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2022.03.20

金融の核兵器とは?──ABCash児玉隆洋 連載「アフターコロナのお金論」Vol.43

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。【連載「アフターコロナのお金論」】はこちら

ロシアのSWIFT排除の影響を考える

今年2月。世界中に衝撃を与えたロシアのウクライナ侵攻。

連日戦争のニュースが飛び交う日々が続き、その影響は世界中に広がり、金融・経済界、そして私たちの生活にも広く及んできています。

金融市場では株価が乱高下を続け、混乱をきたしています。

以前のお金のトレーニングで学んだ「金」。有事の安全資産といわれます。その金の価格について、大阪取引所で先物価格が、一時1グラム7377円まで上昇し過去最高値を更新しました。世界的なインフレが進むなか、ロシア軍によるウクライナへの侵攻の解決が見えず、安全資産とされる金を買う投資家が増えているためです。

また、天然ガスの輸出量が世界1位、原油の輸出量は2位と資源大国でもあるロシアへの経済制裁が、物価上昇にも拍車をかけています。原材料が世界的に不足することで原材料の価格が高騰し、その結果私たちが購入する生活商品の価格も上昇してきているのです。

ウクライナでは道路にひざまずきロシアの戦車を止めようと立ちはだかる一般男性の方もいる中で、世界からロシアへの経済制裁として、国際銀行間通信協会・SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)からロシアを排除する措置が行われました。

それではお金のトレーニング。連日ニュースでもよく耳にするようになったこの「SWIFT(スイフト)」。一体なんでしょうか?

答えは、世界各国の金融機関を結ぶ安全性の高い国際決済ネットワークです。世界の1万を超える金融機関が参加しています。

安全にメッセージや支払い指図を送る手段として利用されており、世界的にこれに代わる存在はなく、国際金融では必須の送金手段となっています。ベルギーを拠点とするSWIFTは、25人のメンバーから構成される委員会で統治されており、ベルギー法の下で法人化された「中立な事業体」を自称する組織であり、欧州連合(EU)の法規制に従う必要があります。

続けてお金のトレーニング。世界中で、高額決済の約半分がSWIFTネットワークを利用していますが、1日当たりの決済額は約何ドルでしょう?

答えは、1日当たり約5兆ドル。日本円で約575兆円にものぼります。

SWIFTを利用できなくなると、ロシアは仮に海外で売り上げたとしても、その収入を受け取れなくなり、世界中の金融取引の大半ができなくなるという制裁なのです。その影響力から、経済制裁として最終手段と言われ、フランスのルメール経済・財務相は、「金融の核兵器」と例えました。

実際に過去にはイランが、核開発を進めた結果SWIFTを2012年と2018年に排除されたことがあります。イランは原油などの輸出が低迷し、国内GDPは2012年には7.4%減少、再び排除された2018年には6.0%減少しました。

ここで改めて、GDPのおさらいをしましょう。

GDPとは、世界共通の経済指標である「Gross Domestic Product」の略で、国内総生産という意味です。国内で生み出された付加価値の総額であり、GDP統計は一般的には国民所得統計とも呼ばれ、一国全体の経済活動を測る尺度として最も包括的なものと言われています。GDPは一国の経済規模を示す指標として用いられ、その成長率で経済が好調なのか不調なのかがわかります。

また、今回のロシアとウクライナの戦争ですが、日本企業への影響をみてみましょう。

まずロシアに進出している日本企業は約347社あります。貿易総額は2019年で2兆3432億円、2020年は1兆7726億円にのぼります。輸出品目としてはトヨタをはじめとした自動車メーカーと自動車部品メーカーが約半分を占めています。その自動車大手のトヨタは、今年3月ロシア工場の生産停止に踏み切りました。ロシア工場では主にSUVのRAV4などを製造しており、2021年は約8万台を生産しているのでそれが長期でストップすることになると甚大な経済的な打撃を受けることになります。

新型コロナウイルスの感染拡大。予期せぬ戦争の勃発。

悲しい出来事ではありますが、こういった有事の際に、状況を冷静に見極めて時代を先読みし行動する力をつけることが、より一層大事になってきます。

そのためには、まず知識を自分の中にしっかりと蓄積すること。そして、その知識を活かすことが大事です。どんなに優れた知識でも宝の持ち腐れでは意味がありません。活かすとは、自分の資産を自分で考えて再分配したりという資産形成行動もそうですが、人に教えたり知識をアウトプットをしてみることも大事です。

ビジネスパーソンが一番スキルが身につく瞬間は、上司に何かを教えてもらった時ではなく、後輩や部下に何かを教えた時だといいます。なぜなら、人に教えるということは責任が生じるからです。暗記するではなく、自分の頭で「考える」ということになります。

資産形成も知識をつけたら実際に始めてみること、そして人に教えてみるといいでしょう。アウトプットは最大のインプットになるのです。

金融教育サービスABCashの講師「ファイナンシャルコンサルタント」も、日々ファイナンシャルリテラシーやファイナンシャルコーチングの研修がありますし、日々自ら最新情報を学び続けるような知的好奇心の高いメンバーが多いです。

でもファイナンシャルコンサルタント自身も、生徒さんに金融教育トレーニングをする中で、よりわかりやすく伝えよう・正しい情報を伝えようと頑張ることで、結果自分自身にもお金のスキルがどんどん蓄積されていっているのです。

学んだら誰かに教えてみる。知識を与えてみるという行動をオススメします。

理論物理学者アインシュタインの言葉にある「人の価値とは、その人が得たものではなく、与えたもので測られる」は、私の好きな考え方の一つです。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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