世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム4回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田コーチが、スコアも所作も洗練させるための“技術”と“知識”を伝授する。リーダーに欠かせない“周りから慕われる”ゴルファーになる方法とは?
捻転差を大きくしても飛ばない
スコアの話はいったん抜きとして「この人、きれいに振るな」と思われる絶対条件は、「下半身リード」ができたスイングだ。切り返しが下半身から行われ、徐々に上半身へとつながり、最後に腕が「振られた」状態でクラブが動き出す。自ら腕を「振ろう」とすれば、上半身と下半身が同時に動き力みが生じた不格好なスイングになってしまう。
プロの連続写真で切り返しの瞬間のコマを見ると、下半身から切り返しが始まり上半身はまだトップの状態を保ったままなので、上半身と下半身の「捻転差」が生じているように見える。この形が美しいのと「捻じったあとの戻る力」がパワーを生み出すことを想起させるため、捻転差を何とか大きくしようとしているアマチュアは多いのではないだろうか。
しかし残念なことに、捻転差を意識的に大きくしてもメリットは少ない。ゴムのようにバックスイングで体を捻じって、ダウンスイングで捻じり戻すとヘッドスピードが上がるという表現を耳にしたことがあると思うが、そもそも人間は自動で捻じり戻るゴムではないし、その程度の筋肉の伸縮では大した力が生まれないのだ。
重要なのは動き出しの順番
自ら捻転差を生みだそうとすると、下半身や腰の回転を止めたり、上半身を回そうとしたりして体に力みが生まれる動作が入る。これではスイングのバランスが崩れて、インパクトでクラブが適正な位置に戻ってきにくくなるし、身体にストレスのかかる無理のある動きを強要しているので、けがのリスクも大きくなる。特に腰を過度に捻ろうとすると、そもそも人間の腰椎は最大で5度程度しか捻じることができないため腰痛の原因となる。
理解してほしいのは捻転差は「作るもの」でなはなく、「生まれるもの」ということだ。バックスイングで右旋回していた下半身が切り返しで左旋回を始めるとき、上半身はまだ右旋回を終えていないのでそこに捻転差が生じる。切り返しの「間」などと呼ばれるが、この「間」があるとスイングは美しく見え、さらに正しい位置に上半身やクラブが戻ってくる確率が高くなる。
だから切り返しでアマチュアに意識をしてほしいのは「捻転差をつくる」ことではなく、切り返しは「下半身から動き出す」ということだ。下半身から腰、上半身、最後に腕が振られるように動く一連を「運動連鎖」と呼ぶ。この動く順番を意識していれば、切り返しの「間」ができ、捻転差も自然と生まれるようになる。効率の良い運動の順番ができることで、地面反力などの力も使えるようになりヘッドスピードも向上するのだ。
この運動連鎖を身につけるには、アイアンを使った連続素振りが効果的だ。素振りでフィニッシュまで振り切ったら、間髪置かずにそのままテークバックに入る。右打ちと左打ちを繰り返すようなイメージで一定のリズムでクラブを振っていく。この時、下半身は固定せず足踏みをするようにかかとを浮かせるくらいダイナミックに動かしてみよう。下半身が動いてからクラブを振るという動きの順番を意識するといいだろう。
最初は一定のリズムで振れなかったり、手でクラブを戻すように動いてしまうかもしれないが、だんだんと疲れてクラブが重く感じるようになってくるので、下半身から順番に動かし始めないとクラブを振ることがしんどくなってくる。そういった状態を作り出すことで、自然と正しい運動連鎖が身に付くようなるだろう。