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2021.09.23

腸活の新常識! 睡眠の質を上げ、生活習慣病をも撃退できる!?

アスリートの便を研究をする企業、AuB(オーブ)を設立した元サッカー日本代表の鈴木啓太氏と、「腸内デザイン」で病気ゼロ社会の実現を目指すメタジェン代表取締役社長 CEO福田真嗣氏の共同記者イベントが9月に行われた。腸を温めることで起こる便通や健康への影響を共同研究し、いまだかつてないヘルスケア商品を生み出すという。便に詳しいうんちジャーナリストの神舘和典が最新の腸活事情を解説!

中央がAuB代表取締役の鈴木啓太氏。一番右がメタジェン代表取締役社長CEOの福田真嗣氏。

あなたは自分のうんちの色を知っていますか?
あなたは自分のうんちのかたちを知っていますか?

毎日排泄するうんちを見る重要性を説いているベンチャー企業がある。
その1社は、元サッカー日本代表選手、鈴木啓太氏が社長を務めるAuB。鈴木氏は2015年に現役を引退。自己資金4000万円に加え、エンジェル投資家から1億3000万円を調達。AuBを創業した。そして、アスリートだった自分の人脈を徹底的に活用。33競技1700人(!)のスポーツ選手のうんちを集めて分析。運動能力の高い人の腸内環境に共通する腸内細菌や特徴から、サプリメントAuB BASEやプロテインをつくり販売している。

私たちの腸内には約1000種類40~100兆個の腸内細菌が生息するといわれている。アスリートに限って調べると、腸内細菌のバリエーションが豊富で、さらに通常腸内細菌全体の5%とされる酪酸が倍の10%もいることがわかったそうだ。酪酸は腸の上皮細胞のエネルギーになり、免疫力をコントロールすると言われている。

鈴木氏自身、調理師だった母親の教えにしたがい、子どものころから観便していた。“観便”とは自分のうんちを観察すること。排泄したら、流す前に色や大きさをチェック。いつもと違っていたら、母親に報告していた。観便の習慣がつくと、自然と状態のいいうんちを出そうと心がける。子ども時代のおやつは、枝豆、海苔、梅干し、納豆などで、黄土色でバナナシェイプの立派なうんちを出していた。

もう1社は、慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授、福田真嗣氏が社長を務めるメタジェン。慶応大学と東京工業大学のジョイントベンチャーだ。福田氏は2011年にビフィズス菌による腸管出血性大腸菌O157:H7感染予防の分子機構を世界に先駆けて明らかにした。2013年には腸内細菌が産生する酪酸が制御性T細胞の分化を誘導し、大腸炎を抑制することを発表し文部科学大臣表彰若手科学者賞も受賞。2015年には、文部科学省科学技術・学術政策研究所の「科学技術の顕著な貢献2015」に選ばれている。
福田氏もたくさんのうんちを採取、研究している。そして重要な研究の1つが、便移植。難病の患者の腸内を1度ニュートラルにして、健康な人のうんちを注入し定着させることで、改善をうながす治療法だ。

福田氏によると、便移植はアメリカではすでに原因不明の難病、潰瘍性大腸炎の臨床試験で成果を上げているらしい。日本では安倍晋三前首相がこの病気を患い、下痢、腹痛、発熱などに悩まされ、第一次安倍内閣解散の原因となり、広く知られるようになった。

便移植はどんな病気に有効なのか。患者とドナー、どんな組み合わせだとうんちが定着しやすいのか。メタジェンでは研究を重ねている。もっとも定着しやすいと考えられているのは、もちろん、自分のうんちだ。ただし、病気になってからのうんちでは手遅れ。そこで、健康なときのうんちをフレッシュなまま常温で保存する方法を開発。特許を出願し、2020年に権利化した。

福田氏自身、毎日観便し、さらに採取・保存も心がけている。福田氏の食生活も見事だ。毎日、ボウルに山盛りの野菜やヨーグルトを欠かさず食べている。主食は五穀米やライ麦パン。当然、毎日黄土色のバナナシェイプのうんちを出しているそうだ。

このように健全な食生活を送り、腸内環境を整え“自分史上最高のうんち”を保存すれば、将来なにか大きな病気になったときに有効活用できるかもしれない。そのための“便バンク”も福田氏はつくろうと考えている。

さらにメタジェンでは、うんちのサプリメント化も研究している。現状の便移植は、肛門から内視鏡でうんちを入れる。内視鏡を体験したことのある人はわかると思うが、なかなかつらい。しかし、うんちをカプセルやペレットにできれば、負担なく経口摂取できる。

AuBが販売しているサプリメントと、メタジェン代表の福田真嗣氏の著書(記者会見会場で撮影)。

さまざまな生活習慣病の治療に光が見える可能性

さて、9月14日、東京の八重洲で、鈴木啓太氏のAuBと福田真嗣氏のメタジェンが合同記者会見を開いた。両社は今後、ヘルスケア分野で共同研究開発を行っていくという。
良質なうんちを集めることにおいて豊富な人脈を誇るAuB。うんちの保存、解析においてすぐれた技術をもつメタジェン。両者の強みを生かし合うことになる。

鈴木氏と福田氏は、お腹をこわしたときの対処法で意気投合したそうだ。腹痛をはじめ消化器系に違和感を覚えたとき、鈴木氏はお灸でお腹を温めるという、一方福田氏は繊維質をさらに摂り、腸内細菌を活性化させることでお腹を温める。

そんないきさつもあって、2021年には両社提携による最初の商品として、お腹が温まるアンダーウェアを予定している。お腹を温めることで、便通の改善、睡眠の質の向上、腸活サプリメントの効果の向上が期待できるそうだ。

将来的にどうしても期待してしまうのは、うんちのサプリメント化だ。AuBのネットワークにより、良質なうんちが集まれば、健康的な腸内環境がさらに明らかになっていくはず。それをメタジェンの技術でサプリメント化できれば、糖尿病、高血圧症、肥満症……など、さまざまな生活習慣病の治療に光が見えそうだ。

多くの人が食生活を改善し、良質のうんちを出して、病気になった人に提供するうんちネットワークが、近い将来構築されるかもしれない。

江戸時代、町のうんちは農家の肥料として有効活用されていた。滝沢馬琴の『馬琴日記』(中公新書の『馬琴一家の江戸暮らし』に読みやすく引用されている)にリアルに書かれているが、農民は定期的に町に出かけ、お金やナスや大根とうんちを交換していた。

江戸時代、うんちは格付けされていた。栄養豊富な大名屋敷のうんちは「勤番」といわれ、通常の4~5倍で取引されたそうだ。その次は一般庶民の「町肥」。次は共同便所の「辻肥」、おしっこが多く混ざっているものは「たれこみ」……とどんどん価値が下がっていく。もっとも格が低いのが、牢獄のように栄養価の低い便所の「下等品」。下等品では野菜が育たないため、川や海に捨てられていたという。

近未来、江戸時代のようにうんちが格付けされ、ランクによってグラム単位で価格が決められ、売買される時代がやってきそうだ。雑穀や繊維質の多いものを食べて、いいうんちを出して、AuBに買い取ってもらう。あるいはメタジェンで保管してもらう。それが難病を患った誰かや自分の治療に役立つ時代がやってきそうだ。格付け会社や代理店もできるだろう(江戸時代にはうんちの格付けのプロもいたらしい)。いいうんちを出すために健康になれて、しかもお金も稼げるかもしれない。

TEXT=神舘和典(うんちジャーナリスト)

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