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HEALTH

2021.07.30

治療困難だった疾患や痛みに挑む! 再生医療をリードする「TOPs細胞」とは!?

次世代の治療法として脚光を浴びているのが、患者の身体から組織を採取・培養し、それを投与・移植する「培養幹細胞治療」。関節や靭帯の損傷にリンパ浮腫、シワや頭髪改善など、幅広い分野で活用が進んでいる。中でも注目されているのが、整形外科および形成外科領域で生み出されたヒト脂肪由来幹細胞、TOPs細胞だ。その生みの親であり、培養幹細胞治療の第一人者である辻晋作医師に、TOPs細胞が秘める可能性と今後の展望を語ってもらった。

培養幹細胞によって自然治癒力が促進される

「たった1回の注射で、長年の関節の痛みが軽減した」「施術後の肌が目に見えて若返った」など、高い効果に期待が集まっている培養幹細胞治療。
「人間の身体は約60兆個の細胞から成り立っていると言われています。ただし、細胞には寿命があり、古い細胞は徐々に失われてしまうため、新たな細胞を補充しなければなりません。そこで大きな役割を果たすのが、細胞の元とされる幹細胞。幹細胞が分裂、分化することで、新しい細胞が補充されるのです。また、近年の研究によって、幹細胞には、人間に備わっている修復システム、いわば自然治癒力を促す働きもあることもわかりました」と、辻医師。もともと人間の体内に存在している幹細胞を、人工的に培養し、注射や点滴などで補充。それによって、細胞の修復を促進し、本来の機能を取り戻させるのが、培養幹細胞治療というわけだ。

本人の脂肪から採取することでリスク&負担を軽減

1960年代に骨髄から発見された幹細胞だが、2000年代に入ると、脂肪組織にも同じような組織幹細胞があることが判明。いずれも「間葉系幹細胞」と呼ばれ、増殖能力が非常に高い上に、神経や筋肉、脂肪、骨など、さまざまなものに分化するという特徴を持つ。
ただし、骨髄から幹細胞を採取する場合、疼痛が大きく、身体への負担やリスクも伴う。一方、脂肪からの採取は、局所麻酔をし、身体に4mm程度メスを入れるだけでOK。施術時間は30分程度で済み、入院不要、身体へのダメージが少ないなど、メリットが多々ある。
「TOPs細胞は、このヒト脂肪由来幹細胞を用いています。しかも、患者様本人の脂肪から採取する自家細胞なので、身体に戻した後に感染症や副作用を発症する危険性が極めて低いんですよ」

同門発の臨床とアカデミアの協働で生まれた「TOPs細胞」

辻医師が幹細胞治療と出会ったのは、形成外科で、再生医療の走りといわれる血小板治療に携わっていた時だった。研究を重ねるうちに、「患者様への負担が少なく、体内に入れた時のリスクが低い上に効果が高いすばらしい治療法だ!」と感銘を受け、独自の細胞培養法を開発。これを基盤に、東京大学医学部整形外科の齋藤琢准教授との共同研究で、整形外科領域で改善を進めてきた。そうして生まれたヒト脂肪由来幹細胞とその方法を、「TOPs細胞」及び「TOPs」という商標で、共同出願したのである。

「私と斎藤先生は、東京大学医学部医学科の同期生(1998年卒)。同門発の臨床とアカデミアの協働で生み出されたことを記念し、東京大学、辻と齋藤のイニシャルの共通の頭文字Tを先頭に置き、整形外科領域、形成外科領域で生み出されたヒト脂肪由来幹細胞という意味を示す英語表現Orthopaedics and Plastic surgery-oriented adipose-derived stem cellの中から頭文字のOとPをとり、他の領域への展開の期待も込めて、TOPs細胞と命名しました。これをブランド化することで、継続的な技術の向上とエビデンス構築により一層力を注ぎたいと考えています」

培養を担うことで、幹細胞治療の普及を後押し

辻医師らは、細胞培養加工施設、CPC(Cell Processing Center)も設立。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」にのっとった厳しい基準をクリアし、2020年8月、厚生労働大臣から特定細胞加工物製造が許可された。ここでは、辻医師はじめ再生医療認定医監修の下、トップレベルの技術を誇る培養士が、医療機関から預かった患者の脂肪組織を、最終的な細胞検査まで含めて培養している。

「培養幹細胞治療は、注射や点滴での投与が中心なので、幹細胞の培養さえしっかりできれば、さまざまな医療機関で活用いただけます。ただし、培養を各医療機関で行うのは、設備面でも技術面でも難しい。そこで、培養を担う専門施設として、CPCを設立したのです。培養幹細胞治療は、現段階では自由診療で費用が高いのが大きな問題。けれど、この治療法を行う医療機関が増えれば、コストはさらに下げられると考えています」

現在は、主に形成外科や整形外科、美容で用いられている培養幹細胞治療だが、今後は、脳神経外科や神経内科、免疫系など幅広い分野での活用が期待されているという。
「このすばらしい治療法が、多くの患者様に利用いただけるよう、これからも尽力していきます」

 

■プロフィール
辻 晋作
Shinsaku Tsuji
1974年生まれ。医学博士。アヴェニューセルクリニック再生医療統括医師、CPC㈱取締役・事業統括医師。東京大学医学部卒業後、発毛や形成外科領域の研究・治療を行う中で、脂肪由来幹細胞の整形外科領域における可能性に着目。2016年に同クリニックを設立し、東京大学や大手企業と協力しつつ、培養幹細胞治療の普及に努める。最新刊、『あなたを救う培養幹細胞治療』(集英社インターナショナル)が8月6日に発売予定。

 

TEXT=村上早苗

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