人間の三大欲求は、宇宙空間になっても満たすことはできるのか?この当然ながら素朴な、居酒屋の下ネタトークになりかねない質問に加え、健康や美容、仕事面にいたるまで、気になる“スペースライフ”をふたりの有識者に聞いた。
Q. 宇宙資源は誰のもの?
A. 早い者勝ちの世界です
「宇宙条約などの最低限の国際ルールはありますが、現実的には無法地帯ともいえます。資源に関しても早い者勝ちです。乱獲が問題になればそれを制限する法整備も進むと思いますが、現状はルールがないからこそ夢もある。それが宇宙開発を推し進める原動力になっているはずです」(竹内)
「今年6月に日本では、宇宙資源法というものが誕生しました。これは、宇宙で採掘された資源の所有権を採掘者に認める法律です。夢のある法律だと思います。月や火星は、レアメタルや地球上にはない鉱物が眠る新たなフロンティア。投資する価値はあるはずです」(和田)
Q. 宇宙で犯罪をしたらどう裁かれるのか?
A. 出身国の法律で裁かれる!?
「現在、宇宙に行くのは、ほとんどが選ばれし宇宙飛行士たち。治安の乱れはないと想定されていますが、多くの一般人が宇宙空間に行くようになれば、犯罪やトラブルも起こってくるはずです。その時に、どんな法律で裁かれるのか、ルール整備はまだこれからです。今は、出身国の法律で裁かれることになるのではないでしょうか」(竹内)
Q. ガンダムの世界みたく独立戦争は起きる?
A. 侵略戦争は難しいが、独立戦争の可能性はある
「宇宙空間で有効なレーザービームのようなものの開発が進むのは間違いないでしょう。今は、宇宙開発をめぐり各国が牽制しあう形ですが、遠い未来には、自治独立を求めて地球との独立戦争を決断した、ザビ家のような連中が出現しないと断言することはできません」(和田)
Q. 宇宙でリモートワークはできるのか?
A. ISSこそがリモートワークそのものですよ!
「地球との通信は電波を使うので、通信距離によって遅延が生じます。電波は、光の速度と同じなので、1秒間で約30万㎞進みます。月面でしたら数秒の遅延なのでそれほど影響はありませんが、火星なら3〜20分ほどの遅延になります。現在の通信技術では火星とのオンライン会議はちょっと難しいかと思います。いつの日か、ワームホールをつくる技術が発明されれば、遅延は解消されるかもしれません」(竹内)
「ISSには、Wi-Fiが飛んでいます。使用制限があるかはわかりませんが、YouTubeを見られるくらいの通信速度はあるのではないでしょうか。ちなみに、ISSで働くクルーは、勤務時間が9〜17時(昼休み1時間)と決まっています。地上と連絡をとりながらミッションをこなしているので、宇宙飛行士こそ、リモートワーカーのはしりなんですよ!」(和田)
一般社団法人 宇宙カルチャー推進協会 理事 和田直樹
1961年東京都生まれ。宇宙教育指導者として、20年ほど前から全国の各教育現場・科学館などを回り、子供から大人まで幅広い世代の人たちに宇宙の面白さ・楽しさ・不思議をわかりやすく伝えている。SNSでも情報発信中。
サイエンスライター 竹内 薫
1960年東京都生まれ。東京大学教養学部、同理学部を卒業後、マギル大学大学院にて博士課程修了。理学博士(Ph.D.)。大学院修了後、サイエンス作家として活動し150冊あまりの著作物を発刊。物理、数学、脳、宇宙、AIなど幅広い科学ジャンルで発信を続ける。
※ゲーテ11月号は、宇宙の最新事情を網羅した完全保存版!
Edit=西原幸平(EATer)
Illustration=加納徳博