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2022.04.20

スタートアップ庁 ──ABCash児玉隆洋 連載「アフターコロナのお金論」Vol.45

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。連載「アフターコロナのお金論」はこちら

ユニコーン企業

スタートアップは日本の経済成長の起爆剤

経団連(日本経済団体連合会)は2022年3月、スタートアップ企業の育成に向けた提言を発表しました。

2027年までに、起業数を約10万社、企業価値が10億ドル以上の未上場企業数を約10社から約100社にするという目標を掲げたのです。これから検討される具体的施策案としては、法人設立手続きの完全なワンストップ化による起業がしやすい環境整備、スタートアップ起業家が個人保証などの担保なしで立ち上げ資金の融資を受けられる環境整備、またスタートアップ関連政策の司令塔となる「スタートアップ庁」の設立の必要性を訴えました。起業後進国とも言われる日本が、ついにスタートアップに力を入れはじめたのです。

それではお金のトレーニング。企業価値が10億ドル以上(日本円で約1000億円以上)の未上場企業は、滅多に出現しないことからある通称で呼ばれています。その通称はなんでしょうか?

答えは、「ユニコーン」企業です。ユニコーンは馬に大きな角が生えている伝説の生物ですが、そのくらい滅多に出現しないことからそう呼ばれています。日本のユニコーン企業だとスマートニュースやSmartHR、株式上場前のメルカリもユニコーン企業でした。

さらに企業価値が100億ドル以上(日本円で約1兆円以上)の企業をデカコーンと言い、ユニコーンの上位ランクも存在しています。時価総額1兆円付近だと現時点の日本では、例えばZOZO、東急、日本航空、ヤマトホールディングスなどの巨大企業クラスになります。

また今回の経団連からの提言のひとつに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的マネーによる投資拡大を求めるというものがあります。このGPIF(Government Pension Investment Fund)は日本の年金積立金管理運用独立行政法人で、預託された公的年金積立金の管理・運用を行っている機関です。国民年金や厚生年金の年金保険料から集められた公的年金積立金は、厚生労働大臣の預託により、GPIFが信託銀行や投資顧問会社などの運用受託機関を通して国内外の債券市場や株式市場で運用し、運用収益とともに年金給付の資金源としています。

それでは、お金のトレーニング。GPIFが運用する年金マネーは、運用資産が約200兆円近くにもなり、その巨大さから国内外の市場関係者から高い関心を集めてきました。巨大な運用資産を保有し、ひとたび動けば市場に大きな波を発生させるこのような投資家は、自然界の生き物に例えてなんと呼ばれているでしょう?

答えは、クジラです。欧米と日本のクジラの動きの違いを見ていきましょう。欧米では年金基金などのクジラがベンチャーキャピタルなどを通じて未上場企業にリスクマネーを供給しています。2021年のベンチャーキャピタル投資額は米国は約38兆円、英国は約4兆円。それに対して日本はたったの約5200億円。海外と比べてスタートアップに資金が流入していません。

例えば、米カリフォルニア州職員退職年基金は運用資産の10%(約5兆円)を未上場株で運用していまが、GPIFの運用資産に占める未上場株の比率は0.1%以下にすぎません。

日本国内の資金調達額は伸びてきていますが、世界的に見るとまだまだ遅れをとっているのが現状なのです。

日本と海外でギャップを感じるこの資金調達規模。スタートアップの資金調達が、実際にどのように行われているかはご存知でしょうか。

スタートアップの資金調達の段階は「ラウンド」と呼ばれ、シードラウンド・アーリーラウンド・シリーズAラウンド・シリーズBラウンド・シリーズCラウンドのような段階に分けられており、投資家が企業の経済規模について把握しやすくしています。

第一段階のシードラウンドは、企業のビジネス方針が決まったくらいの段階。まだビジネスを開始する前に当たりますので当然サービス・プロダクトはリリースされておらず売上もほぼゼロです。資金調達額の目安は、1000万円~3000万円くらいです。

第二段階のアーリーラウンドは、サービス・プロダクトが完成しリリースしたばかりの初期段階。チームメンバーもようやく数人集まってきています。資金調達額の目安は、3000万円~1億円くらいです。

第三段階のシリーズAラウンドは、事業が本格的に始まり顧客を獲得していく段階に当たります。投資家が投資する判断基準として、プロダクトがマーケットにフィットしていることが強く求められます。「トラクションはありますか?」、という言葉もよく使われますが数値で成長性を示せるような実績が必要になります。そしてここのラウンドを成功させるのが高難易度のため、このラウンドはスタートアップの「死の谷」とも呼ばれています。スタートアップがこのラウンドを成功できる確率はここで一気に低くなります。資金調達額の目安は、1億円~5億円くらいです。

第四段階のシリーズBラウンドは、グロース段階と呼ばれ、事業が順調に拡大し軌道に乗り始めた時期です。ユニットエコノミクスが成立していることが求められます。1顧客あたりの収益性が数値実績で検証済みであり、黒字化を数ヶ月継続した数値実績をもとに説明できることが必須要件です。資金調達額の目安は、5億円~10億円くらいです。

第五段階として企業によってシリーズCラウンドやシリーズDラウンドに入りますが、この段階では事業が堅調に成長し、企業の管理体制も強化されて経営基盤も安定してくる時期です。株式上場に向けた上場準備が本格化したり、M&Aを仕掛けて他社を買収し事業拡大を狙う企業も出てきます。資金調達額の目安は10億円以上となりますが、このラウンドは規模も大きくなるので、資金調達アポイントを開始してから調達するまで半年~1年もかかるような長丁場になることも多くあります。

スタートアップ特化型のLinkedIn!?

また、最近増えている創業して間もないベンチャー企業に投資することをエンジェル投資とも呼びますが、そのエンジェル投資家にはサッカー選手の本田圭佑氏などビジネス出身者以外の参入も増えてきて、日本でも盛り上がりをみせています。本田圭佑氏は最近スタートアップ特化型SNS「PROTOCOL」も立ち上げました。日本中・世界中のスタートアップの起業家、投資家、求職者とつながることができる、スタートアップに特化したLinkedInのようなイメージです。

さらに投資家たちにスタートアップの起業家が直接プレゼンし、資金調達に挑戦していくリアル投資ドキュメンタリー番組も増えてきています。

このように、スタートアップ投資や起業についていろいろな軸で露出されていくことで、日本のスタートアップの活性化になると思います。起業家に憧れを抱き起業をする人も増えてくることでしょう。

ただ、資金調達をするということは、投資家に対して大きな責任をおうということであり責任重大です。

また個人としても挑戦して頑張ったけどそれでも失敗するというリスクも当然でてきます。明るいプラスサイドだけではなく、暗いマイナスサイドも理解して、その上で起業するのであれば覚悟を持って起業する、そういうことが金融リテラシーとしても重要だと思います。

「スタートアップ」。それは既存の産業の改善ではなく、新しい産業を自分たちでつくること。今まで見たことのない新しい価値を世の中に創造することです。普通は無理だと思う、聞いたことない、前例がない、ということに挑戦することです。

ABCashも創業4周年を迎えたばかりの若いスタートアップですが、スタートアップから日本経済の活性化に少しでも貢献していきたいと思っています。凄い会社に入るのではなく凄い会社を創りたい。そういうスタンスの人はスタートアップに向いているかもしれません。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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