どんな状況にも適応するアートの力強さ!
今なお世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。果たして人類は、このパンデミックにいつまで翻弄され続けるのだろう……。
先行き不安な未来を案じてちょっぴり暗い気持ちでいたところ、帯の「アートは死なず」という言葉が目に留まり、思わず手に取りました。
著者は国内でも有数の現代アート・コレクターで、森美術館の理事なども務める宮津大輔さん。
本書では、ウィズ・コロナおよびコロナ後の世界におけるアート市場の動向について、詳細なデータをもとに分析しています。
14世紀のペスト流行期に、死生観がテーマの作品の需要が高まったように、現コロナ禍でも芸術様式の変容が起こっているといいます。
バーチャルミュージアムの試みや「脱・所有」へのシフトなどは、その一例。
そうした取り組み、潮流は新たな市場を生みだし、よりアートの世界を活性化させていくという宮津さんの主張はとても力強くて、読んでいて何だか励まされました。
それと同時に感じたのは、アートの世界に限らず、変化を許容できないものは淘汰(とうた)されていくということ。
私自身も、社会の変化に素早く対応できる経営者でありたいと、ビジネス面でも教訓となる本でした。
『新型コロナはアートをどう変えるか』
宮津大輔 著
光文社新書 ¥1,000