暗号資産やブロックチェーンが持つ、世界を変える大きな可能性について各界のキーパーソンに取材していく連載。今こそ知っておくべき、暗号資産の知識とビジネスへの活用例とは? 連載「キーパーソンを直撃! 暗号資産は世界をどう変えるか?」vol.11
2021年10月、Facebookは社名をMetaへ変更すると発表し、話題を呼んだ。これは、マーク・ザッカーバーグCEOがメタバースに大きな可能性を見いだしており、その構築に注力していくことの決意表明でもある。メタバースはVR空間を宇宙(ユニバース)になぞらえ、それを束ねて超越する(メタ)ものとして、1992年に発表されたアメリカのSF小説『スノウ・クラッシュ』で初めて使われた言葉だ。メタバースに接続すれば、別の場所から接続している人たちとさまざまなコミュニケーションを取ることができる。また、昨今ではNFTとメタバースが、同じ文脈で語られることも多くなった。今回は、NFTマーケットプレイスを運営するコインチェック執行役員の天羽(あもう)健介氏に、NFT×メタバースが持つ可能性と、同社が企画するメタバース上の近未来都市「Oasis Tokyo」の展望について話を聞いた。
2022年はNFT×メタバース元年
'20年頃、私が執行役員を務めるコインチェックは他社との差別化を図るため、今後の新規事業の方向性をどうするか社内で議論をしていました。近年急速に普及し、認知も高まっているNFTに力を入れてマーケットプレイスを運営していくと決断したのは、この時です。今のNFT界隈の盛り上がりを見れば、これは正しい選択でした。そして、’22年はきっと"NFT×メタバース元年"と呼ばれる年になると思います。
メタバースと聞くと、まだ遠い未来の話のように感じてしまう人も多いかもしれません。しかし、今や当たり前となったWEB会議もバーチャルな世界との接続といえます。また、ツイッターやインスタグラムも、現実世界とデジタル空間をつなげてコミュニケーションをしていますし、メタバースはそれを発展させたものだと考えることもできます。いわば、メタバースは次世代のSNSです。メタバースによって現実世界と仮想世界の融合が進み、NFTで表現されるモノやサービスが売買され、その決済には暗号資産が用いられる。その裏側では、ブロックチェーンの技術が動いています。このようにNFTやメタバース、暗号資産など、一見バラバラとも思えるピースがつながりを持ち始めているのです。
メタバースは今後、単なるデジタル上の空間ではなく、現実世界と並列にある生活空間となっていくでしょう。例えばコロナ禍で、音楽のデジタルライブやオンライン展覧会などが開催されるようになりましたが、これもメタバースのひとつのカタチといえます。メタバース上のアバターは、自分と同一であり分身のような存在になります。メタバースがより一般的になっていけば、自分のアバターにお洒落な服を着せたいと考える人も増えるでしょう。ですから、メタバースではファッション分野の需要が急速に伸びていくと思いますし、大きなビジネスチャンスも生まれていきます。
あらゆる人が交流可能なコミュニティ拠点をつくる
今年の1月31日にコインチェックは、メタバース空間である「The Sandbox」上に、’35年の近未来都市「Oasis TOKYO」を制作するプロジェクトを発表しました。
「The Sandbox」はアバターや建物などのアイテムやゲームを作成して遊ぶ、ユーザー主導のゲームメイキングプラットフォームです。私たちは「Oasis TOKYO」を、NFT×メタバースのコミュニティ拠点と位置づけており、そこでは美術館や音楽スタジオ、スポーツ競技場など、NFTと親和性があるさまざまな施設や仕かけを提供していく予定です。
また、著名なアーティストとファンとの交流や、企業のコミュニティ育成の場としても活用できるような場にしていきたいと考えています。今年中のオープンを目指しているので、その際はぜひ「Oasis TOKYO」へ足を運んでいただき、NFT×メタバースの世界観を体験してもらえればと思います。
コインチェック執行役員
コインチェックテクノロジーズ 代表取締役
天羽健介
1983年兵庫県生まれ。大学卒業後、商社やリクルートを経て、2018年にコインチェック入社。’21年、コインチェックテクノロジーズ代表取締役に就任した。著書に『NFTの教科書』がある。