新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。 アフターコロナのお金論30回。
投資アプリのロビンフッド、ついにIPO
アフターコロナで世界中の注目を集めたアメリカ発のサービス「Robinhood(ロビンフッド)」。ロビンフッド現象という言葉でも話題になりました。
この若者向けの投資アプリを運営するこのロビンフッドが、今年の7月29日に米ナスダック上場を果たしました。コロナ禍も契機にロビンフッドで投資を始めた若い世代が一気に増加し、「ロビンフッダー(ロビンフッド族)」とも呼ばれ大きなムーブメントになりました。
このロビンフットは、2013年4月カリフォルニアで設立された会社です。「金融の民主化」をミッションに掲げ、財産・収入・経歴に関わらず、全ての人のために近代的な資産運用のプラットフォームを作りたいという思いから創業されています。
そしてこのロビンフッドがここまで注目を集めたのにはいくつかの理由があります。まずは、ロビンフッドの特徴をおさらいしましょう。
ロビンフッドは、スマートフォンで完結できるようにサービスを構築しており、そのスマートフォンアプリでの優れたUI/UXが大きな特徴としてあげられます。ユーザーはZ世代・ミレニアル世代が多く、株式取引を楽しむことができるようなコンテンツも配信、また毎朝15分ほどのPodcastを提供するなど、若者が楽しみながら株式取引をできる仕組みをアプリ内に組み込んでいるのです。その結果、ロビンフッドではユーザーの約半数が毎日欠かさずアプリを開いて投資状況をチェックしています。
さらに、少額からでも株を買う事ができるフラクショナル投資も可能なので、その点も若者に人気がある要因のひとつです。
そして注目を集めた最大の理由。それはロビンフッドが、「取引手数料無料」で株式の取引ができることです。これは今までの金融ビジネスを大きく変える変化であり、革命です。
それではではここでお金のトレーニング。手数料ゼロのロビンフッド。どのように収益を上げているのでしょうか?
答えは、大きくふたつ。ひとつは、Payment for order flow(ペイメント・フォー・オーダー・フロー)という仕組みです。これは顧客からの取引をヘッジファンドなどのマーケットメーカーにまわし、そのリベート(報酬)を受取ることで収益を得ています。
もうひとつは、信用取引における金利収入。信用取引とは、十分な資金を持たない投資家が金融機関等からお金を借りて、そのお金でレバレッジの効いたハイリスク取引を行う方式です。その際に、ロビンフッドからお金を借りたユーザーは後々金利をつけてお金を返すことになりますので、ここが収益源となっています。
ロビンフッドの出現により、証券業界全体が取引手数料をゼロ、もしくは低手数料の方向へ進めるきっかけにもなりました。顧客の過半数がZ世代、ミレニアル世代であり、株の取引をしたことがない初心者が過半数。そんな中、ユーザーの約8割が友人紹介の口コミで広がり、口座開設が一気に進んだといわれています。
続けてお金のトレーニング。ロビンフッドの現在の口座数はどのくらいでしょうか?
日本国内だと、証券口座のランキング1位はSBI証券の約680万口座、2位は野村証券の530万口座ですが、なんとロビンフッドの口座数は1300万を超えています。さらにロビンフッドの顧客の預かり資産総額は約1100億ドル。日本円にして約12兆円ものお金を顧客から預かっているのです。
このように、手数料無料のサービスは投資の裾野を広げる大きな効果がありました。ただその一方で、過度なゲーム性や、そのビジネスモデルが批判されて裁判にもなっており、ロビンフッドに対する評価は二分しています。
そんななかでロビンフッドが米国ナスダックに上場。その上場の仕方にも注目が集まりました。ロビンフッドはIPO株の最大35%を、自社の取引アプリを使う投資家に割り当てたのです。上場前の7月24日にはオンラインで個人投資家向けの説明会(ロードショー)を開き、ブラッド・テネフ最高経営責任者ら経営幹部が事前に募集した個人投資家の質問に答えていきました。小口投資家がIPOという市場でより大きな役割を果たすべきだという「金融の民主化」の考え方のひとつであり、注目が集まりました。
日本でもロビンフッドのような手数料無料の投資サービスがどんどん誕生し、若者にも投資の文化を根付かせようとする動きが加速するのかどうか。ロビンフッドの今後の動向は、アメリカだけではなく日本でも、また世界中に新しいトレンドを引き起こしていくでしょう。
テクノロジーが進化し、新たな投資の選択肢が次々にハイスピードで誕生する時代。投資などお金の基礎となる「金融教育」が、日本でももうすぐ高校生の教育に必修化される時代。海外に比べて金融リテラシーの低さが指摘されていた私たち日本人も、時代の流れにあった金融リテラシーを身につける必要があるのではないでしょうか。
正しい金融リテラシーは、アフターコロナの世界でも自分を守る武器にもなるのです。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。
ABCashについてはこちら!