俄然、注目を集めている幹細胞による再生医療。育毛分野にも適用され、目覚ましい成果を上げている。【特集 男の美容最前線】
毛髪の悩みに多角的にアプローチ
受精卵から作製するES細胞は倫理的な問題を孕み、京都大学の山中伸弥教授で有名な細胞を初期化してから作製するiPS細胞はコストがかかる。どちらも増殖能力が高く、分化も万能だが、癌化のリスクがあるといわれ、第一種再生医療の施設でしか受けられない。しかし、自分の皮下脂肪や骨髄から培養する間葉系幹細胞は危険性も低く、安心して受けられる。そんな夢のような再生医療を頭髪に施してくれるのがアヴェニューセルクリニックだ。
統括医師の辻晋作先生は若き頃、褥瘡(じょくそう)治療からこの道に入り、今では東京大学整形外科と共同研究し、TOPs細胞という独自の方法で培養した脂肪由来幹細胞をつくりだすにいたった。まさに日本の再生医療界を牽引する立役者のひとりといえる。
「従来のミノキシジルやフィナステリドといった外用・内服薬やレーザーによる保存的治療、また自毛植毛による手術治療、さらにサイトカインを含むタンパク質が含まれる血小板治療に加え、第4の選択肢となるのが、この幹細胞を用いた再生医療。自己の脂肪由来間葉系幹細胞なのでアレルギーや拒絶反応の心配もなく、気になる箇所に直接、集中的にできる治療です」
クリニック内には最新のCPC(細胞培養加工室)を併設する。
「患者様から採取した細胞は患者様そのもの」と、まるで入院しているかのように丁寧かつ慎重に分離・培養される。それらを針が3本ついている頭皮専用の特殊な注射針を用いて薄毛の箇所に注入する。(施術の流れは下記を参照)。薄毛は疾患ではないので完治という客観的なゴールはないが、受けた患者の大半はリピートしているとか。
「受けるタイミングは抜けてきたらでよいのですが、効果は一生続くものではありません。男性ホルモン由来で脱毛しているのならその要因を取り除く必要もあります。増毛は足し算。日々のケアや薬などと併用しながら再生医療でQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めてほしいですね」
【治療の流れ】局所注射療法
※イラストはイメージです。
脂肪を採取する時も0.2ccでよいので、傷跡はほとんど目立たず、また、幹細胞を注入する際は頭皮に麻酔の注射を打つので、その時にだけ少し痛みが伴うこともあるが、幹細胞の注入時は麻酔が効いているので、痛みはない。また、自家の間葉系幹細胞を用いるためアレルギーや拒絶反応もない。まれに術後に患部が腫れることがあるが、ほとんどの場合あまり大きな副作用がないのもありがたい。念のため消炎鎮痛剤を少量、処方もしてもらえるので安心だ。
Q. 頭髪以外にどこの治療ができるの?
脂肪由来幹細胞なら脳梗塞の後遺症治療や、認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、難治性アトピー、ニキビ跡、動脈硬化症などのほか、加齢により心身が老い衰えた身体的フレイル、関節治療、リンパ浮腫、美容皮膚科的治療、靱帯・腱損傷などがある。その他にも歯周病など日々、臨床現場で新たな治療が実施されている。特に日本では法律できちんと守られながら、世界のなかでは再生医療の技術が短期間で承認される国なのだ。