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2021.06.20

「コロナ後における企業の明暗」ABCash 児玉隆洋

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

アフターコロナ

アフターコロナで成長した企業は?

6月になり、日本では株主総会が多い季節となってきました。

株式投資をしている人であればよくご存知だと思いますが、日本の企業は3月決算が多いため、株主総会は6月に集中します。株主総会は決算日から3ヶ月以内に実施する必要があるからです。

国内では新型コロナワクチンの接種も進み、経済の再始動が本格的に始まろうとしていますが、上場企業が決算を発表するなかで株主への利益還元をどうするのか、各社の動きがみえてきました。

それでは、お金のトレーニング。上場企業の株主への利益還元、今年は増えそうでしょうか? それとも減りそうでしょうか?

答えは、増えます。そしてこの株主への増配は、約4年ぶりのこととなります。2022年3月期の配当予想を開示している約2000社のうち、増配を予定する企業はおよそ700社にもなるのです。新型コロナウィルス感染拡大の影響で落ち込んだ業績にも光が見えはじめ、株主への利益還元を強化する企業が増えてきているのです。

ただ、コロナによって業績の恩恵を受けた企業と、打撃を受けた企業とで大きく明暗が別れた結果となりました。まずはコロナ禍で大きく業績を伸ばした業界として、通信やITがあります。人々の生活様式を一気に変えてしまった外出自粛要請やテレワーク推進の結果で業績が伸びたと言えます。

それではお金のトレーニング。通信事業者である携帯電話キャリア。日本の携帯業界シェア1位はどこの企業でしょうか?

答えは、NTTドコモでシェア約35%です。2位はauの約25%、3位はソフトバンクの約16%、4位は楽天の約4%となっています。NTTドコモが格安料金ahamoで先陣を切りましたが、アフターコロナで格安料金プランでのキャリアのシェア争いがさらに加速しそうです。またIT業界でも、企業が業務DX(デジタルトランスフォーメンション)の推進を本格化し、その結果大躍進を遂げている企業もあります。例えば、企業のDX推進サポートする「チェンジ」という会社が注目を集めました。

お金のトレーニング。2003年に設立された「チェンジ」ですが、株価がこの1年で何倍になったでしょうか。

答えは、約5倍。時価総額も現時点2000億円を超えており急成長しています。ウェブ会議ツール、クラウドサービスなど、アフターコロナでより私達の生活に必要となったサービスを扱うIT企業にとっては、コロナ渦は業績の追い風となっているのです。

コロナにより新しい働き方や、新しいライフスタイルを検討し実行していく人も増えており、これからコロナが収束したとしても、コロナ以前の世界の常識には戻ることはないと思います。ニューノーマルな考え方が浸透していくなかで、その世の中でより必要とされるサービスを提供する企業がさらに成長していくでしょう。

また反対に、コロナで打撃を受けた業界は、コロナで恩恵を受けた企業よりもはるかに多くあります。

例えば、移動を伴う業界。

コロナ前には新卒社員の人気就職企業ランキングで上位だった航空業界も、業績へのダメージは計り知れません。JALは国際線旅客数は前年比約97%の減少、国内線旅客数も約66%減少し、赤字は約4200億円と莫大です。ただそんななかでもJALはいち早い公募増資で資金調達も行い、コロナ収束後の世界を見据えて準備を進めています。

また自動車業界は、自動車が売れず業界全体で見ると厳しい状態となっています。しかし、企業別に見ると、黒字化できた企業と赤字に転じた企業とに明暗が分かれる結果となりました。

トヨタ自動車を筆頭に、スズキ、スバル、HONDAの4社は黒字化に転換しています。黒字化の要因としては、中国とアメリカの急激な市場の回復もあります。また、スズキは主力となるインドでのコロナの感染拡大が広まり販売台数が大きく落ち込みましたが、業績を回復することに成功し、2021年3月期営業利益は1600億円と黒字化に成功しました。

電気自動車の普及、若年層の車離れ、カーシェアリングの台頭など自動車業界の動きもますます活発化しており、アフターコロナでどう変わっていくのか注目したいところです。

そして飲食業界については、国からの休業や時短要請、そしてお酒の提供を控えるように指示もあり、自粛による倒産や店舗閉鎖も多く起こっています。

ここでお金のトレーニング。飲食全体が厳しい状況のなか、外食産業で特に業績を伸ばしている企業はどこでしょうか?

答えは、日本KFCホールディングス。ケンタッキーフライドチキンです。もともとテイクアウト比率が約70%というビシネスモデルであり、さらにファミリー層がメインターゲットで中食の流れにのれたこと、さらにアフターコロナですぐにデリバリー、テイクアウト、ドライブスルーの需要がさらに伸びると予測してメニューの変更を行ったことによって、増収増益となり、2021年3月期で営業利益は約60億円となりました。

コロナという想像しなかった未曾有の事態によって、業界による特性はありつつも、同じ業界でも明暗が別れる結果となっています。これからのアフターコロナの世界では、人々の生活や価値観はコロナ以前に戻ることはなく、新しい価値観にアップデートされていきます。

個人の目線でいうと、株式投資やビジネスキャリアをいうものを考えるときに、業界だけで未来を予測するのではなく、業界の中でも企業ごとの特徴や強みをみながら正しく予測し判断できる力が求められる時代です。自分のお金や人生について、自分の頭で正しく判断していく。そのスキルもこれからの時代に必要なファイナンシャルリテラシーの1つなのだと思います。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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