本は自分の世界を広げてくれる最高のツールであり、読書は自己の成長や共感、新たな視点を発見する機会を与えてくれます。ゲーテの書籍ページの担当であり根っからの読書愛好家のゲーテ編集部員が、学びのきっかけを与えてくれる書籍を3冊紹介します。
哲学をより身近に感じられる”最強”の入門書
かみ砕いた文体とユーモラスな解説で、哲学入門書のなかでも群を抜いてわかりやすいのが『史上最強の哲学入門』(河出文庫814円)。板垣恵介さんの人気漫画『グラップラー刃牙』をモチーフに、ソクラテスやアリストテレス、マルクス、カント、ニーチェ、ハイデガーなど31人の哲学者が知のバトルを繰り広げるという内容です。唯一無二の真理を追い求める男たちの熱き闘いは、読んでいるだけで気持ちが高揚してきます。
哲学と聞くと、"実生活では役に立たないもの"というイメージが強いかもしれません。しかし、哲学について学んでいくことで、人間の思考の構造を知り、物事をより俯瞰して見ることができるようになります。「哲学には興味あるけど、何だか難しそうで敬遠している」という人にこそ、手に取ってみてほしい1冊です。
言葉と出合うことが人生を変える
本が好きで読書したい気持ちはあるけれど、毎日忙しくて本のページをめくる気になれないし、内容も全然頭に入ってこない……。
そんな人には『本が読めなくなった人のための読書論』(亜紀書房1,320円)をお薦めします。タイトルに”読書論”とついてはいますが、本を読むためのノウハウを紹介しているわけではありません。むしろ「読みたくないなら無理して読まなくていい」「読めない本にも意味があるから、積読でもいい」と著者の若松さんはいいます。
読書で大切なのは早く読むことでもなく、たくさんの本を読むことでもない。大事なのは人生を深いところで導き、励ます言葉と出合うこと。読書や学びに対する違った視点に気づかせてくれる良書です。
本当の勉強はとんでもなく楽しい
『すべてがFになる』で鮮烈なデビューを果たして以来、作品を次々と発表し、人気作家として不動の地位を築いている作家の森博嗣さん。『勉強の価値』(幻冬舎新書946円)は、研究者であり、大学の教官として大勢の学生を指導していた森さんの、勉強や教育についての考えが滔々と綴られています。
「『勉強』が楽しくなるのは、そうすることで夢が叶うという目的が明確にある場合なのだ」
「もし子供たちに勉強させたかったら、まず親が勉強すること」
「勉強するほど、人は謙虚になる。何故なら、世界の英知に近づき、人類の慧眼に接することで、自身の小ささを知ることになるからだ」
もともと大の勉強嫌いだったという森さんの実体験も踏まえて書かれているので、その言葉は簡潔ながらもとても説得力に満ちています。「なぜ人は勉強すべきなのか」という哲学的ともいえる命題について、ひとつの啓示を与えてくれることでしょう。