35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第65回!
英語をサボっていても、最低限できること
熱帯夜のある夜、悪夢で目が覚めました。
外国の駅で、私は必死に駅員さんに「プラットフォーム7はどこだ?」と英語で聞いています。しかしそれだけのフレーズでもうまく言えず、舌も廻らず、まったく駅員さんに通じない、という夢でした。
目が覚めて、思いました。これはほぼ現実だろうと。イギリスから帰国して3ヵ月は英語の勉強を続けてきましたが、ここ1ヵ月ほどはすっかり仕事と日常生活に追われてサボっています。月額制のオンライン英語レッスンも、虚しく口座からお金だけが引き落とされ、この連載を見た方が送ってくださった英会話教材も積まれたままほこりをかぶっています。その罪悪感からか、英語力ゼロだった頃よりもますます英語を怖いと感じてしまっているのです。
リハビリとして、少しずつ始めているのが、「英語の絵本」を読むことです。今まで英語で参考書や小説を読んでいたのが信じられないほどに、絵本でも充分に難しく再び心が折れることがありますが、短い分すぐ読み終えられますし、英語がわからなくても絵でストーリーを理解できます。そんななかで、覚えた言葉がこちらです。
iffy
お客様のためにチキンを焼いていた女の子が、味見をしすぎて全部食べてしまう、という絵本「Sassy Gracie」にあった表現です。
Well, the wing’s OK,
But that drumstick looks a bit iffy.
(ウィングは焼けてる。でも腿のほうはどうかしら)
iffy=疑わしい
という意味の形容詞だそうです。ケンブリッジの英英辞典にはこのように例文があります。
Simon"s still kind of iffy about going to Colombia.
(サイモンがコロンビアにいくか、まだちょっと疑わしい)
鳥もも肉を「ドラムスティック」というのにも少し驚きました。もっと早く知っていれば、肉屋で使えるフレーズだったかもしれません。リハビリのつもりが、今までまったく知らなかった言葉に出合えてしまいました。絵本は実はかなりレベルが高いようです。
ちなみに、YouTubeで英語のクラスを開催してくれている英語教師の方もたくさんいます。もう本当になんにもしたくない時は、ビールを飲みながらぼーっとそういうYouTubeを見ています。最近のお気に入りは、Lucyです。とても聴きやすい英語ですし、すっごく美人なのでついつい見てしまうのです。
走りながら覚えれば、忘れない!?
英語と同じく、最近逃げていることがあります。ランニングです。
夏になる前までは自粛太りも警戒して最低でも週3回は走っていました。しかしながら暑くなってくると外に出る気が起こりません。暑いのなら、早朝でも夜間でも日のない時間に走ればいいだけのことなのですが、英語をサボっているここ1ヵ月、同じくランニングからも逃げています。
少しでも走る気を起こすために、イギリスで、ランニング中に、学んだ英単語を思い出してみようと思います。
Thank you marshal !
毎月どこかの公園ではランニングイベントが行われており、何度か参加したことがあります。走っていると、コースを誘導してくれたり「頑張ってー」と言ってくれるボランティアの人たちが会場のあちこちに配置されていることに気がつきます。そういう人を見ると必ずランナーたちが“Thank you marshal!”と言うのです。
「マーシャル」ってなんだろう? と、走りながらグーグル翻訳をかけたものの、出てくる日本語は「元帥」。これは絶対違うな、そう思いながらも、ボランティアの人を見るたびに他の人の真似をして “Thank you marshal!”と言い続けました。
ゴールしてから、一緒に参加していた英語教師のクリスを捕まえて聞いたところ、こういうことでした。
marshal=イベントなどを運営、手助けしている人
この場合は、ランニングイベントのボランティアのことでした。
参加したランニングイベントのHPにもこのように書かれていました。
Marshals perform a crucial function; if there aren"t enough marshals then the event can"t go ahead. So if you"re taking part and see them out on the course, please say thanks (particularly if it"s wet, windy or cold) and always follow their advice.
(マーシャルは、重要な機能を果たしています。もし充分にマーシャルがいなければ、イベントは続けられません。ですので、もしあなたがこの大会に参加し、彼らをコースでみかけたら、ぜひ「ありがとう」と言ってください。雨の日や風の日、寒い日には特に。そして常に彼らからの指示に従ってください)
急な坂が多い公園での10kmランに参加した際は、走り続けるのが難しくほぼ歩いているような状態になりました。そんな時、マーシャルの方達の
Keep going!
と叫ぶ声が心と身体に染み渡ります。ヘロヘロの状態で、「ああ“頑張れ〜”は、“Keep going”なんだなぁ」と思ったことをよく覚えています。この言葉を胸に、今夜こそランニングに出かけたいと思います。
MOMOKO YASUI
編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英、’20年帰国。