを堪能できる。

美しい珊瑚礁に囲まれた“奇跡の島”で見た夢と現実

この素晴らしさを多くの人たちと分かち合いたい。その想いを強め、翌年には本島から木材を運び、現地の人の手を借りながらコテージ造りに着手。とはいえ、海が荒れて本島との船の行き来が途絶えれば、食料は枯渇し、時に猛烈な嵐に見舞われる。想像以上の過酷さに移住して間もなく体調を崩し、この決断が正しかったのかと逡巡(しゅんじゅん)した。

「環境の変化はもちろん、自給自足の暮らしをする現地の人に仕事をしてもらう難しさにも悩まされて。時間をかけながら手を替え品を替え、信頼関係を築いていきました」

こうした吉田氏の長年にわたる努力が実り、ジープ島は美しい珊瑚礁に囲まれた“奇跡の島”に。そして今、多くの観光客を受け入れるようになっている。

「自然に身を投じていると、自分の本質があぶりだされ、本当に必要なものが見えてくるんです。都会では、たくさんの人と交流しているようで、実は相手のことをよく知らなかったりするけれど、この島でともに過ごした人たちとは、たとえ1泊の付き合いでも、心と心でつながれる。肩書や属性を忘れ、お互いに素の自分で向き合えるから」

本当の自分、そして一生ものの付き合い。無人島での時間は、豊かな人生を開く扉になるのかもしれない。

 

ミクロネシアンミツスイ

ミクロネシア連邦の国鳥、ミクロネシアンミツスイ。

小屋

移住当初は、屋根があるだけの小屋で寝起きしていた。

イルカの家族

体調やメンタルが弱っていた吉田氏を癒やしてくれたイルカの家族が、今も島周辺にやってくるという。

遊んでいた頃の吉田氏

30代半ば、東京で猛烈に働き、遊んでいた頃の吉田氏。

キミオ・アイセック氏

吉田氏の人生を変えた、キミオ・アイセック氏。伝説のダイバーとしても知られ、世界中のダイバーたちがアイセック氏に会いに訪れていた。

 

Hiroshi Yoshida

Hiroshi Yoshida
1956年新潟県生まれ。ダイビングクラブを主催して世界の海を巡り、40歳でジープ島に移住。2020年、故郷の新潟県上越市に拠点を移し、ブルーラグーンジャパンを設立。

Jeep Island
ブルーラグーンリゾートのオーナー、キミオ・アイセック氏から吉田氏が開拓の許可をもらって誕生。15本のヤシの木の間に2棟のコテージが設けられただけの小さな島ながら、周囲を珊瑚礁に囲まれ、絶景を享受できる。

面積:外周約110メートル 
アクセス:グアム国際空港経由でチューク国際空港へ、同空港からブルーラグーンリゾートまでクルマで約30分、そこから船で約30分 
問い合わせ:ブルーラグーンジャパン TEL:03-5951-0122

ゲーテ10月号では「所有する醍醐味・無人島&超絶景ステイ・ホテル」大特集を掲載! 完全保存版です。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=宮地岩根、大塚敬宜、斎藤貴聖

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