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HEALTH

2022.07.29

コロナ、インフルエンザ、風邪… 感染症を予防するカギは「自然免疫」にあり!

2022年7月以降、新型コロナウイルスの感染が再拡大し、第七波に突入。それに先立ち、6月には季節外れのインフルエンザが子供を中心に広まり、欧米ではサル痘を発症する人が目立つなど、感染症のリスクが高まっている。そんな今こそ注目したいのが、人間にもともと備わっている自然免疫力。自然免疫の仕組み&高め方を、免疫研究の第一人者、順天堂大学の竹田和由准教授が指南する。

写真:StockFood/アフロ

感染症と戦っていく術とは?

終わりの見えない戦いとなってきた。再び新型コロナウイルスの感染が広がり、連日感染者数の記録が更新されている。さらに南半球のオーストラリアでインフルエンザが増えていることから、日本でも今年はインフルエンザが流行するのではないかと予想されている。その影はすでに忍び込んでおり、6月にはインフルエンザによって東京・立川の小学校で学年閉鎖が起こった。

新型コロナとインフルエンザの同時流行が現実味を帯びてきているなか、感染症対策として、引き続き、必要な場面でのマスクの着用、手洗い、三密の回避、換気の徹底が求められる。それに加えて、免疫力を味方につけることがカギとなってきそうだ。

白血球を筆頭に、身体の中に無数に存在している免疫細胞。この免疫細胞の働き=免疫が高ければ、病気にかからず、健康でいられる。そう思われがちだが、「その認識は、ちょっと違います」と、竹田先生。

「そもそも免疫とは、ひと言で表すなら、『自分以外のものはダメ』という、“わがままな反応”。身体の外から入ってきたウイルスや寄生虫のような“自分以外のもの”を異物とみなし、排除すべく、攻撃をしかけます。それらが新型コロナウイルスのような病原体なら功を奏しますが、反応が過剰になると、身体に有益なものも攻撃してしまう場合があるのです」

例えば、食物アレルギーや花粉症なども、免疫が過剰に反応した結果だ。また、免疫がさらに暴走すると、リウマチのような、自分の正常な細胞や組織を攻撃する自己免疫疾患につながってしまう危険性もある。

「とはいえ、すべての人にアレルギーが起こるわけではありません。それは、その人の免疫が、入ってきたものに対して、『あ、お前ね。知ってる、知ってる』と、ほどよい反応をするから。そんな風に、免疫細胞を正しくコントロールできていれば、身体に有害な異物だけを排除し、有益なものに対しては、ほどよい反応で受け入れることができます。これが、いわゆる『免疫力が高い』と言われる状態。つまり、免疫が正しく、バランスよく働くことが重要なのです」

免疫には、自然免疫と獲得免疫がある

そもそも免疫には、人が生まれながらにして持っている自然免疫と、ワクチンや、病気にかかることで得られる獲得免疫の2タイプある。外からの異物に対して最初のバリアとして働くのは自然免疫で、さまざまな異物に対して、即座に、“そこそこの力”で、対応してくれる。そこで排除できず、バリアをすり抜けてしまった異物は、獲得免疫にバトンタッチ。獲得免疫は、自然免疫から受け取った情報をもとに、その異物を攻撃するための抗体をつくり、完全排除に乗りだすというわけだ。

「ただし、いまの新型コロナウイルスには、獲得免疫が十分に作用するかどうか、難しいところ。次々と変異しているため、数ヵ月前に打ったワクチンが新しい型に完全にハマるかわかりませんし、一度感染しても、それでできた抗体が、新たな変異株に有効とは限りません。もちろん、重症化リスクを下げる効果はあるので、ワクチンは接種したほうがよいとは思います。ただ、それだけに頼るのではなく、最初のバリアである自然免疫を、しっかりと正しく働かせることが大切。それには、生活習慣がポイントになります」

継続的な乳酸菌摂取が、健康への近道!

写真:アフロ(左)、写真:mauritius images/アフロ(右)

特に、自然免疫の代表格であるNK(ナチュラルキラー)細胞は、20代が活性のピークで、30代以降は急下降してしまう。それを少しでもくい止め、活性を高めるには、「自分のペースで、メリハリのある生活を送ることが有効」だという。

「身体を温める、声を出して笑う、なるべく規則正しい生活をするなど、NK活性を促す方法はいろいろありますが、勘違いされやすいのは、ストレスと運動。ストレスは健康を害すると思われがちですが、実はノーストレスだと、NK活性を下げてしまうんですよ。むしろ、ストレスが適度にあるほうが、免疫は上がります。仕事でいうなら、“ドヤ顔”ができるような時。ある程度プレッシャーのある仕事を成し遂げ、達成感や充実感を抱いた状態をイメージしてもらうと、わかりやすいと思います」

運動についても、ハードなものは免疫には逆効果。運動中はNK活性が上がるものの、運動後は、急激にダウンしてしまう。

「おすすめは、『いい汗かいたな。気持ちいいな』と思う程度の運動を、週2、3回、定期的に続けること。自転車で走るでも、ちょっと早歩きするでもOK。心拍数100程度を目指せば十分です」

免疫を高めるには、食生活も重要なファクターのひとつ。

「バランスよく、楽しく、食事をすることを基本に加えて、免疫に直接作用する食べ物を積極的に活用してほしいですね。その代表格は、乳酸菌。乳酸菌は、ヨーグルトなどの乳製品、漬物、みそ、しょうゆなど、身近なものに含まれています」

乳酸菌の効果を実証するのが、佐賀県有田町の小中学生にR-1乳酸菌が入ったヨーグルトを半年間摂取してもらい、それ以外の地域の小中学生とのインフルエンザ累積感染率を比較した下記のデータだ。

※有田町の健康増進事業によってまとめられたもの

R-1乳酸菌を摂取した有田町の小中学生の欠席数は、その周辺のA市、B市、C市、佐賀県全体に比べてかなり少なく、感染率が低く抑えられていることがわかる。

「乳酸菌は、継続的に摂取するのもポイント。免疫を上げる目的なら、最低でも2、3週間は毎日食べるようにし、できれば、その後もコンスタントに摂るようにしてください。口にするタイミングは、朝でも夜でも構いませんが、胃酸が薄い食後のほうがよいでしょう」

感染症をはじめとする病原体から身を守り、健康をキープするためにも、自然免疫を整える生活習慣、早速取り組みたい。

順天堂大学大学院医学研究科准教授
竹田和由

1991年、東北大学大学院歯学研究科博士課程修了。アメリカ留学後、新潟大学医学部医動物学講座助手、順天堂大学医学部免疫学講座講師などを経て、2014年から現職。専門は免疫学(腫瘍免疫、NK・KNT細胞の機能解析)。

TEXT=村上早苗

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