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2022.10.05

由緒ある京都・下鴨神社に、世界的なクラリネットの音色が響いた理由

神聖な気が満ちる下鴨神社にある宵、クラリネットの優しい音色が響いた。この貴重な体験を仕掛けたのは――。【特集 京都の秘められしスポット】

伝説のクラリネット奏者@下鴨文化茶論

小山薫堂さんが主人を務める料亭、下鴨茶寮で開催された神聖な宴

油照りといわれる京都独特の暑さが続いた夏の終わり、下鴨神社の一角・供御所(くごしょ)に美しいメロディーが響き、下鴨の地にひと時の涼をもたらした。

この演奏会は、小山薫堂さんが主人を務める安政3年創業の料亭、下鴨茶寮が催す「下鴨文化茶論」の13回目の催し。今回は世界的なクラリネット奏者リチャード・ストルツマンさんとマリンバ奏者のミカさん夫妻を迎え、京都最古の神社のひとつに数えられる下鴨神社で開催されたものだ。

下鴨神社

賀茂御祖(かもみおや)神社(下鴨神社)は、京都最古の神社のひとつ。参道の糺(ただす)の森も含め、京都人にとっての心の拠り所でもある。夕暮れ時の下鴨神社には神聖さが満ちる。

下鴨茶寮

会場の下鴨茶寮は、創業安政3年(1856年)の老舗料亭。下鴨神社のお膝元にあって、ともに歴史を刻んできた。

夕暮れが迫る頃合いに、日本全国からゲストが参集。会の冒頭で小山さんは「下鴨神社では、日常的に笙(しょう)や鼓(つづみ)など和楽器が奏でられています。東西の違いはあれ、クラリネットやマリンバも、この場にふさわしい歴史を経て継がれてきた楽器です。京都最古の神社で、おふたりの演奏をお聴きいただき、神聖な場の力と音楽が紡ぐ豊かな時間を愉しんでいただきたい」と挨拶。その後、厳(おごそ)かな雰囲気のなかで演奏が始まった。

下鴨文化茶論立札

下鴨文化茶論の文字が訪れるゲストを迎える。

「下鴨文化茶論」は、2012年に小山さんが下鴨茶寮の主人となったことを機に始められた文化サロン。演奏会だけでなく、茶筅(ちゃせん)づくりや盆栽、書のワークショップ、落語会などに国内外のさまざまなジャンルのプロフェッショナルを迎え、この会だけの文化や情報を発信する、知る人ぞ知るイベントだ。

茶論でのリチャードさん

小山さんの活動をリスペクトするリチャードさんは、クラリネットケースを「くまモン」に見立て赤丸のシールを貼っている。

「下鴨茶寮は単に料理を供する料亭ではなく、人、場所、文化を“和(あ)える場”にしたいと思っています。京都という場所には、いにしえの昔から人や物などを惹きつける特別な磁力があります。一期一会の出会いをここで生み出すことで、京都の皆さんはもちろん、集う方々の心に残る機会をこれからも増やしたいのです」

演奏者ミカ・ストルツマンさんは熊本県天草出身で、小山さんの保育園時代からの幼馴染。夫のリチャード・ストルツマンさんとニューヨークで出会い結婚。2014年以降、デュオによる活動を本格的に開始した。小山さんとは10年ほど前に再会し、この文化茶論での演奏が実現。今回は下鴨神社での2回目の演奏会だという。

リチャードさんは、数々のオーケストラと共演する世界的なソリストで、レコーディング・アーティストとして2度グラミー賞を受賞している。今回の来日は80歳を記念したソロアルバムリリースのツアーで、東京、大阪、熊本など全国9カ所でリサイタルが開催された。京都での演奏はこの日の30人ほどのゲストのためだけの特別なもの。敢えてセットリストをつくらず、神社に到着してから、場の気をくみ取り楽曲を決めたという。クラリネットと心身がひとつになったかのような力強い演奏は、マリンバとの息の合った掛け合いも感動的な音色を生み、聴く人の心を揺さぶった。

演奏後、ミカさんは「普段は昨日も演奏した(東京の)ブルーノートなどのライヴスペースで行うことが多いので今日はある意味、異次元です。由緒ある神社で演奏できることは、私たちにとっても光栄なことで、今後の力になるに違いありません」と京都でのパフォーマンスを振り返った。

交流会の様子

ビュッフェスタイルで供された料理の数々。玉蜀黍(とうもろこし)豆腐や芋蛸南瓜炊合せなど季節の和食のほか、鴨ロース湯葉春巻きキャロットラペ添えといった工夫ある料理も多く、ゲストは多彩な料理を満喫した。

リサイタル後には場を下鴨茶寮に移し、演奏者やゲストが交流できるパーティが催された。料理長がこの日のために誂えた心づくしの料理の数々がテーブルに並ぶ。八寸や炊合せ、客前で揚げる天ぷらといった和食もあれば、スモークサーモン、キャロットラペなどアレンジ料理もあり、ゲストは演奏の余韻に浸りながら料理を堪能。会場ではストルツマン夫妻を囲んで会話が盛り上がるだけでなく、小山さんやゲスト同士の交流もあって終始活気に溢れていた。

語らうゲスト

ゲスト同士の交流も深まり夜は更けた。

10年前に小山さんが立ち上げたサロンは、着実に京都の地に根を下ろし、さまざまな出会いはもちろん、新たな文化的融合を生みだしている。

MIKA & RICHARD STOLTZMAN、KUNDO KOYAMA
MIKA STOLTZMAN(左)
1964年熊本県生まれ。トロント大学上級演奏学科卒業。2008年にニューヨークに移住し、演奏家活動を始める。カーネギーホールでの演奏会は10回以上。ソリストとして数々のオーケストラとの共演するほか、’14年からはリチャードさんとデュオを開始し世界中で演奏会を開く。

RICHARD STOLTZMAN(中央)
1942年アメリカ生まれ。技巧性、音楽的センス、比類ない個性を持つ、クラリネットのレジェンドプレイヤー。リサイタリスト、ジャズ奏者、多作なレコーディング・アーティストとして活躍する。2022年6月に『ラスト・ソロ・アルバムーフロム・マイ・ライフー』を発表。

KUNDO KOYAMA(右)
1964年熊本県生まれ。放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティだけでなく、京都芸術大学副学長など多彩な顔を持つ。自身の脚本による映画『湯道』が2023年2 月公開。’25年の日本国際博覧会では食のテーマ事業プロデューサーを務める。下鴨文化茶論は、下鴨神社、下鴨茶寮にて不定期に開催。

【特集 京都の秘められしスポット】

TEXT=中井シノブ

PHOTOGRAPH=伊藤 信

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