読者に薦めたいとっておきの1冊を、京大卒のオタク女子・三宅香帆が毎月ピックアップ! 今回は、歴史を学ぶ面白さを教えてくれる、『思想史講義 【明治篇I】』をご紹介。
先行き不透明な現代を生き抜くための道標
歴史を学ぶとは、単に過去の出来事を暗記することではない。その裏にあったプロセスや思想を知り、自分の頭で考え、過去について解釈することは、その延長である「今」への理解を深めることにもつながっていく。
本書は、明治から戦前昭和までの思想史を通覧するシリーズ全4巻のうちの明治前編にあたる。「王政復古」「祭政一致」「自由民権」など、明治期の日本における重要なキーワードを題とする16の章と8つのコラムで構成。最新の実証的研究に基づき、「文明開化は単なる西洋化だったのか」「富国強兵は本当に維新当初からのスローガンだったのか」など、諸思想を掘り下げて検証、分析していく。
思想史という観点から見れば、歴史的な出来事の背景や関わった人々の想いをより深く知ることができ、過去について考える意味と面白さを再認識できるだろう。
欧米列強が迫りくるなか、日本は西洋の制度や文化を取り入れて再構築し、世界にも類を見ない速度で大変革を遂げた。近代日本を作るべく命懸けで奮闘していた先人たちがいったい何を考え、形にしていったのか。それを知ることは、先行き不透明な現代を生き抜くための道標となるに違いない。
『思想史講義 【明治篇I】』
山口輝臣/福家祟洋 編 ちくま新書 ¥1,100
Kaho Miyake
1994年高知県生まれ。書評家、作家。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。著書に『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『女の子の謎を解く』等がある。