暗号資産やブロックチェーンが持つ、世界を変える大きな可能性について各界のキーパーソンに取材していく連載。今こそ知っておくべき、暗号資産の知識とビジネスへの活用例とは? 連載「キーパーソンを直撃! 暗号資産は世界をどう変えるか?」vol.7
コピー不可のデジタル資産、NFT(Non-Fungible Token)ブームの波が国内にも押し寄せてきている。SBIホールディングスやLINE、楽天グループなどの大手企業がNFT事業に乗り出し、『鉄腕アトム』や『ONE PIECE』などのNFT化、香取慎吾氏、ももいろクローバーZ、小室哲哉氏もNFT作品の制作に取り組む。大きな盛り上がりをみせるNFT市場はこれからどのような道をたどるのか。今年8月末より、NFTマーケットプレイス「Adam by GMO」β版のサービス提供を開始した、GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏に話を聞いた。
IPホルダーの逆襲!? NFTがつくるお金の流れ
NFTに関心を持ったのは昨年のこと。1995年にインターネットと、数年前にブロックチェーンと出合った時とも似た大きな衝撃を受けました。インターネットの登場は世界を激変させて暮らしを便利にした一方で、いわゆるIP(知的財産)ホルダーには、不利益をもたらした面があります。つまり、著作物が不正に流通することで収益が上がらず、作品の価値が毀損するリスクにさらされることになりました。私は、長年の懸念であったこうした課題がNFTにより解決できると確信し、Adamを立ち上げることにしたのです。
デジタルゴールドからデジタル通貨へ
例えば、世界中から大きな注目を集める謎の芸術家・バンクシーの作品がクリスティーズやサザビーズのようなオークションハウスで売買されると、出品者には収益がありますが、バンクシー自身にはいっさいお金が入りません。NFTが革新的である理由のひとつは、IPホルダーの著作物がセカンダリーマーケットで売買されるたびに、スマートコントラクト(契約を自動執行するプログラム)によってクリエイターにロイヤリティが入ること。これは今まで実現できなかった、まったく新しいお金の流れです。
NFTの広がりはクリエイターたちの権利を守る社会をつくり、創作活動をより活発にすることにつながるはずです。いわば、"IPホルダーの逆襲"といっていいかもしれません。NFTマーケットプレイスは、世界中の人々が作品を売買できる巨大なデジタル版オークションです。取引される作品数や金額も、今後尋常ではないスピードでどんどん増えていくでしょうし、その流れは誰にも止めることはできないと思います。
また、Adamをローンチしてから確信したのは、NFTマーケットプレイスの登場によって暗号資産の性質が、"価値の保存"から"価値の交換"へとその軸足が移りだしていること。いわば、デジタルゴールドからデジタル通貨への転換です。暗号資産は価格変動幅が大きいので通貨としては扱いづらいというのが、多くの人のこれまでの認識でした。しかし、世界最大のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaでは、イーサリアムに代表される暗号資産が決済の手段であり、OpenSeaの8月単月での取引額はなんと約3650億円(約34億ドル)。明らかに暗号資産が通貨としての機能を果たし、本格的に活用されている。このパラダイムシフトは、人類の歴史としても非常に大きな意味を持つことだと思います。
国内マーケットプレイスは寡占(かせん)へと向かう?
NFT市場は黎明期ですので課題もあります。よく指摘されるのは、プラットフォーム間でのロイヤリティ還元の仕組みに互換性がないこと。各マーケットプレイスが異なるルールで運用されているため、ロイヤリティが発生するのは特定のプラットフォーム内で取引された場合に限定されているのが現状です。なので、国内のNFTマーケットプレイスは一強による寡占に向かう可能性が高いと私は考えています。
NFTマーケットプレイスの運営は簡単なことではありませんが、GMOインターネットグループには暗号資産交換所をはじめ、ネット銀行や証券、FX、Eコマースなどの運営を通じて得た、豊富な知見と人材があります。Adamにはこれを全投入して、グループ全体のシナジーを最大限活用していきます。デジタルコンテンツをユーザーみんなが安心して売買できるような、信頼性の高いプラットフォームを作ることが私たちの使命です。
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GMOインターネット 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷正寿
1963年長野県生まれ。’91年にボイスメディア(現・GMOインターネット)を設立。現在は東証一部上場のGMOインターネットを中心に上場企業10社を含むグループ105社、パートナー6,554名を率いている。
Illustration=細山田 曜