新刊『未来のお金の稼ぎ方』から学ぶ連載「これからの5年に必要なお金のスキル」。第3回のテーマは、「投資で資産を『守る』と『増やす』発想」。
日本は圧倒的な貯金至上主義
日本人は預金好きです。2021年8月に日銀が発表した「資金循環の日米欧比較」によれば、資産に占める預貯金の割合は、日本がダントツで高くなっています。日本は資産の50%以上を現金・預金が占めているのに対し、ユーロエリアは34.3%、アメリカは13.3%です。株式投資でみると、日本は10%しかありませんが、ユーロエリアは18.2%、アメリカは37.8%です。日本は他の先進国と比べ、圧倒的に「投資より貯金を重視」する姿勢が強いのです。
預貯金は元本保証があるから安全……と思いがちですが、資産が預金だけに偏るのはむしろ危険です。現在メガバンクの金利は0.001%ですが、物価が1%上がったら物を買うのにより多くのお金が必要になり、確実に資産が目減りします。国がコントロールできないほど急激な勢いで物価が上昇することをハイパーインフレと言いますが、かつてジンバブエではこのハイパーインフレが起こり、貨幣価値がありえないほど下がりました。パンを買うのに大量の紙幣が必要になったというのは、有名な話です。
投資には、「卵をひとつのカゴに盛るな」という有名な格言があります。これは、卵をひとつのカゴに持っていると、そのカゴが壊れたときに全部割れてしまい、リスクが高すぎるという意味です。もし、円しか持っていない状態で、1万円が1000円の価値しかなくなったら? そんなことは起きないと思われるかもしれませんが、ハイパーインフレだけでなく、戦争などによっても法定通貨の信用や価値は揺らぎます。資産が自国の通貨だけに偏るのは、実はリスクなのです。
資産の置き場所はカゴを分ける。つまり分散させることがリスクを下げる基本です。資産を分散させるということは、海外の株式や外貨を買うなど金融資本に投資することを意味します。
投資はリスク、ギャンブルだと思い込んでしまうと思考が停止してしまいますが、資産を守るためには分散が必要です。貯金至上主義から脱却し、投資はむしろ資産を守るうえで手堅い手段という発想を持つことが、金融リテラシーを高める第一歩です。
ダブルインカムで将来を守る
投資に対し積極的なアメリカでは、「ダブルインカム」がスタンダードになりつつあります。ここでのダブルインカムとは、労働からの収入と資産からの収入がある状態のこと。資産からの収入とは、金利や株式の配当、不動産の家賃収入などです。
日本はこれから、少子高齢化&人口減で、手取りが減っていくことが見込まれるため、ダブルインカムの発想を持つことは、アメリカ以上に重要になってきます。つまり、投資のリテラシーがあるか、ないかで将来に差がつくといえるのです。
少し勉強するとわかりますが、ダブルインカムの仕組みは、すぐに手に入るものではありません。利益が利益を生む複利効果は、長期になるほど威力を発揮するので、1日でも早く行う必要があります。たとえば、毎月の積立金額が5万円、想定利回り3%(年率)で5年間つみたてた場合、運用収益は約23万円です。同じ条件で10年積み立てると、約99万円の利益となり、時間は2倍でも利益は約4倍になります。30年目の運用収益は、なんと1114万円です。
もちろん、投資は元本保証がないので使いたいタイミングで必ず利益が出ているわけではありません。いざというときにすぐ引き出せる預貯金は重要です。しかし、未来を守り、より豊かな生活を手に入れたいなら、「貯めるだけ」という発想を捨て、投資を使って「守る」「増やす」発想を持つこと。そして一歩を踏み出すこと。今すぐ持ちたいお金のスキルのひとつです。
Takahiro Kodama
ABCash Technologies代表取締役社長。1983年宮崎県生まれ。2007年、サイバーエージェントに新卒入社し、AmebaBlog事業部長、AbemaTV局長などを歴任。2018年、日本の金融教育の遅れ・お金の情報の非対称性に大きな課題を感じ、ABCash Technologiesを設立。「お金のトレーニングスタジオABCash」は累計受講者数2万人を超え、パーソナル金融教育で日本最大規模を誇る。「日本スタートアップピッチファイナル」金賞(2019年)、「FINTECH JAPAN 」準優勝(2021年)など受賞歴あり。
連載「これからの5年に必要なお金のスキル」とは……
「未来の豊かさはマネーリテラシーが左右する。特にここからの5年は勝負の分かれ目」。そう語るのは、国内最大級のマネースクール「お金のトレーニングスタジオABCash」を運営し、8月に『未来のお金の稼ぎ方~お金が増えれば人生は変わる』を出版した児玉隆洋氏。本連載では、次の時代を生き抜くために今備えたいお金のスキルを紹介する。