35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第85回!
モノマネは、impressionで印象的??
最近はYoutubeでよく「アメリカズ・ゴット・タレント」とそのイギリス版「ブリテンズ・ゴット・タレント」を見ています。素人の公開オーディション番組で、歌手のスーザン・ボイルを輩出した番組です。英語の練習のつもりで見ていますが、歌やマジックなど、英語がわからずとも気楽に楽しめるものが多いのも魅力のひとつです。
そのなかで、審査員がパフォーマンスをする前の出演者の女性にこう聞いたシーンがありました。
Is it impressions that you do?
(君がやるのは、impressions?)
“impression=印象”と単語帳を使って覚えたことがあります。「“君がやるのは印象”ってなんだろう?でも、これからのパフォーマンス見ればわかるかな」。そう思ってそのまま見続けました。その女性はいろんな声色を使い、なにやら早口で漫談のようなものを始めました。その途端に会場は大爆笑。漫談は英語がわからないと笑えないので、私はまったくついていけませんでした。しかし、笑えなかった理由はそれだけではありませんでした。
Impressions=モノマネ
という意味もあるのだそうです。そもそも彼女がモノマネしている人が誰なのかわからなかったのです。そして「印象」と覚えていた言葉が「モノマネ」になるのが信じ難く、辞書を引いてみましたが、ケンブリッジの英英辞書にもちゃんと書いてありました。
an attempt at copying another person's manner and speech,
etc., especially in order to make people laugh.
(特に、人を笑わせることを目的に、他の人のそぶりや話しなどを真似する試み)
例文はこう紹介されています。
She does a really good impression of the president.
(彼女は、大統領のモノマネがすごくうまい)
イギリスの部屋で、語学学校の宿題をしていた時、大家さんのアポ無し訪問をうけ、鉛筆と辞書を持ったまま玄関に行ったことがありました。「勉強していたのか」と聞かれて「まぁ」と答えたら“That’s impressive”と言われ「それは印象的」が誉められているのかなんなのかわからなかったことがありました。「それは感心だ」くらいの意味だったようです。そのようにおぼえていた言葉が「モノマネ」とも言えることに目から鱗でした。
「鎖を外す」off the chainは「激ヤバ」?
「アメリカズ・ゴット・タレント」で唯一の日本人優勝者、蝦名健一さんが初出演した回を見ていた時のことです。パフォーマンスが終わった時、感激した女性審査員がこう言いました。
I can say that was off the chain!
それまで絶賛の言葉が続き、蝦名さんもこう言われて嬉しそうな顔をしていたので、褒め言葉であることはわかるのですが、「チェーンが外れたと言えるわ!」がどうポジティブになるのかわかりません。調べてみると。
off the chain=激ヤバ
ということのようです。ケンブリッジの辞書には“extremely good(とんでもなくいい)”と説明されています。鎖を外され解き放たれた闘犬が暴れ回るイメージです。時には「狂ってる」とかネガティブな意味での「激ヤバ」でも使われるようなので、文脈には注意しないといけない言葉のようではあります。
このような例文もみつけました。
I made cake with extra cheese and it was off the chain.
(チーズをたくさん入れてケーキ作ったんだけど、それ激ヤバだったわ)
この場合は、ヤバいくらいにおいしかった、ということでしょう。
全米が見ている巨大なステージで、“off the chain”といわれたことが、どれほどにすごいことなのか、この言葉の意味がわかったことでより理解できました。
2006年からスタートしているこの番組、これまでほとんど見てこなかったので、まだまだ見るべきパフォーマンスが残っていてしばらく退屈しそうにはありません。
Illustration=Norio