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2022.01.20

2022年、東証再編の狙いと影響は?──ABCash児玉隆洋 連載「アフターコロナのお金論」Vol.39

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

東京証券取引所

大企業向け「プライム」、中堅企業向け「スタンダード」、新興企業向け「グロース」という3つの市場区分に

去年2021年は、1月に緊急事態宣言が発令され、4月からはまん延防止等重点措置が加わるなど、長期にわたり経済活動が抑制される日々が続きました。そんなコロナ渦中において、投資という資産形成の選択をする人が増えています。

国家レベルでiDeCoやNISAなどの投資を促進させる制度の推進を行っていることもあり、若年層を含めて投資人口が増えてきています。つみたてNISAの加入者数も、例年以上に増加しています。金融庁の発表によると、2020年3月末には約219万口座だったつみたてNISA口座数は、2021年6月末時点では約417万口座とこの短期間で約2倍にも急増しているのです。

そんな投資家が増えている今こそ注目したいのが、2022年4月に予定されている東京証券取引所の再編です。現在の東京証券取引所は4つの区分(東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQ)にわかれています。

ここでお金のトレーニング。東証再編でいくつの区分に変更されるでしょうか? またその区分のそれぞれの名称はなんでしょうか?

答えは、区分は3つです。2022年4月、東京証券取引所は現在の4つから3つへと区分が絞られる形となります。そしてその3つの区分の名称ですが、プライム、スタンダード、グロースという名称に変更されます。

現在の東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQの4区分が、大企業向け「プライム」、中堅企業向け「スタンダード」、新興企業向け「グロース」という3つの市場区分へと整理されるのです。

また各市場には、ESGという環境・社会・企業統治の内容を含む基準を定められており、上場する企業にはESGへの対応が義務付けられるようになります。

それぞれの市場をみていきましょう。まずはプライム市場です。

現在でいう東証一部が該当し、最上位市場となります。最も厳しい上場基準が設定されており、日本を代表する一定規模のグローバル企業群が移行するとみられています。プライム市場を選択することで、信用力やブランド力など企業の実力を示すことができるため、国内外の投資家から投資を受けやすくなるという効果も期待できます。そのため、当初はプライムへの移行を検討する企業が目立っていましたが、最近になり、基準が厳しく条件を満たすことが難しいという判断で、プライム市場移行を断念する企業もでてきています。

それではお金のトレーニングです。プライム市場に移る条件として、「株主数」「流通株式比率」などがありますが、それぞれどのくらいの水準が求められるでしょうか?

答えは、「株主数」は800人以上。こちらは流動性の観点で重要視されます。また「流通株式比率」は35%以上。こちらはガバナンスの観点で重要視されています。

さらに財務状態という観点で、「債務超過ではないこと」も求められます。非常に高い水準が求められる市場なのです。

次にスタンダード市場です。プライムには至らないけれど、しっかりとした中堅企業が移行すると考えられています。元々東証一部で上場していた企業からすると、格下げになった印象が出てしまうため、取引や採用活動などに影響が出るのではという懸念もあります。しかし、多くの企業がスタンダード市場に移行されると見られており、今後の動きが注目されている市場です。

東証一部からスタンダードへの移行で動いている企業の例としては、日本オラクル、串カツ田中ホールディングス 、クックパッド、エバラ食品工業、大正製薬ホールディングスなどが挙げられます。

最後にグロース市場です。現在でいうマザーズ、JASDAQ(グロース)が該当し、新興企業が移行すると考えられいます。グロース市場は、着実な成長を促すことが狙いとされており、グロースの上場維持に必要な時価総額は、上場後10年で40億円以上とされ、マザーズの基準である10億円の4倍にもなり、成長性が厳しくジャッジされるようになっています。

このように成長可能性が高い企業が区分されると見られていますが、事業上のリスクは大きいという側面もあるので、冷静に判断することが必要になってきます。

ここでお金のトレーニング。そもそもなぜ、このような再編が行われるでしょうか?

まず前提として、現在の4つの市場において、私たちが投資をする時にどの市場でどの企業を選べばいいのか、4つの市場区分の違いは何か、プロでも説明することが難しいと言われています。例えば、新興企業向けのJASDAQやマザーズは一部役割が重複しています。

そういう状況があり、海外の投資家が日本へ投資をする難易度が上がってしまい、参入障壁のひとつになっているという実情があり、その状況を脱却するため今回の東京証券取引所の再編が行われます。

海外の人にも分かりやすい3つの市場に整理をし、国内外の投資家を呼び込みたいという狙いです。今年春に行われる東証再編で、市場の値動きがどのようになるのか? 今のうちから自分の頭でしっかりと考えておくことが重要です。

それぞれの市場がどのような基準になっているのかを理解し、どういう企業が属するのかを知っておくことは、株式投資の基本のファイナンシャルリテラシーです。そういうファイナンシャルリテラシーを正しく理解し、経済動向をキャッチアップし、常に自分の頭で未来を考えて予測すること。それがこれからの時代で重要となるお金のスキルだと思います。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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