英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第251回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
流暢な日本語で教えてくれた“polyglot person”の意味
最近日本語を習い始めたという、アメリカ人大学講師とオンラインで話す機会がありました。その方は「今日は日本語を勉強したいので、あなたには英語を使わないでもらいたい」と私に言いました。使いたくても使えないので大丈夫、と言いかけましたが見栄を張って「わかったわ」と返事をしました。
Are you a polyglot person?
英語を使わないでほしいと言ってすぐ、いきなりその方はそう英語でいいました。
アー ユー ア ポリグラット パーソン?
そう聞こえましたが、ポリグラットってなんでしょうか。確かそんな入れ歯安定剤があった気がしましたが、それは「ポリグリップ」でした。
その方は私の返事を待たず、こう流暢な日本語で続けます。
「私は、フランス語もイタリア語もスペイン語もできる。最近は日本語と同時にドイツ語の勉強も始めた。あなたはどうか?」
そう捲し立てられている間に辞書を引いたら、こういうことでした。
Polyglot=「多言語を使える」という意味の形容詞
ですので、polyglot personは「多言語を使いこなす人」という意味でしょう。
つまり「言語オタク」みたいなことでしょうか。4ヵ国語以上話せる人のことをMultilingual(マルチリンガル)と呼びますが、Polyglotの方がMultilingualよりフォーマルな言い方だそうです。
日本人に向いている言語は?
「さっきは、見栄を張って普段から英語を話しているみたいな雰囲気を出したけど、本当は英語もろくに話せない。日本語しか無理」
そう正直に言ったところ、その方は残念そうな顔をして「ではリチャード・シムコットについて調べると勉強になるよ」と教えてくれました。
恥ずかしながら「リチャード・シムコット」もなんなのかわからず、これも調べてみたところ、どうやら世界的に有名なPolyglot personだということ。16の言語をネイティブレベルで使いこなし、これまでに50の言語を学んできたそうです。言語習得法についても数々のインタビューで答えているので、それを読むだけでためになるということ。
「私は普段大学の先生だけれど、言語を学ぶ時は生徒になれる。立場を常に変えることは人生でも学びになる。シムコットもそう思っているに違いない」
とその方は言いました。なんだったら母国語の日本語、特に漢字の書き取りなどが最近ままならなくなってきている私にとっては、崇高すぎる話です。けれどそんな怠け者の私でもたまに言語を学ぶのは楽しいな、と思える瞬間があるので、Polyglot personと呼ばれる人がいるのもわかる気がします。
「日本人に向いているのは、スペイン語だと思う。発音が日本語と似ていて、文法は英語と似ている。日本人ならマスターするのに難しくない」
まだ英語もマスターしていないのに、第三言語の習得をその方は勧めてきました。
確かにいつか、英語以外も勉強してみたいという気持ちはなんとなくずっとありました。けれど「中途半端に第三言語を学ぶくらいなら英語をやったほうがいい」と思ってしまい、手を出せずにいたのです。しかし英語をマスターするのを待っていたら、寿命がきてしまいそうなので、やりたければ第三言語もすぐに始めればいいのかもしれません。
スペイン語もいいですが、韓国ドラマ好きなので、やっぱり韓国語もいいな、と迷ってしまって結局すぐに学び始められていないのが現状です。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
英語力ゼロのまま渡英、行けばなんとかなると思いつつなんともならなかった2年間のイギリス生活。帰国後はせっかく覚えたいくつかの英単語も忘れ去り、それでも時々は英語と格闘してみる現在、40歳。
「その英語でよく外国に行ったね」「めちゃくちゃカタカナ英語だね」と、なぜか日本人に笑われながらも、覚えたフレーズの数々。いつかはうまくなりたいから、恥を忍んで今日もブロークンイングリッシュ。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。人のイングリッシュを笑うな。