日本の蒸し風呂の伝統と欧州のサウナの魅力が融合
サウナ界のミシュラン『サウナシュラン』で2年連続グランプリに輝く、今、全国のサウナーが憧れる場所がある。佐賀の御船山楽園ホテル「らかんの湯」のサウナだ。御船山楽園は鍋島藩の鍋島茂義公が1845年に完成させた庭園。数十万本の植物が四季折々の花を咲かせる庭は国指定記念物でもある。
その園内に2019年に生まれた男性大浴場のサウナは、スリットからひと筋の光が差しこむ黒が基調の空間。翌年につくられた女性のサウナは白亜の洞窟のようだ。なぜ175年の歴史を持つ庭園にこのようなサウナが生まれたのか。サウナ設置の理由について、代表の小原嘉久氏は「湯治文化を現代のニーズに合った形で再興したい思いがありました」と語る。
「今の社会の人々は温泉療養に1週間以上もの時間を費やせませんが、一方で疲労回復や気分転換の効果は強く期待している。そこで温泉にサウナの“ととのう”感覚が加われば、短期間の利用でも身体が感じる変化がわかりやすくなると感じたんです」
そしてこの地には、“日本のサウナ”につながる歴史もあった。「御船山で五百羅漢(ごひゃくらかん)を彫った奈良時代の僧侶・行基は、サウナとほぼ同じ原理の蒸し風呂をつくった人物でもありました。その文脈も伝えたいと考え、女湯のサウナは五百羅漢が安置された洞窟をイメージしています」
一方の男湯のサウナのイメージの源泉は「茶室」だ。
「室町時代には蒸し風呂で闘茶をしたり、飾りつけられた調度品を愛でたりする『淋汗茶の湯(りんかんちゃのゆ)』の文化がありました。その歴史も踏まえ、スリットから光が差しこむ男湯のサウナは茶室の小間をイメージしてつくったものです。またサウナ専用に焙煎・抽出した佐賀県嬉野産ほうじ茶でロウリュもでき、煎ったお茶の香ばしさも体感できます」
なお女湯にはサウナストーブに乗せて香りを愉しむキューゲルを設置。喫茶室も併設した。そうしたアイデアは小原氏が欧州で見てきたサウナを参考にしたものだ。つまり「らかんの湯」は、古今東西のサウナの伝統や魅力が融合した場所なのだ。なお今後は、さらに面白いサウナも新設予定だという。
「サウナストーンに御船山の石、薪に武雄の間伐材、ロウリュには武雄の温泉水を使います。自然の恵みを生かした森の中のサステナブルなサウナです」
御船山楽園ホテル らかんの湯
住所:佐賀県武雄市武雄町武雄4100
TEL:0954-23-3131
客室数:37室
料金:¥12,500~(1泊2食付2名1室利用時の1名料金)
施設:メディテーションサウナ2、ミストサウナ(女湯のみ)、水風呂、内湯、露天風呂、岩盤浴、喫茶室(女湯のみ)、食事処、大広間ほか
※サウナは6:00~10:30のみ男女入れ替え。敷地内にある竹林亭に宿泊のゲストも利用できる。
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Yoshihisa Kohara
1975年佐賀県生まれ。大学卒業後、東京でのクラブDJの活動を経て、御船山観光ホテル(現・御船山楽園ホテル)入社。2007年より同代表。「らかんの湯」は「サウナシュラン」にて、2019・20年にグランプリ獲得。