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2016.12.01

山中伸弥「研究者魂 経営者脳 ~iPS細胞実用化を目指して~」Study2

亡くなった私の父は、東大阪市で小さな町工場を経営していました。「お前は経営者に向いていない」と言われ、医師を志すように。そんな私が今や500人近くを率いる立場になり、経営者の難しさを痛感しています。研究者として頑張ってきた自負はありますが、経営者としては自信も経験もないのです。

研究者魂2

Study2「研究者としてのジレンマ。経営者としての学び」
マラソンでリフレッシュ。自分だけの時間を作る

30代で初めて研究室を持った時は、10人未満の家族のようなチームでした。一番実験が上手かったこともあり、私は自分の行っている通りにできるよう指示をして、論文や実験の生産性がすごく高かったのです。

iPS細胞を作製してからは、研究リーダーが集まり、iPS細胞研究所(CiRA[サイラ])の前身となるiPS細胞研究センターが2008年に設立。すべて合わせると数十人の集団です。私はこれまで同様、すべてに口を出し、すべてを把握しようとしましたがまったく上手くいきません。困り果てて口を出さなくなったところ、とたんに成果が出はじめました。当時40代だった私は、こんな楽な仕事はないと思っていました。

研究者に戻りたいけれど、戻れない

研究者魂2-1

2010年にiPS細胞研究所に改組された当時、メンバーは150人ほどで、今では500人規模の組織になりました。約30の研究グループがあるため、何もしないと各所でさまざまな問題が起こります。全体をまとめるために本当の意味での経営能力が必要になったのです。出すべきところに的確に口を出す、という微妙なさじ加減が要求されますがこれが本当に難しい。裸の王様のようになって話が全然あがってこないのは非常に危険です。口出しするタイミングをどう見逃さずにいられるか常に意識するようにしています。

経営者として模索する日々ですが、今の自分の生き方が合っているのか悩むこともあります。本音を言いますと、現役の研究者でもありたいのですが、私は両方を同時にできません。研究者に戻りたいけれど、戻れないというジレンマが毎日あります。なので、自分だけの時間を必ず作るようにして、マラソンで気持ちを整えています。何も考えず、景色を見ながら走るのがいい発散になります。マラソンが趣味ということもあり、年に2回はiPS細胞研究基金のPRのため、マラソン大会に出場しています。今年、54歳になり、妻には「いい加減にやめたほうがいい」と言われますが、ただ休むよりも走っているほうがリフレッシュできるのです。

iPS細胞実用化への長く険しい道のりを、時間はかかりますが、所長として、CiRAのメンバーと一緒に走り続けていきたいと思っています。

山中伸弥の今月のひと言。
10月30日に開催された大阪マラソンにチャリティアンバサダーとして出場し、自己ベスト3時間42分でゴールしました。当日は、沿道からの大きな声援が励みになりました。ご寄付をくださった皆様、応援してくださった皆様、ありがとうございました。来年の京都マラソンに向けて、今日から練習開始です!

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