野趣溢れる庭園と一体化した「ふふ 奈良」【ゲーテ旅特集2020】

三密を避けて、家族や大切な人とゆったりと籠もる。そんな隠れ家のような“非密”のホテルや宿は、新しい旅のスタンダードとなるのではないか。そんな、いつか行きたい“NO密”かつ“濃蜜”なニッポンならではのエクスクルーシブな旅、#stayhotelの愉しみ方を提案するーー。

歴史ある奈良で格式高い伝統文化を味わう

奈良に平城京が置かれ寺社が建てられた時代から、奈良公園は人々が集い安らぐ場所だった。周囲には東大寺、興福寺、春日大社など日本を代表する古刹(こさつ)があり、雄大でのどかな空気感をもたらしている。

「ふふ 奈良」は、緑豊かな名勝奈良公園内に初めて開業したスモールラグジュアリーホテルだ。敷地は、明治から大正にかけて大阪財界で活躍した銀行家・山口吉郎兵衛(きちろべえ)の別荘跡。志賀直哉など文人墨客(ぶんじんぼっかく)も暮らした高畑という土地柄、画家や茶人などがこの邸で交流したという。

建築デザインには、世界的建築家・隈 研吾氏を迎え、奈良のおおらかな自然に溶けこむ設計を実現した。

ランドスケープアーキテクト・宮城俊作氏が手がけた中庭と調和するロビーラウンジ。ウエルカムドリンクはここで。

隈氏の代名詞ともいえる木造りのデザインを活かしながらも、白木そのままではなく、敢えてイメージカラーの墨色に統一した大和張りや奈良格子を用い、陰影のある落ち着いた表情を生みだしている。

レセプションスペースに置かれた自然木のカウンターのほか、館内に使われる木は、敷地内で永らく時を過ごしたものが多いという。吉野杉を惜しみなく配したロビースペースに腰をおろすと、一挙に日常から離れた古都の時間に誘われる。

静謐(せいひつ)で、プライベート感溢れる30室の客室は「座する」をテーマに、異なるデザインでつくられた5タイプのスイートルーム。すべての客室に、庭園に面したテラスと露天風呂があり温泉が満たされているから、夕食までの時間を部屋でゆったり過ごすのもいいだろう。

室内の照明や奈良の伝統工芸に由来するアート作品を眺めるうち、美しい夕暮れが訪れる。よりリラックスした時間を求めるならば、シスレーが監修するスパで、薬湯入浴つきの施術を受けるのもお薦めだ。

夕食は日本料理か鉄板焼きのいずれかを選ぶ。メニューは約10品。

お愉しみの食事は、竹林もある庭園を抜けた先にあるレストラン棟で緑の庭を前に味わう趣向ある和食のコース。推古天皇の時代にもたらされたと伝わる当帰(とうき)や芍薬(しゃくやく)など和漢植物のほか、大和野菜など地の食材を使った料理が心身を癒やしてくれる。

食事の後は、館内のバーでグラスを傾けながら、いにしえの地に思いを馳せたい。

翌日は、早朝から朝湯を楽しむのもいいし、奈良公園を散策し、鷺池(さぎいけ)の浮見堂まで行ってみるのもいい。ここまで来ると、春日大社の神使いといわれる可愛い鹿の姿も眺められる。清々しい空気の中、わずかな日数であっても充実した休暇を楽しめるに違いない。

プレミアムコーナースイートは全8室。74㎡以上の快適な空間だ。

ふふ 奈良
住所:奈良県奈良市高畑町1184-1
TEL:0742-81-7738
客室数:30室
施設:レストラン、スパ、バー、スーベニールほか
料金:ふたり¥77,000~(2名1室利用時、夕朝食つき、税サ込)
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Text=中井シノブ Photograph=大道雪代