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2022.07.19

堀江貴文「腎臓とリンが、早老化の原因となる!」

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する連載「金を使うならカラダに使え!」。第10回のキーワードは「腎臓とリン」。尿をつくる臓器である腎臓と骨や歯を形成するリンは、ともに地味な存在と思われがちだ。しかし近年、両者が老化に深く関わっていることが明らかになったのをご存知だろうか? 腎臓とリンの関係から、その仕組みを解明した自治医科大学の黒尾 誠教授との対談を2号連続でお届けする。後編はこちら【過去の連載記事】

連載「金を使うならカラダに使え!」

40代から機能低下する腎臓と細胞毒になりうるリン

堀江貴文(以下堀江) 先生の著書のタイトルが『腎臓が寿命を決める』ですが、これはどういうことなんですか?

黒尾 誠(以下黒尾) 腎臓は地味な存在で、尿をつくる以外の働きはあまり知られていません。実は1991年に、マウスの遺伝子操作実験をしていた際、誤って遺伝子の一部を壊してしまい、突然変異の遺伝子欠損マウスができたことが腎臓の研究を始めたきっかけです。

堀江 どんなマウスだったんですか?

黒尾 毛が薄く、背中が曲がっていて筋力が弱く、雄雌ともに不妊で動脈硬化と心肥大、骨粗しょう症などの症状があって、健常なマウスより早く死んでしまう。老化が加速している状態です。もしかしたら、私が「老化抑制遺伝子」を壊したために老化を加速させたのではないかと考えて、遺伝子を探し始めました。

堀江 30年も前のことなんですね。

黒尾 はい。偶然からのスタートでした。それから6年後の’97年に、老化を抑制する遺伝子を世界で初めて発見し、クロトー(Klotho)遺伝子と名づけました。ギリシャ神話の「生命の糸」を紡ぐ女神の名前にちなんでいます。

堀江 クロトー遺伝子は何をしてるんですか?

黒尾 体内のリン(元素記号P)の恒常性維持のために、重要な役割をしていることがわかりました。リンは生命の維持に必須の六大元素のひとつ(他に水素・炭素・窒素・酸素・硫黄)で、骨(リン酸カルシウム)、細胞膜(リン脂質)、遺伝子のDNA、細胞のエネルギーとなるATPを構成している成分。我々は普段、食事からリンを摂取しています。

堀江 リンを摂る、って意識はほとんどないですよね。

黒尾 そうですね。珍しい栄養素ではなく、肉や魚介類などに多く含まれているので。リンの摂取を感知すると骨細胞がFGF23(線維芽細胞増殖因子23)というホルモンを分泌するのですが、FGF23は血中を流れて腎臓に届き、受容体と結合すると「リンを排泄せよ」という指令を届けます。クロトー遺伝子は、FGF23からの指令を受け取る受容体の役割をしているんです。身体に入ってきた成分は過不足のない状態に保たれることが重要なので、過剰に摂取されたリンは尿中に排泄されるんです。このように、身体にリンが溜まりすぎないようにするシステムを腎臓が担っていることがわかりました。

堀江 遺伝子欠損マウスにはクロトー遺伝子がないから「リンを排泄せよ」の指令が受け取れないわけですね。

黒尾 はい。よって、不要なリンが排泄されず、体内に溜まってしまうんです。過剰なリンが老化に関連するかどうか、エサに含まれるリンの量を変えて食べさせてみたところ、0.1%以下にすると、欠損マウスの老化症状が消えて寿命も延びました。つまり、リンが老化を加速することがわかったのです。

堀江 リンの何が身体に悪いんですか?

黒尾 例えば、細胞の培養液にリンを加えると細胞が死滅します。高濃度のリンは細胞毒となるのです。尿中にリンを排泄すれば血中のリン濃度はあまり上昇しませんが、尿をつくっている腎臓だけは常に高濃度のリンにさらされるのでダメージを受けやすい。腎臓は、血管と尿細管で構成される「ネフロン」という構造物の集合体です。ネフロンは血液をろ過するフィルターの役目をしていて、水や電解質などサイズの小さなものをろ過して「原尿」をつくり、その原尿が尿細管を流れるうちに必要な成分が必要量だけ再吸収されて血管に戻されます。不要とされたものが尿として膀胱に溜まるのです。リンを過剰に摂ると、原尿中にリンが多く排泄されます。するとリン酸カルシウムの結晶となって析出します。これは針状結晶のため、尿細管を傷つけることもあります。尿細管の障害でネフロン数も減少してしまう。その結果、フィルターが減ってリンが排出しにくくなるという悪循環になります。

堀江 年齢によっても腎臓の老化は進むんですか?

黒尾 進みます。腎臓のろ過機能の主役であるネフロンは加齢とともに減少し、50~60代になると、その数は若い時の約半数になるとされています。50代以降で糖尿病や高血圧などの、腎臓に合併症をきたす生活習慣病を発症するとネフロンの減少はさらに加速し、一定レベルより減ると慢性腎臓病になります。腎臓病は今や成人の8人に1人が患う”国民病”とされていて、初期は無症状ですが進行すると腎不全となり、身体に不要な成分の排泄ができなくなるため腎移植や人工透析が必要になってしまう。人工透析の患者の症状は、前述したクロトー欠損マウスと非常によく似ています。尿中リン排泄障害で血中リン濃度が上昇し、血中に析出したリン酸カルシウムが血管を通って全身を巡り、老化が加速するんです。

堀江 なるほど、ネフロンの減少度合いはイメージできます。FGF23を測定することはできるんですか?

黒尾 自由診療でしたら、血液検査でFGF23の数値を測定できるクリニックはあります。

堀江 次回は、測定結果を見てどんな状態なのかを把握し、生活習慣をどう変えて腎臓の老化を予防していくかについてお話をうかがえたらと思います。

黒尾 将来的には、FGF23が保険適用の検査になって、健診でも測れるようになるとよいと考えています。時間はかかるかもしれませんが。

※この連載で紹介する医療は、研究中の医学に基づいて自由診療で行われており、現在も検証や臨床試験が続いています。

 

Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事として予防医療の啓蒙も行う。

Makoto Kuroo
自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部教授。東京大学医学部医学科卒業。1997年、余分なリンを腎臓から排出させる老化抑制遺伝子「クロトー」を発見。著書は発売1ヵ月で4刷・6万部のベストセラーに。

『腎臓が寿命を決める』

『腎臓が寿命を決める』
¥946 幻冬舎新書

 

過去連載記事

COMPOSITION=海野由利子

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