新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。 アフターコロナのお金論29回。
アフターコロナで加速する新しい資金調達方法
アフターコロナの新たな資金調達の方法として、IEO(Initial Exchange Offering)が日本国内でも注目を集めるようになってきました。このIEOですが、実は世界ではすでに多くの取引所で行われている資金調達方法です。
また2017~18年の仮想通貨ブームの時に、ICO(Initial Coin Offering)という資金調達方法も注目され、数100億円以上を資金調達した企業もでてきて世界中で話題となっていました。
それでは、お金のトレーニング。IEOとICO、どちらも資金調達の新しい手法ですが、どういう違いがあるのでしょうか?
まずはIEOについて。IEOは、企業やプロジェクトが暗号資産(仮想通貨)取引所を通じて、デジタルトークンを発行して資金調達を行う資金調達方法です。つまり、トークンを投資家に買ってもらうことでプロジェクトの資金を集めることができるのです。投資家にトークンを販売するには、暗号資産取引所が事前に企業やプロジェクトの審査を行うことが必須となっています。
また、2017年頃に仮想通貨の盛り上がりとともに話題となったICO。投資家が直接スマートコントラクトを通じてトークンを購入することで資金を調達することができます。新規トークンの値上がりを狙った投資家が一気に参加しましたが、法規制や基盤整備も不十分だったこともあり、詐欺やトラブルが続いてしまい、そこからICOは低迷の一途を辿ってしまいました。
ではIEOとICO。どちらもトークンを発行して資金調達する仕組みは同じですが、何が違うのでしょうか?
それは、取引所がプロジェクトを事前審査しているか否かです。
ICOはトークン発行元(企業やプロジェクト)と投資家がダイレクトで繋がっていましたが、IEOは取引所が仲介に入っています。取引所が事前審査し取引を仲介することで、ICOよりも信頼性高く資金調達できる方法、それがIEO。事前審査により、信頼性が格段に上がりましたが、この仕組みは株式上場と近い考え方と言えます。
それでは、お金のトレーニング。2021年7月。日本初となるIEOを完了させ、話題を集めた企業があります。その企業とはどこでしょうか?
答えは、コインチェック株式会社です。コインチェックは、2021年7月に国内初のIEOプラットフォーム「Coincheck IEO」を開始しました。その第1弾として、HashPaletteの発行する「Palette Token」の購入受付を実施しました。
もう一つ、お金のトレーニング。そのとき2億3000万枚のPalette Tokenを、1枚4.05円で売り出しました。総額9億3150万円の売出しに対して、期間中に申し込まれた金額は総額いくらになったでしょうか?
答えは、なんと、224億5500万円。
24倍以上の抽選となるほどの人気となったのです。目標金額の達成に達した時間は、約6分間。それほど投資家の期待や注目が集まっていたと言えます。
日本でも注目を集めている新たな資金調達方法のIEOですが、メリットとデメリットを知っておきたいところです。
まずトークン発行に際しては、認定資金決済事業者協会であるJVCEA(一般社団法人日本暗号資産取引業協会)と金融庁による審査が必要となります。そこで暗号資産の発行者やホワイトペーパーの内容等が審査され、スクリーニングされます。そのため投資家にとっての信頼性が高くなり、信頼性という観点でメリットが大きいと言えます。
ただ、しっかり審査をするその反面、扱われるトークンの数はICOに比べると少なくなります。またIEOが、これからさらに日本で発展していくであろう新たな仕組みとして注目されているので、取引所の審査も厳しくなると予測されます。
IEOはICOに比べると信頼性が高まってはいますが、まだ法整備の進捗や実例も少ないため、トラブルや詐欺、犯罪に利用されるリスクもあります。そこはデメリットです。ただここから法整備などが進むことでそのリスクも少なくなっていくでしょう。
最後に、IEOは必ずリターンがあるというものではありません。リターンが期待できるかどうかはプロジェクト内容を確認し、自分自身のファイナンシャルリテラシーから、自分の頭で考えて判断しなければなりません。株式投資と同じです。
アフターコロナの時代において、個人も企業も新たなお金の選択肢が次々と誕生しています。私たちは、常に自分自身で正しい選択肢を判断していくために、まずは基礎となるファイナンシャルリテラシーを身につけ、さらに世界と日本の状況を追いかけて、そのファイナンシャルリテラシーをアップデートし続ける必要のある時代を生きているのです。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。
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