35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第80回!
We are going through a rough patch at the moment.
オンライン日本語レッスンでは、世界中から生徒さんがきてくれますが、どの生徒さんとも「コロナ禍での生活はどうか」という話をします。ロックダウンしている街、そうでない街、引きこもっている人、でかけている人、それぞれです。しかしだいたいが、「やっぱり厳しい状態だよね」という結論に至ります。特に英語圏の人たちは、口を揃えて、こういいます。
We are going through a rough patch at the moment.
go throughで「通過する」とか「経験する」という意味なのはわかりますが、“rough patch”がよくわからず、適当なあいづちをうってごまかしていました。
go through a rough patch=難局に直面している
あとで調べてみると、このような意味だそうで、生徒さんたちが言っていたのは「今、私たちは難局に直面している」とか「今、実に厳しい状態にある」ということになります。
“rough”は「でこぼこした」という意味で使われることが多い言葉です。“patch”は「パッチワーク」なんかでも言われる「あて布」のことですが、この場合は「地面」のイメージでしょう。でこぼこした地面=歩くのが難しい状態、ということかと思われます。
少し調べてみると、“go through a sticky patch”というフレーズもまったく同じように使われるのだそうです。“sticky”は、「ベタベタしている」という意味なので、同じく歩きにくい地面がイメージされます。
「そんな状況だから一切外に出ていないし、テレビをつけると、コロナのニュースばかり。そんなのみたくないから、今は語学の勉強に集中するいい機会だと思うことにしている」という生徒さんが多くて、頭が下がる思いです。
蛇足ですが、“patch”は「湿布」を説明する時にも使います。薬局では“Hot patch”と書かれた温シップもよく売っていました。また正しいのかどうかいまいちわからないのですが、私は「貼るカイロ」のことも“Hot patch”と呼んでしまっていました。暖かい「あて布」を表現したかったですし、英語の教師もそうカイロのことを呼んでいました。ただ、辞書では“warmer”とか“warm pad”とでてくるので、一般的ではないかもしれません。英語の教室で「日本には足の裏専用の“Hot patch”もあるぞ」と言って画像をみせたら、各国の人が感動していたのを覚えています。
stick figure
棒人間は世界共通
「僕、すごく絵が下手で、人間を描く時はだいたい、棒人間ですよ」
ミネソタ州から日本にやってきて2年目の生徒さんが、このように流暢な日本語で話していました。なにより「棒人間」という日本語を知っていることに大変驚きました。
「だって英語とほぼ一緒だから、おもしろいなと思ってすぐ覚えました」ということで、英語では、簡易に線で描いた人間のことを“stick figure”と言うことをこの時初めて知りました。“Stick”は「棒や枝」、“figure”は「形」ということなので、まあ確かに近い表現かもしれません。
私も絵は上手ではありません。そう説明したい時は、“I am not good at drawing(絵を描くのが上手ではない)”と説明するのが一般的ですが、私は正直「上手でない」と言うのが図々しいほど、壊滅的なレベルなので、だいたい、“I’m bad at drawing(絵を描くのが下手なんだ)”とか、それでも足りないと感じたら、“My drawing is awful(私の画力はヒドイ)”と言っています。ちなみにGoogleで“drawing is awful”と検索してみてください。各国の「ヒドイ」画力の“stick figure”が出てきて、絵が下手なのは自分だけではないんだと、ちょっと勇気づけられます。
Illustration=Norio