新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお金論2回。
保険は高額商品。将来が不安だからといって必要以上に入りすぎてはいけない
コロナで将来の不透明さが増したことにより、保険のことを改めて考えた方も多いのではないでしょうか。ABCashの受講生には「社会人になったときに親に言われてとりあえず入った」「友達に保険マンを紹介されてされてなんとなく入った」という人が本当に多く、「今は保険を見直すタイミングですか?」という質問を、最近よく聞くようになりました。
今回は保険がテーマです。
そもそも保険というものについてまず知っておきたいのは、つい月々の支払額で考えてしまいがちですが、とても高額商品だということ。人生で考えると、住宅の次に2番目の支出額となることが多く、例えば、月々1万円の保険料で50年間加入すると総額600万円、月々2万円の保険料で50年間加入すると総額1200万円の支払いにもなるのです。
これからの時代、保険はどう変わるのでしょうか。
私は、保険の本質的価値は変わらないものの、オンラインシフトが一気に進み、保険の選び方や入り方など のプロセスが大きく変わると思います。つまり、保険のDXです。
DXとはデジタルトランスフォーメーションのこと。テクノロジーによって生活をより良くアップデートすることをいいます。要は保険も、ユーザーがさらに使いやすいようにデジタル化されるということです。
保険の加入を考えた時、今までは家の近くの保険ショップに行ったり、保険会社で働いている友人に聞いたりするのが一般的でしたが、アフターコロナでは、まずインターネットから保険の情報を収集し、インターネッ トで保険の相談やアドバイスを受け、インターネットを通して保険に加入する流れがさらに加速します。ただし、特に医療保険や生命保険は、健康不安に対する備えだったり、万が一に対する備えなので、決断にはやはり知識のある人に寄り添ってもらうことを求めるものだ思います。
つまり、保険のDXが進んだとしても、すべてがAIやインターネットだけでは完結できないのです。
保険のDXでポイントとなるのは、何でしょうか。それは人とデジタルをハイブリッドさせたUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)を構築できるかどうかです。
インターネットだけで情報提供する部分、人とリアルタイムなコミュニケーションはするけど対面ではなくオンラインを活用する部分、リアルタイムなコミュニケーションではなくオンライン動画を活用する部分など、人とデジタルのハイブリッド型でサービスのUI/UXを設計し直す必要があります。これは、ユーザーの対面への価値観が変わったので、今までの延長線上に答えはありません。
リモートワークが普及したことで、在宅にいながらのミーティングもスタンダートになってきました。私もこの数ヵ月で身をもって実感しています。そういう私と同じような経験をしている人が多いからこそ、保険もDXが進み、より時代にあった提供方法にアップデートされていく必要があるのです。
保険の価値や考え方は、アフターコロナでも変わらないと思います。私もそうだったように、人は将来が不安になるとついつい保険にたくさん入りたくなるものですが、必要な部分にだけ入ることをおすすめします。高額療養費制度、セルフメディケーション税制、傷病手当など国からの保障である「公的保障」という制度があります。まずはそういう公的保障を把握した上で、保障が足りていない部分を認識し、そこを補うものとして、保険を検討するのが正しい判断です。
先進医療特約は費用対効果が高い
最後に一つ、お金のトレーニングです。
医療保険に加入する場合、たくさんの特約があり迷いますよね。その中でもこれはつけたほうがよいとされている特約は何でしょう?
答えは「先進医療特約」です。万が一、先進医療が必要となったときにかかる医療費は非常に大きく、数千万円になる場合もありますが、それを月100円程度の保険料(50年だと6万円程度)で1000~2000万円程度まで保障してくれるのです。これをつけておけば、先進医療を受けないといけなくなっても、経済的な不安に悩まされることなく安心して治療に専念できるので、費用対効果の高い特約だと思います。
将来が不安だからとにかくたくさん入る! となってしまわないように、保険は複雑なので大変ですが、しっかり情報を集めてから決断することで、長い人生で考えると大きなコストカットを実現することができます。
ちなみに、外国人は保険に加入することを「保険を買う」と言うようです。日本では「保険に入る」 と言いますが、保険に対する捉え方も実は国によって異なるものなのです。
Takahiro Kodama