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2022.02.05

大・EV時代到来──ABCash児玉隆洋 連載「アフターコロナのお金論」Vol.40

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

EV

EV(電気自動車)が普及するその理由とは?

EV事業が好調なテスラの株価上昇により、テスラCEOであるイーロン・マスク氏は一時「世界一の資産家」になりました。EV普及が加速していくこの時代、それは「お金」とどう連動するのか、みていきましょう。

最近ニュースでも、環境問題が話題に上がることが本当に多くなってきました。

SDGs(持続可能な開発目標)にも、地球環境の保全と利用のバランス、自然の共存を実現するための17の目標が設定されていますが、その中に「13.気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」という内容が含まれています。今後は企業活動においても、環境問題対策は必須になっていきます。

現在、約190カ国・地域が批准している「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命以前から2度未満に抑制し、努力目標として1.5度以下を目指しています。これに伴い、各国が温暖化ガスの排出削減目標を表明しました。排出量世界第2位の米国はトランプ前政権の2017年に離脱していましたが、2021年バイデン大統領になり復帰しています。

国連気候変動枠組み条例事務局の発表によると、現段階で削減目標は2030年時点で温暖化排出量が10年比16%増になると指摘しており、パリ協定の目標実現には不十分で各国更なる対応が必要になるとの見方です。

それではお金のトレーニング。温暖化ガス排出の削減ですが、大きく対応を迫られる業界はどこでしょう?

答えは、自動車業界です。自動車業界はこれから大きな変革が求められることになり、その株価動向にも注目が集まっています。

自動車業界の二酸化炭素(CO2)排出量は、2018年で1億8,000トンとなっており、全体の17.8%も占めています。日本自動車工業会は、政府の2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」目標に関して、自動車業界も取り組む方針を表明しています。

自動車業界では、EVをめぐる競争が激しくなっており、各社動きがあります。

まずテスラは、2021年1月2日にEVの年間販売台数が、2020年比87%増の「93万6172台」と過去最高を更新したと発表しました。前年比5割増の75万超えの販売目標を大幅に上回る結果となっています。

コロナ禍で世界的な半導体不足により、多くの自動車メーカーが生産一時停止や減産に手間取るなか、テスラはソフトウェアの書き換えなどによる代替品への置き換えで生産や販売への影響を最小限に抑えることに成功したのです。

テスラCEOのイーロン・マスク氏は2021年12月19日、自らの納税額が110億ドル(約1兆2500億円)超えになる見通しだと明らかにしました。単年の個人納税額としては、米国史上最大になると言われています。

2022年、マスク氏のストックオプション(新株予約権)が行使期限を迎えます。これによって生じる源泉徴収義務を果たすために、2021年11月から保有するテスラ株を段階的に売却しています。その売却額は最終的に200億ドル相当に達すると見込まれています。

トヨタ、ソニーグループ他、あの日本企業もEVに切り替えると発表

次に、日本の自動車業界のEV対応をみてみましょう。

トヨタは2021年12月に、EVの目標販売台数を2030年に350万台とすることを発表しました。燃料電池車(FCV)と合わせて200万台としていた従来の目標から大幅に引き上げました。2021年4~9月期のEV販売台数が7000台であったことから考えると、非常に高い目標であることが分かります。2030年までに30車種の展開を計画しており「レクサス」ブランドは2035年までに全てEVになります。トヨタのEV投資は最大限に引き上げられ、4兆円が充てられます。

また、ソニーグループは2022年1月4日に、EV事業の新会社を設立すると発表しました。ソニーグループは兼ねてより、自動運転機能を備えた電気自動車の試作車で行動試験を進めていましたが、今回の会社設立にて本格的な事業化を検討するフェーズに入ったと言えます。

そのほかにも、EVを積極的に導入する企業が日本でも増えています。

それでは、お金のトレーニング。2020年度末までに三菱自動車のEVを1200台導入した企業はどこでしょうか?

答えは日本郵便です。

また、続けてお金のトレーニング。2025年までに保有車両の全てをEVに切り替える目標を発表した企業はどこでしょうか?

答えは、タクシーのMKです。

このように様々な企業が、日本のCO2削減に貢献しようと動き出しているのです。

なので、EV時代の動きを考えるときには自動車だけではなく、EVの部品、EVを活用する企業まで視野を大きく広げて考えると、今後成長する業界・企業もみえてくるのではないでしょうか。

ただ、EVにも課題はあります。それは価格の高さや、品揃えの少なさ、充電インフラの不足などです。日本においてのEV普及は遅れをとっており、さらに日本の発電は7割が火力に依存しているため、EV普及によって増える電力量に懸念の声も上がっています。

充電に関して言えば、自宅での基礎充電と外出先での急速充電に対するインフラを整えていく必要があります。海外では150~400キロワットと高出力な充電器の設置をするなど、インフラ整備が進められていますが、日本の高速道路には最大90キロワットまでの充電器になっています。

このようにEVには解決しなければならない課題もまだまだ多い状況ですが、EVシフトへの太い流れは、世界的に止めることはできないと思います。

大局的な時代の流れをよみ、そこで進化を求められる業界をよみ、その業界の中で進化・対応の速い企業をみつける。そのように考えて我々個人の投資活動も行なっていくと、より投資が楽しくなっていくのではないでしょうか。

今後のEVにますます注目したいところです。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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