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2022.08.05

人口ボーナス、人口オーナスとは?──アフターコロナのお金論

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載「アフターコロナのお金論」では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。Vol.52。【過去の連載記事】

連載「アフターコロナのお金論」

Photo by Shashank Hudkar on Unsplash

日本の人口と経済の関係性

2022年5月、アメリカ・テスラ社CEOのイーロン・マスク氏が「出生率が死亡率を超えるような変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう」とツイート。日本の人口減少に関する議論を再燃させました。

この8月に発売した著書『未来のお金の稼ぎ方』でも、日本の人口減少や少子高齢化に伴うお金の課題や、そこに備えるために必要となるスキルについて触れていますが、日本の人口は世界的に見ても急激な勢いで減少しています。

2021年の自然増減数は約62万人のマイナス。減少幅の拡大は新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限で外国人の流入が減ったことも一因とされていますが、それでも急激な減少です。鳥取県の人口は約55万人ですので、その数を上回る規模の人口が減少しているという結果になりました。

それではお金のトレーニング。2021年の日本の出生数は過去最少を記録していますが、約何万人だったでしょうか?

答えは約81万人です。2021年の日本の出生数は1899年以降で最少となったのです。さらに前年の2020年より約2.9万人も少なく、6年連続で減少しています。国の推計している出生数よりも6年早く81万人台前半に突入していて、少子化の加速が鮮明になりました。

政府のシナリオでは81万人台の前半になるのは2027年と見込んでいましたが、想定より早く少子化が進行しているため、日本人の人口が1億人を切るのは2049年と想定していましたが、それも早まる可能性がありそうです。

また、コロナ禍の2年で婚姻件数の減少も際立ちました。2021年の婚姻件数は約51.4万組で、2020年に比べて約2.3万組減少しています。戦後のピークから比べると半数以下にまで減っているのです。コロナ禍では休業や就業時間の減少などで収入が減った人も多いため、経済回復の足取りは鈍く、婚姻後の生活不安から二の足を踏む若年層も多いとみられています。新型コロナウイルス感染拡大は日本の人口にまで影響を与えている可能性があるのです。

では人口減少や少子高齢化が進行していくと、経済にはどのような影響が出るのでしょうか。

そこでお金のトレーニング。人口増によって労働力人口が増加して成長率が高まることを「人口ボーナス」と呼びますが、この反対の現象のことをなんと呼ぶでしょうか?

答えは、「人口オーナスです」。子供と高齢者に比べ、労働力人口が少ない状態をさします。 労働者の減少で消費が低迷したり、社会保障負担が増したりすることから、経済成長を大きく阻害するとされます。ただ、内閣府は「選択する未来」委員会の報告で人口減少と経済成長について以下のようなことを述べています。

「今後、人口オーナスに直面し、成長率が低減することが懸念される。また、人口減少は資本投入へも影響を及ぼす」「人口構成が若返れば、新しいアイディアを持つ若い世代が増加し、さらに経験豊かな世代との融合によってイノベーションが促進されることが期待できる。逆に言えば、人口が急減し、高齢化が進む社会においては、生産性の向上が停滞する懸念がある」(※内閣府ホームページ「選択する未来 ‐人口推計から見えてくる未来像‐(平成27年10月28日発行)」より抜粋)

この報告によると、人口減少、少子高齢化で経済成長率は低減し、社会全体で見た貯蓄額が減少し、それに伴い投資の減少にもつながるとされています。さらに生産年齢人口が減少することで、多様性がなくなり、イノベーションが起こりにくくなるため、生産性の向上の停滞も懸念されています。日本の経済的な未来は暗い、というのが現実なのです。

反面、人口が増える国に起こるのが「人口ボーナス」です。これは人口増加がもたらす経済成長のことを指します。どういうものかというと、まず人が増えるので活気が出ます。新しい商品が生まれ、人々は欲しいものが増えて購買力が上昇していく。すると、売り上げが上がって賃金も上がります。その結果、人々は収入が増えるため、さらに購買力も上がっていき、経済のプラスのスパイラルが勢いよく巻き起こっていくのです。

それではお金のトレーニング。世界的に今後人口ボーナスが期待されているエリアはどこでしょうか?

答えは、アフリカとアジアです。国連の人口予測によれば2050年までの人口増加の半分以上はインド、ナイジェリア、パキスタン、エチオピアなど、ほぼアジアとアフリカに集中しています。インドは2027年頃には中国を抜いて世界最多人口の国になる予想です。ナイジェリアは2050年頃にはアメリカを抜いて世界3位の人口になると推計されています。世界的には人口が増加し、アジアやアフリカではそれが特に急激で人口ボーナスがおきる。日本はその反対に、人口が減少し人口オーナスという経済的なマイナスが大きくなる。

これは今の時代を生きる私たちが目を背けてはならない事実です。

だからこそ生涯、お金に困らないで生きていくためには、自分が50歳、70歳、100歳になる頃の国の姿をできるだけ想像してみることが大事になってきます。そのうえでお金のスキルを若いうちから鍛え、自分で備えていくしかないのです。

そのために国もNISAやiDeCoといった資産形成の優遇制度を準備してくれています。「貯蓄から投資へ」とスローガンも掲げています。私たちはお金のスキルを身につけて、個人で準備する必要がある世代なのです。

お金のスキルを制するものは人生を制する、そういう時代に突入しているのです。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。

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