新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお金論7回。
会社のお金のこと、知っていますか?
夏休みシーズンの8月最終週。全国の小学生向けに、お金のことが学べるサマーキャンプ「ABCash Kids」をオンラインで実施し、たくさんの小学生がお金について勉強し、将来の夢を発表したりしました。
お金を学ぶときに第一歩目として大事なのは、お金の本質を知ることと、お金の大局的な流れを知ることです。お金はそれ自体が目的になるものではなく、あくまで手段にすぎないという本質。また、お金の大局的な流れを知るには、まずは会社のお金の流れを理解する必要がありますが、自分の会社のお金のことをどれだけ理解できているでしょうか。売上をあげたり、給与をもらったりなどは直接的なので分かりやすいと思いますが、ほとんどの会社はなんらかの手段で資金を調達をしながら、成長を継続させていきます。
ということで、今回のテーマは、会社のお金についてです。
早速お金のトレーニング。ある美容室が店舗を増やすために、資金が必要になりました。その資金調達の手段としては、銀行からの融資しかありません。〇か×か?
答えは「×」です。融資はデッドファイナンスと呼ばれますが、他の資金調達手法エクイティファイナンスと呼ばれるものがあります。エクイティファイナンスは株式を発行して資金を調達する手法で、例えばスタートアップ企業の「シリーズAラウンドで〇〇億円調達!」のようなニュース記事を目にすることもあると思いますが、それがエクイティファイナンスにあたります。
それではもう一つ、次は個人の目線からのお金のトレーニングです。応援したいサービスがあったから、そのサービスを運営している会社を応援する唯一の手段として、その会社の株式を購入して応援しました。〇か×か?
こちらも答えは「×」です。株式を購入して応援することが唯一の方法ではありません。例えば、ここ数年で普及した個人から直接資金調達できる仕組みとして「クラウドファンディング」というものがあります。応援してほしいサービス・プロダクト・お店などが資金を募集し、応援したいと思ったら自分の資金を直接投資することで応援できる仕組みです。応援した対価として、完成したプロダクトを先行してもらえたり、サービスの優先チケットがもらえたり、お店の特別会員権がもらえたりします。
国内でも、Makuake、READYFOR、CAMPFIREなど多くのサービスが誕生しています。また、個人が企業にお金を貸しだす形で投資ができる「ソーシャルレンディング」という新しい仕組みも急速に普及しています。国内だとFunds、クラウドクレジット、クラウドバンク、サムライなどがあり、新しい資産運用の手段としても注目されています。
そういう会社を応援できる様々なお金の仕組み。会社にとっては新たに資金を調達できたことで、サービスを拡大でき、収益を伸ばすことができるので、社員にも給与が支払われることになります。
そして、その個人がまた何かしらのサービスを利用したり、どこかの会社に投資することで、お金が循環していき経済が回っていきます。そういったお金の流れを、会社という視点と、個人という視点の両軸で大局的に理解すること。ついつい目の前の売上や給与だけに目がいきがちですが、大局的なお金の流れを理解した上で仕事をすると、また違った景色が見えてくるのではないでしょうか。自分が所属する会社もいろんな人に応援されて成り立っていますし、また、あなた自身もサービスを利用したり投資したりすることでどこかの会社の応援者になっているのです。
ここで、お金のトレーニング歴史編です。会社を応援できる「株式会社」という仕組み、日本でその原型をつくったのは誰と言われているでしょうか? 歴史上の超有名人です。
諸説ありますが、「坂本龍馬」と言われています。株式会社の原型は、坂本龍馬が長崎で設立した亀山社中です。また、国立銀行条例に基づいて最初に設立された株式会社は「渋沢栄一(2024年から一万円札に描かれる偉人)」によって設立された第一国立銀行。ちなみにこの第一国立銀行は、現在のみずほ銀行の前身にあたります。さらに、商法に基づいて最初に設立された株式会社は日本郵船、そしてこの日本郵船を創業した人物は三菱財閥の創始者でもある「岩崎弥太郎」です。
それでは最後に、もう一つお金のトレーニング歴史編です。岩崎弥太郎は、幕末期に坂本龍馬の海援隊(前身は亀山社中)である仕事を担当していました。それは一体どういう仕事でしょうか?
答えは、会計経理。会社のお金のことを理解することは、事を成す上でも大事だということだと思います。幕末につくられた株式会社というお金の仕組み、日本で初めてのことを我々がやってみよう! という度胸が勇敢でとてもカッコいいですし、このときの組織の雰囲気は、もしかしたら現代でいうスタートアップやベンチャーのような組織の雰囲気と近かったのかもしれません。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。