世界の富裕層の間で高い注目を集めるアンティークコイン。40年にわたってコイン販売専門店を経営し、日本におけるアンティークコイン収集の第一人者である大谷雄司氏が、資産性、アート性、歴史的価値などその多様な魅力を解説する連載の第2回。
古代ローマ時代から伝わる“ポケットに入る高額資産”
近年、資産としても注目されるアンティークコイン。コイン販売専門店ダルマ代表の大谷雄司氏は、アンティークコインを資産と捉える歴史は古代ローマ時代にまで遡ると話す。
「ヨーロッパ大陸は隣国と地続きで当時から紛争が絶えず、権力者といえどもいつ自国を追われるかわからないという状況にあった。それが、彼らをアンティークコインの収集に駆り立てた一因でもあると思います」
どんなに広大な土地や屋敷を所有していても、他国へ逃れる際それらを持って行くことは不可能。また絵画などの美術品は、移動時に破損する恐れがあるうえに保管にも気を遣う。その点コインは、手のひらに収まるサイズゆえ簡単に持ち運べ、保管が比較的容易という利点もある。
「何よりどんな国や地域にも両替商がいて、そこにコインを持ちこめばすぐに換金できます。単に地金や地銀として買い取ってもらうことも可能ですしね。それは現代でも同様。アンティークコインが、“ポケットに入れて持ち運べる高額資産”と言われるのはこうした理由からです」
また不動産や高級外車のように、所有しているだけで税金がかかるということもない。保管に手間もコストもかからず、持ち運びが容易なアンティークコインは、きわめて信頼性の高い資産なのだ。
Yuji Otani
1978年に外国貨幣の鑑定・販売を手がけるダルマを設立。自身も数千枚のコインを持つ収集家であり、著書に『あなたも虜になる アンティークコイン』(幻冬舎)等がある。