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2019.07.27

【中田英寿/に・ほ・ん・も・の外伝】佐賀牛を育てるプロvs牛肉を食べるプロ<福岡/佐賀②>

2009年から’15年の約6年半、のべ500日以上をかけて、47都道府県、2000近くの場所を訪れた中田英寿。世界に誇る日本の伝統・文化・農業・ものづくりに触れ、さまざまなものを学んだ中田が、再び旅に出た。

佐賀牛

佐賀牛と呼ばれるには、神戸牛よりも厳しい基準をクリアしなければならない

今では全国各地が力を入れているブランド牛だが、「佐賀牛」への取り組みは、1980年代から。2000年代になり東京で人気が出て、全国区の知名度を得ることになる。現在では世界中に輸出されちる佐賀牛の生産現場である畜産農家、佐賀県上峰町の米倉茂さんのもとを訪ねた。米倉さんは、全日本牛枝肉コンクールで最高位の名誉賞に輝いたこともある佐賀牛のスペシャリストだ。

一方の中田英寿も負けてはいない。石垣牛、宮崎牛、但馬牛、神戸牛、松阪牛、米沢牛、仙台牛……全国を旅しながら各地の生産農家を訪ね、ブランド牛を食べてきた。米倉さんが育てるプロなら、中田は牛肉を食べるプロだ。

「現在は県全体で170戸の畜産農家が佐賀牛を生産しています。佐賀牛と呼ばれるには、神戸牛よりも厳しい基準をクリアしなければならない。統一した飼料で育てて、30ヵ月ほどで出荷することになります」

牛舎のなかには、大きな黒毛和牛。牛の飼育するうえで、いちばん気を使うのは「病気とストレス」。確かにまわりを田んぼに囲まれ、爽やかな風が吹き抜ける米倉さんの牛舎は広々としていて、牛たちも快適に過ごしているように見える。佐賀牛といえば、上質な霜降り牛。こうしてのびのびと育った牛だからこそ、やさしい甘みを持った脂を身につけることができるのだ。

「中田さん、ぜひ食べていってください」

牛舎を出ると、そこには炭焼コンロの用意。午前中にもかかわらず、地元の日本酒も用意されている。早速、佐賀牛を網の上に乗せると、落ちた脂が煙を上げ、食欲をそそるにおいが立ち込める。タレも用意されていたが、中田は焼きあがった佐賀牛をそのまま頬張る。

「脂が多いと思いましたが、軽く炙っただけで落ちていくので意外とさっぱり食べられますね。赤身にもしっかりと旨みがあります」

まさにそのとおりのおいしさ。脂身は口のなかでとけるよう。タレをつけなくても抜群のおいしさだ。嬉しそうな米倉さんや地元の方々を前に、中田からの質問。

「最近は霜降りよりも赤身肉の人気が出ていいます。海外から来た友人も日本の和牛は脂が多すぎるという人もいます。たとえば、佐賀牛のよさをいかしながら、あえて脂身を減らした牛肉をつくることはできないんですか?」

「そういう流れがあることは理解しているんですが、やはり市場に出すと霜降りのほうが倍くらいの値段になるんです。同じ時間をかけて育てるとなると、どうしても経済的には霜降り牛を育てたほうがいいとなってしまいます」

「いまのマーケットだけでなく、将来的なことも考えてみてもいいのではないでしょうか。特にこれからもっと世界を相手にビジネスをすると考えたら、霜降りではない佐賀の牛肉というのもあっていいし、食べてみたい気がします」

酒もはいって、議論は白熱。「知る」だけでなく「提案する」ことも増えてきた中田の旅。世界を知る中田の意見は、米倉さんにとっても新鮮だったのではないだろうか。もしかしたら中田は、牛のブランディングでもプロフェッショナルを目指しているのかもしれない……。

「に・ほ・ん・も・の」とは
2009年に沖縄をスタートし、2016年に北海道でゴールするまで6年半、延べ500日以上、走行距離は20万km近くに及んだ日本文化再発見プロジェクト。"にほん"の"ほんもの"を多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、新たな価値を見出すことにより、文化の継承・発展を促すことを目的とする。中田英寿が出会った日本の文化・伝統・農業・ものづくりはウェブサイトに記録。現在は英語化され、世界にも発信されている。2018年には書籍化。この本も英語、中国語、タイ語などに翻訳される予定だ。
https://nihonmono.jp/

COMPOSITION=川上康介

PHOTOGRAPH=淺田 創

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