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2021.06.28

胸に突き刺さる「生と死について考えさせられる1冊」

本は自分の世界を広げてくれる最高のツールであり、読書は自己の成長や共感、新たな視点を発見する機会を与えてくれます。ゲーテの書籍ページの担当であり根っからの読書愛好家のゲーテ編集部員が、生きることや死ぬことについて考えさせられる書籍を3冊紹介します。

成功の頂点で夭折した天才たちの苦悩

『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』(星海社1,320円)は、ジミ・ヘンドリックスやバスキア、ジム・モリソン、エイミー・ワインハウスなど、27歳で夭折(ようせつ)した天才たち13人が自己破壊に至ってしまった過程を丹念に辿った1冊。彼らはその劇的な人生ゆえに伝説的なエピソードばかりが注目され、神格化されてしまいがちです。しかし、本書で紹介されている人たちはみな、才能に恵まれてはいましたが決して強い人間などではなく、私たちと同じように日々悩み苦しんでいました。華々しい活躍の裏で人知れず抱えていた圧倒的な孤独と痛み、そして死。この本が訴えているのは、「美化していい死などない」「自分を大切に生きろ」という著者の強いメッセージです。

凄惨な虐待事件を通して命の重みを再認識する

『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』(新潮文庫693円)は、「厚木市幼児餓死白骨化事件」「下田市嬰児連続殺害事件」「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」という痛ましい3つの事件を取り上げ、闇に埋もれてしまった虐待事件の真実に迫った衝撃のルポ。この本で明らかにされているのは、子供への虐待を繰り返す親たちも同じように自身が子供の頃に虐待を受け、またはそれに近い環境に置かれていたという事実です。やはり虐待による負の連鎖は断ち切りがたく、子供にとって家庭環境、親とのコミュニケーションがいかに人格形成において大切かを感じました。愛情とは何なのか、家庭とは何なのか、命の重みとは何なのか……。痛切に胸に響いてきます。

相反するものを抱えながら人間は生きている

東野圭吾さんの作家生活35周年記念作品が、『白鳥とコウモリ』(幻冬舎2,200円)。遺体で発見された善良な弁護士。ひとりの男がその殺害を自供し事件は早々に解決、のはずだったのですが、事件に関係する誰もが「何かがおかしい」と感じ、行動していきます。刑事や被害者、加害者など複数の人物たちの視点で描かれる物語は実に重厚でありつつ、読者をグッと引き込む展開の連続でページをめくる手がとまりませんでした。罪と罰、救済と償い、光と闇、生と死などさまざまなテーマが交錯しつつ明かされる、衝撃の真相。白黒はっきりとは分けられない世界のなかを私たちは生きていることを実感させられた1冊です。帯にある「『白夜行』『手紙』ー 新たなる最高傑作」という言葉に嘘はありません。

TEXT=宮寺拓馬(ゲーテ編集部)

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