今回は、ジョン・ラームに学ぶシャフトクロスの解消法を紹介する。

世界の頂点に君臨していたジョン・ラーム
「今、最も強いプロゴルファーは誰か」と問われれば、多くの人はスコッティ・シェフラーと答えるだろう。しかし、数年前まではジョン・ラームの名を挙げる人も少なくなかった。
ラームはスペイン出身の30歳。アリゾナ州立大時代に世界アマチュアランキング1位となり、2016年の全米オープンでローアマを獲得するとプロに転向した。
翌年にはファーマーズ・インシュランス・オープンでPGAツアー初優勝を挙げ、PGAツアーと欧州ツアーで着実に勝利を重ねた。2020年にはセベ・バレステロス以来となるスペイン人として世界ランキング1位に輝き、2021年の全米オープンと2023年のマスターズを制している。
また、欧州代表としてライダーカップでも存在感を示してきた。2018年、2020年(2021年開催)、2023年と出場し、2025年もキャプテンに推薦で選出され、4度目の欧州代表入りを果たす。
ラームにとって2023年は、PGAツアーでマスターズを含む4勝を挙げ、世界ランキング1位を奪還する充実の一年となった。
しかし同年12月にはLIVゴルフへ電撃移籍し、メジャーを除くPGAツアーには出場できない状況に。その影響で世界ランキングは下降を続け、シェフラーとの年間を通じた直接対決も依然として実現は難しいままである。
そのような状況のなか、2025年のLIVゴルフにおいて、ラームは圧倒的な安定感を示した。
13試合で優勝こそなかったが、2位4回を含む好成績を残す。さらに最終戦の最終日には11アンダー「60」をマークし、ポイントランキング1位のホアキン・ニーマンを逆転。LIVゴルフ初となる2季連続の年間王者に輝いた。加えて、自ら率いる「リージョンXIII」をチーム王者に導き、個人・団体の二冠を達成した。
個性的なコンパクトスイング
ラームの強みは、188cm・100kgの体格から繰り出されるパワフルなショットである。飛距離に加えて方向性も優れ、さらにパッティングも巧みだ。
一方で、そのスイングは非常に個性的である。ウィークグリップでクラブを握り、トップでは左手首を掌屈させる。トップのポジションは低く、クラブは目標の左方向を向くレイドオフ(クラブがやや寝た状態)となり、スイングテンポは極めて速い。
このスイングは体格とパワーがあるからこそ可能で、方向性を重視した振り方といえる。アマチュアゴルファーが無理に真似すれば、かえって飛ばなくなる場合もある。
ただし、ラームのスイングは、トップでクラブが目標の右を向くシャフトクロスや、トップが大きくなり過ぎるオーバースイングに悩むアマチュアに有効なヒントを与える。
シャフトクロスやオーバースイングの主な原因は、トップで右脇が開いてしまうこと。ラームのように右脇を締め、体と腕を同調させればトップは自然とコンパクトになり、シャフトクロスも防げる。
さらに、ラームのようなレイドオフのトップをイメージすることで、シャフトクロスの状態と真逆の動きを取り入れ、中和されることでトップが丁度良い位置に収まり、改善しやすくなるだろう。
もう一つのラームの特徴はスイングテンポの速さだ。これを取り入れることで、バックスイングを大きく振り上げる時間がなくなり、自然にコンパクトなトップを形成できる。
オーバースイングに悩むアマチュアは、バックスイングを速めに上げると効果的だ。その際には、手先だけでクラブを上げないよう注意することも重要である。
もちろん、ラームのスイングを完全に真似するのは難しい。コンパクトなトップで飛ばせるのは強靭な体格と筋力があってこそ可能であり、掌屈も人によっては合わない場合があるため、無理に取り入れる必要はない。
だが、シャフトクロスやオーバースイングに悩むアマチュアにとって、ラームのスイングの一部を取り入れることは、安定したショットにつながる可能性がある。
ジョン・ラームに学ぶシャフトクロスの解消法の動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。