盆栽作品をコレクションする第一の理由はなんといっても、好きな作品を飾り、見て楽しむという純粋な盆栽への愛情である。だからこそ、「基本」を抑えるだけで、盆栽の見方も変わってくる。今回は、盆栽を観るうえで知っておくべきポイントを解説する。
1.ヒストリー
日本の伝統文化である盆栽。そのルーツは、約1200年前に中国で興った「盆山(ぼんさん)」とされている。平安時代に盆山が日本に伝わり、貴族などの上流階級に広まった。江戸時代に入ると庶民にも盆栽が浸透、実は「盆栽」という言葉が使われ始めたのは明治時代になってからと最近のことなのである。
2.樹種
盆栽は大別すれば「樹」と「草」に分けられる。「樹」は主な見所によって「松柏」「葉もの」「花もの」「実もの」の4種に分類。このうち「松柏(しょうはく)盆栽」以外は総称して「雑木(ぞうき)盆栽」とも呼ばれる。
松柏盆栽
根や幹がさまざまな造形美を見せる盆栽の代表格である松柏盆栽。年間を通して常に緑色の葉を茂らせる針葉樹で、古来人々から愛されてきたのが松と真柏。生命力が強く、何世代にもわたり伝えられる国宝級の名品が数多く存在する。
雑木盆栽
季節ごとの変化に富むのが雑木盆栽の魅力。代表品種はモミジやカエデの「葉もの盆栽」だが、フジやサツキなど花の鑑賞を目的とする「花もの盆栽」、カリンなど実がなる様子が楽しめる「実もの盆栽」というように、樹種によっても分類される。
3.見所
[1] ジン
枝先の一部が枯れた状態のもの。または人の手が加わることによって枯れた状態のもの。白い肌と緑の葉とのコントラストが盆栽に深みをだす。
[2] 立ち上がり
根元から最初の枝までの幹の部分。大木のように太くて力強く、自然な動きと迫力の感じられるものが「美しい立ち上がり」とされる。
[3] 枝ぶり
大きな枝がバランスよく配されていて、不要な枝がない盆栽はとても価値が高い。葉が落ちた冬は、細かく分かれた枝先が見所になる。
[4] 幹肌
樹木の種類によって異なる。特に松の盆栽では、歳月を経て幾層にも重なった幹肌の様子が、大きな魅力とされている。
[5] 根張り
盆栽を観賞する際にまず、目を向けたいのが、根の張り具合だ。根は年を経るごとに盛り上がり、土をしっかりと摑むようになる。
[6] シャリ
仏語で骨のこと。幹の一部が枯れ、そのまま形を残したもの。または人の手によって枯らしたもの。樹齢の長い松柏盆栽に多く見られる。
4.樹形
自然下において風雪や長年の環境変化に耐えて適応してきた樹木の姿を、人の手によって模したパターンのこと。幹の数や向きなどの形状によっ て、それぞれ名称がある。
直幹(ちょっかん)
盆栽の基本的な形のひとつ。一本の幹が根元から垂直に伸びる王道の形態で、くまなく根を張る「八方根張り」であること、幹が根元から上にいくほど細くなっているなど、枝が左右交互に出ていることも最大の特徴。
模様木(もようぎ)
幹が立ち上がりから上方へと揺らいでいるような曲線を描く樹形。幹枝が曲線を描くことを「模様」と呼ぶ。直幹と並んで、盆栽の最も代表的な樹形のひとつとされている。
吹き流し
高山や海辺で強風にさらされ、幹から枝先まで一方向になびいた姿を表現した樹形。
株立ち
ひとつの株の根元から複数の幹が立ち上がった樹形で、幹の数は3幹・5幹・7幹など奇数が基本となっている。主幹と他の幹との調和や全体のまとまりがポイント。
寄せ植え
同樹種の株を複数、ひとつの鉢に植えこんで森や林の景を表した樹形。盆栽では1樹種で作るのがセオリーだが、山野草では複数の樹種や草ものを用いた寄せ植えも存在する。
懸崖(けんがい)
切り立った崖から樹木が垂れ下がる形に盆栽を仕立てたもの。厳しい条件下で、力強く生きる樹木の姿を表している。垂れ下がりの角度が小さいものを半懸崖と呼び、角度の大きいものを大懸崖と呼称する。
5.大きさ
大物(おおもの)盆栽
樹高50㎝以上。
中品(ちゅうひん)盆栽
樹高20〜50㎝。
小品(しょうひん)盆栽
樹高20㎝以下。※10㎝以下はミニ盆栽ともいう。
6.盆栽の表と裏
盆栽には正面と裏面がある。表を見ると幹の姿を見ることができ、逆に裏から見ると幹は枝で隠れていて観賞しづらい。優れた盆栽はどの角度から見ても美しい造形が楽しめる。
盆栽を手に入れるなら!
勝樹園/SHOJUEN
長野県・須坂市にある勝樹園は、世界各地から盆栽アーティストが集う場所。園内には真柏作出の名手、井浦貴史氏の作品を展示している。そのラインナップは真柏盆栽が中心で、野生味のある盆栽を特徴としている。
苔聖園/TAISHOEN
世界一と言われた巨匠のもと、6年間の厳しい下積み生活を経て独立した漆畑大雅氏の盆栽作品を展示。バリエーションが豊富で、1メートルを超える大物盆栽はもちろん、創作、改作、さらには3㎝以下の豆盆栽まで幅広く手掛けている。
“盆栽とNFT”がビジネスに!?
「盆栽を世界中のアート好きが熱狂するコンテンツへ」をテーマに活動する、BONSAI NFT CLUBのプロジェクトが始動。NFT販売における収益を活用し、本物の盆栽園を設立・経営することでオリジナルブランドBONSAIをつくり上げるとしている。盆栽園を通じた新たな盆栽コミュニティ事業も展開予定だ。
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