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2026.05.02

才能がない、未来が見えない…「ない」ことを「揺らぎ」と捉える。阪神・近本光司の思考術

身長172cm。野球選手として決して恵まれた体躯ではない。それにもかかわらず、なぜ阪神・近本光司選手は毎年活躍を続けられるのか? その秘密は、近本選手が編み出した思考術にあった。野球(スポーツ)だけではなく、仕事や勉強、 もっと言えば人生の礎になりうる、近本流思考術を記した『僕は白と黒の間で生きている。』から一部抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

近本光司『僕は白と黒の間で生きている。』

だから、野球と人生は、楽しいんです

「ない」こと。人はそれで悩みます。苦しむこともある。ネガティブなメンタリティに陥るわけです。

そのときに、「ない」をもう少し分解してみるといいかもしれません。

「ない」ことを解消、解決したいのか。
「ない」ことを誰かと共感、共有したいのか。
「ない」ことを聞いてもらって、誰かに支えてもらいたいのか。

実は、「ない」ことやネガティブなことは、ひとつじゃないはずです。だから、どうすれば、ネガティブなマインドをポジティブに変えていけるかは、それによって方法や自分の態度も変わっていくと思います。そしてさらに突き詰めると、僕のような「ない」ことを楽しむメンタリティを体得できるかもしれないとも思います。

決して僕のやり方がいい、と言っているわけではありません。僕はそもそもネガティブなタイプで、でもそれをポジティブに変えられるようになった。ひとつの方法として、苦しい暗闇にいるとしたら、光になるかもしれない、という意味で読んでください。

わからない。
才能がない。
打てない。
未来が見えない。

これを「揺らぎ」と捉えたらどうでしょうか。

再三、話に上がる兵庫県淡路市。僕は東浦という場所で育ったのですが、その反対、つまり西側は「西海岸」と呼ばれています。なぜかこちらは「東海岸」ではなかったから「なんで向こうだけアメリカっぽくかっこつけてんだ」なんて、思っていたものです。

そのくらい海が近い場所で生まれ育った僕は、実家から100メートル先にある「波」に「揺らぎ」のイメージを重ね合わせていました。

淡路島の波は(もしかしたらどの海もそうなのかもしれませんが、僕の言葉として捉えてください)、一定のリズムで寄せて、返すということをしません。同じようなリズムで寄せる、引いていくというのを繰り返しているようで、ちょっと違うのです。

この同じようでちょっと違うこと、それが僕にとっての「揺らぎ」です。

同じ淡路島なのに東と西で呼び名が違うように、どこかに違和感というか、不規則性というか、そういうものが混じってくる瞬間。それに気づいたとき、地に足が着くというか……ここに存在しているな、という感覚に、僕はなるんです。

バッティングにおいてそれはとてもわかりやすい指標になります。いつも同じことをしている。基本的に日によってスイングや構え、立ち方がガラッと変わることはありません。でも、そうやって同じことを続けていると、ちょっとした「違い」に気づくことができます。

同じように一本足で立っているのに、ちょっと感覚が違う。

この「揺らぎ」が、考えるきっかけ、次のヒントをもたらしてくれるのです。僕は、それが楽しい。

繰り返し書いている通り、僕はネガティブな性分です。

ドラフト1位で阪神タイガースに入団したとき、身体が大きいわけでも、パワーがあるわけでもない僕が活躍できる姿を想像することはできませんでした。だから、入った時点で、セカンドキャリアについて考えていたりもしました。

矢野(燿大)監督のおかげで1年目からプレー機会をもらい、盗塁王を獲ることができました。でも2年目は簡単ではなかった。スランプに陥ったとき、今でもやっている「インプット、アプローチ、アウトプット」のプロセスを踏もうと考えるようになりました。

すごい選手はたくさんいます。

人と比べれば、自分が小さく見えることがあります。

その人は、すごい才能、すごい能力、すごい正解を持っているように感じる。

けれど、その正解はその人だけの正解です。

持っていることが重要なわけではない。そして、それが自分自身に当てはまるわけでもない。

そこからスタートすることが大事だと思っています。

試合終了は、明日の試合のスタートです。

同じように「インプット、アプローチ、アウトプット」を繰り返し、そこに「揺らぎ」を探していきます。だから、野球と人生は、楽しいんです。

TEXT=近本光司

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