筋肉美をもつ女神シリーズ29人目は、キム・ヨンジュ。連載「マッスル美女」とは……
女性だけが出場できるフィギュア部門
“もぐもぐタイム”や「そだねー」などの流行語とともに一世を風靡したカーリング女子日本代表の藤澤五月も筋肉美ボディを披露したことで、日本でも認知度が上昇中のボディメイク・コンテスト。
藤澤五月が挑んだのは引き締まった筋肉を含めた女性らしさを競う“ビキニ部門”だが、ボディ・コンテストにはもうひとつ、女性だけが出場できる“フィギュア部門”というものがある。
ビキニ部門とボディビル部門の中間にカテゴライズされているもので、美しい筋肉の発達とボディバランスが絶対的な評価基準となっており、何よりも個性を表現することが求められる種目だ。そして、韓国のボディメイク・コンテストの最高峰ともいえる「マッスルマニア」でこのフィギュア部門の女王とされているのが、キム・ジュヨンだ。
アラサーの彼女は、博物館や美術館などの仕事に従事できるキュレーターの資格を持ち、文化芸術関係の企画会社に務めるビジネスパーソン。家に帰れば、ふたりの子どものママとして家事に勤しんでいる。
そんな忙しい日々のなかでボディ作りに励み、2022年大会のフィギュア部門グランプリに輝いた。キム・ヨンジュは語る。
「よくボディメイクの秘訣を尋ねられますが、一にも二にも地道な努力に尽きます。私はトレーナーやインストラクターではないので、特に日々のトレーニングの積み重ねがそのまま結果となって肉体に現れます。だから仕事を終えると、あらゆる誘惑を振り切ってジムに直行。上半身と下半身をバランスよく鍛えて帰宅します。それでも足りないのでジムから自宅まで歩いたり、時間があれば散歩をしたり、常に体を動かすようにしています。そんな私を夫や子供たちも理解して応援してくれることが、何よりも嬉しくありがたいですね」
本格的なトレーニングを始めるきっかけは病!?
「もともとスポーツは大好きでした。競技志向のアスリートを目指したことはないですが、体が動かすことが好きで、フィットネスジムに行って、よく汗を流しました。ただ、グループレッスンや有酸素運動が多かったです」
そんな彼女が本格的にウェイトトレーニングを始めるきっかけとなったのは、突如襲われた病だったという。
「ある時期から頭痛やめまいに悩まされるようになって…。たまにですが、言葉にも詰まるようになり心配で病院で検査してみたんですね。その結果として言い渡されたのが、多発性脳梗塞だと診断されたんです。ショックでした。そのときは青天の霹靂で、言い知れぬ絶望感に襲われたほどでした」
それも無理はない。当時はまだ30代。働き盛りであったし、子供たちもまだ小さく育児に追われた時期。自分が病に倒れたらどうなるのだろうかと思うと、不安で眠れなかった。
「“子どももいて、まだ若い私がなぜ?”と事実を受け入れられなかったんです。ただ、そんな私を家族や友人、周囲の方々が励ましてくれて、“このままじっとしているわけにはいかない”と思うようになって始めたのが、トレーニングでした。根拠はなかったのですが、やればやるだけ健康を取り戻せそうな気がして。今振り返ると、何かにすがりたかったのかもしれません」
仕事、家事、トレーニングに全力投球
ただ、実際に始めてみるとウェイトトレーニングは過酷で、最初の頃はずいぶんと苦しんだ。毎日のように筋肉痛で悲鳴も上げていたという。
「あの頃の私は意志も弱く、自信もなく、なかなか思うようにいきませんでした。それでもなんとかトレーニングを生活習慣にしようと努力を続けました。それに本当に辛くて体が痛いときは思い切って休んで、子どもたちと出かけるなどリフレッシュに努めました。そして、もう一度、トレーニングを頑張ってみようという気持ちに持っていきました」
その結果、以前よりも心身ともに健やかになり、充実を感じるようになり、より一生懸命に体を鍛えるようになる好循環。気かつくとボディビルやフィットネス・コンテストに出場するようになり、今では“筋トレする学芸員ママ”、“病に打ち勝ったフィギュア女王”と言われるようになった。
「大会が近づくとトレーニングはもちろん、食事の管理も始まります。鶏むね肉、サーモン、サツマイモ、コンニャク米、サラダなどを多く摂り、朝昼晩決まった時間に食べるようになり、職場や家庭には迷惑をかけることもあるのですが、“大会準備のためにダイエット中”だと伝えると、同僚も家族も理解を示してくれて応援もしてくれます。嬉しいですよね」
そして、そんな声援に後押しされてステージに立つから、背筋がピンと伸びてポーズも決まるという。そこに彼女が輝く秘密が、そこにあるわけだ。
「いつか世界大会にも出場したい。各国を代表する選手たちと交流したいですし、ポジティブな影響力を世の中に与えられるような存在になりたいです」
そう言って優しく微笑む韓国のフィギュア・クイーン。その美しさはますます成熟していきそうだ。
■連載「マッスル美女」とは……
健康志向が高まり、体を鍛える人が増えている昨今。お隣・韓国でも全国各地で大小さまざまなボディビル大会や"美ボディ・コンテスト"が開催されており、ここから輩出された"マッスル美女"たちが脚光を浴びている。美しくもしなやかな筋肉美をもつ女神をシリーズで紹介する。