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2022.04.05

成人年齢引き下げによる、お金の新常識──ABCash児玉隆洋 連載「アフターコロナのお金論」Vol.44

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。連載「アフターコロナのお金論」はこちら

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成人年齢引き下げ、お金の何が変わるのか?

桜も舞い、まん延防止も解除され世の中がまた動きはじめた2022年4月。成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。さらにそれと同時に高校での金融教育が必修化され、先進国の中でも遅れをとっている日本の金融教育が大きく前進するきっかけとなると思います。

お金のトレーニング。成人年齢が見直されたのは何年ぶりでしょう?

答えは、146年ぶりのことです。146年前といえば、長期に渡って繁栄した江戸時代と共に鎖国が終わった頃です。我々は、日本が文明開化して以来の歴史的転換点にいるのです。

今回の成人年齢の見直しは、18歳・19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備すること、さらに積極的な社会参加を促し社会を活力あるものにするためだとされています。

成人年齢が20歳から18歳になることで、制限が解除されることと解除されないこともあります。例えば、お酒やたばこに関する年齢制限については20歳のまま維持されますし、公営競技(競馬・競輪・オートレースなど)の年齢制限についても20歳のまま維持されることになります。これらは健康被害への懸念、ギャンブル依存症対策などを考慮してのこととされています。

それではお金のトレーニング。今回の成人年齢の引き下げによって、お金関連については何ができるようになるのでしょうか?

答えは、例えばローン契約ができるようになります。他にもクレジットカードの契約もできますし、証券口座の開設も本人の判断でできます。

さらに、生命保険や損害保険にも加入できるようになります。このようにお金について多くのことが、18歳という年齢から自分の頭で考えて、選択し、決断できるという世の中になります。

そこで知っておきたいのは、自由が認められる側面と、責任が伴うという側面があるということです。「自由と責任」、それはビジネスの現場においても全く同じことが言えます。

例えば、よりグレードの高い役職に抜擢された、プロジェクトリーダーに抜擢された、ということになると自分の裁量で決められる自由度も増しますので、チャレンジの幅が広がり仕事もエキサイティングになっていくでしょう。そしてそれは単純に嬉しいものです。

ただその反面、もしリーダーとして成果をだせなかった時にはリーダーは責任をとらないといけません。ビジネスの現場ではそれが日常です。ビジネスは結果が全てのプロの世界だからです。だからこそ若手でスキルも経験も少ないうちに抜擢されたリーダーほど焦りが大きくなり、成果をだせるように目の前の仕事の成功確率をあげるようにあらゆる手を尽くし、さらに成果をだせるように自分のスキルアップにも時間を使うように努力するようになります。

若手で抜擢された人ほど成長速度がはやいのはそういう理由があると思います。

今回の成人年齢の引き下げについて自由と責任でみてみると、お金について自分で自由に決められる裁量は広がりますが、その反面でもしトラブルや事件に巻き込まれた場合はその損害も自分でおうことになります。すべては自己責任の世界です。

だから私は最低限の「金融リテラシー」が18歳以上にこそ必要だと考えます。国も金融リテラシーが重要な時代になると考えたからこそ、高校の金融教育必修化に踏み切ったのだと思います。日本国民の基礎知識と国が定義したということです。

ここで少し海外に目を向けてみましょう。

海外では、18歳という年齢で、もう投資デビューをして、SNSで人気になっているインフルエンサーもいます。彼女の名前はミス・ティーン・クリプト。彼女は16歳という若さから、お小遣いをつかって投資デビューして話題となりました。

では、お金のトレーニング。彼女はどういった投資をはじめて話題になったのでしょうか?

答えは、「暗号資産」です。まだ投資ではなく投機といわれることも多い暗号資産ですが、彼女は自分のお小遣いでビットコインを購入しました。現在は「暗号資産インフルエンサー」として活動しています。

世界的に話題になることの多い暗号資産。過去のお金のトレーニングでも取り上げたビットコインもその1つです。

続いてお金のトレーニング。ビットコインも暗号資産の1つですが、暗号資産は世界で何種類あるでしょうか?

答えは、約15000種類です。ブロックチェーンの改ざん不可能なテクノロジーを活用してどんどん新しい暗号資産が誕生しています。ビットコインはその中で一番有名な暗号資産にすぎないのです。

そしてビットコインのような暗号資産は価格が乱高下しがちです。その不安定さもあり、「資産」としての機能は果たすものの、「通貨」としては機能しにくいのです。そこで、安定(=ステーブル)した価格を実現するように設計されたのが、「ステーブルコイン」と呼ばれる新しい暗号資産です。

そこでお金のトレーニング。世界初のステーブルコインはなんという名称でしょうか?

答えは、Tether(テザー)。Tetherは2014年に設立された、Tether Limited社が運営する世界初のステーブルコインです。ドルと価格が連動しており、Tether Limited社がステーブルコインと同量の米ドルを保有することでその価値を保っています。

ステーブルコインは、価格を安定させる仕組みの違いから主に4つの種類に分けられます。法定通貨を担保にコインを発行しその法定通貨との交換比率を固定する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産を担保にコインを発行し価格を連動させる「暗号資産担保型」、金や原油などの商品価格の値動きに連動させる「コモディティ型」、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」です。さらに日本でも、日本円ステーブルコイン「DCJPY」が実証実験入りました。「DCJPY」は、日本円の銀行預金を裏付けとするデジタル通貨です。74の企業・銀行・自治体・団体が参加する企業連合が取り組んでいます。

成人年齢の18歳への引き下げによる、お金の自由と責任。そしてテクノロジーによるお金の急速な進化。高校生が金融リテラシーを身につけはじめる時代になりましたが、日本は先進諸国と比べてもまだまだ金融リテラシーが低く、だからこそ金融の世界には「情報の非対称性」が大きく残っています。

だから、金融リテラシーを学ぶことは新しい自己投資だと思いますが、ABCashの生徒さんの中に「お金の勉強ができるセミナーだと思って参加したら、最後に投資商品や保険商品を売る目的のセミナーだと気づいてそれまでのセミナーの話が信じられなくなった……」という声もよく聞きますので、注意したいところです。

ただ、若いデジタルネイティブ世代ほどビジネスモデルへの嗅覚が優れていると思います。それは例えばYouTuberやインスタグラマーが情報発信しているときに、その裏側に商品販売があり手数料をもらっているのかどうか、その場合は事前にユーザーにPR案件だと告知しているかどうか、を日常的に察知している世代だからです。

私たち1人1人が金融リテラシーを身につけ、自分のお金のことを自分で判断できること。それは自分の人生を自分で運転するということに他ならないと思います。大事な自分の人生のハンドルを他人に任せきりではいけませんし、そもそも運転スキルを身につけずに公道に飛び出すのは事故の元になるのです。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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