ラグジュアリーホテルやスーパーカーなど、あらゆるジャンルと盆栽とをかけ合わせる、盆栽界の未来を担うキーパーソンに話を聞いた。

TEPPEI KOJIMA
1981年千葉県生まれ。「TRADMAN’S BONSAI」CEO兼プロデューサー、盆栽職人。日本の伝統文化である盆栽を世界へ伝えるという目標を掲げ、さまざまなブランドやアーティストと積極的にコラボレーションを行う。
何百年も人の手によって生き続ける、そのバックグラウンド自体がアート
小島鉄平、41歳。業界の異端児と称されることもある彼は、盆栽を使ったさまざまな体験をプロデュースする仕かけ人だ。その才能とセンスに惚れこみ、小島氏のもとには、さまざまな企業や人が訪ねてくる。自身が率いる「TRADMAN’S BONSAI」のウェブサイトに取引先として掲載されているのは、ナイキ、ディオール、リモワ、フォーシーズンズ、ポルシェなど、名だたる企業ばかり。
「公表できないものも含め、多くの企業やお客様と取り引きさせていただいています。店舗やオフィスに盆栽を飾りたいといった依頼から、イベント会場を彩るディスプレイ、趣味として自宅で楽しみたいといったものまで、リクエストの幅も広がってきました。どんなことでもやるかというとそうではなく、一貫して盆栽のカッコよさを多くの人に知ってもらいたいという使命感を持って、日々邁進しています」
学生時代は音楽、ファッション、タトゥーなどストリートカルチャーに傾倒し、前職のアパレル業界ではバイヤーとして活躍。“由緒正しい”盆栽畑の出身でないからこそ、盆栽と他のジャンルとの垣根を取り払い、盆栽の新しい可能性にリーチしているという自負がある。
「美しいものって美術品、つまりアートだと僕は思っていて。盆栽は見た目の美しさはもちろんのこと、いろいろな人たちが手がけてきて何百年も生きているという、そのバックグラウンドすらもアートだと思います。盆栽というのは、どういう風に成長させてどんな形にしていくのかを作家が考えながら作りますが、人間よりも長く生きますし、最終的な完成というものがない。僕が物事を判断する基準は『カッコいいかどうか』に尽きます」

小島鉄平・TRADMAN’S BONSAI
樹種 真柏、樹形 文人木
NOT FOR SALE
推定樹齢80年。幹の一部が枯れて白骨化した部分(シャリ、ジン)をもちながら、その裏に水を吸い上げる幹(水吸い)がぴたりと寄り添い、生と死のコントラストを可視化するように作られている。まさにアートなひと鉢。
TRADMAN’S BONSAIのコラボレーション

NOT A HOTEL NASUでは盆栽で空間プロデュースを行う。

2022年11月に渋谷パルコにて展示された、現代アーティストのダニエル・アーシャムがポルシェ356に日本の侘び寂びを表現したインスタレーションに、空間演出で参画。

企業やブランドの新商品イベントなどにも引っ張りだこ。リース用の盆栽は定期的にメンテナンスを行う。細部まで丁寧にチェックする。

埼玉県三郷に構えるギャラリーは、2023年春にオープン予定。無機質なモルタルの壁に囲まれた空間に、多くの盆栽が並ぶ。