GOLF

2022.11.12

タイガー・ウッズが実践する、バンカーショットのための変わった素振りの意味

今回は、バンカーショットについて。連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……

タイガー・ウッズが実践する、バンカーショットのための変わった素振り.

【T・ウッズのスピンの効いた柔らかなバンカーショット練習法】

グリーン周りのバンカーショットでは芝の上のボールを打つのとは違い、インパクトで砂から大きな抵抗を受ける。そのため、芝の上にボールがある感覚で打つと大きなミスになりやすい。バンカーショットは他のショットとは全く異なる打ち方だと思ってもいいだろう。

トッププロも例外ではなく、通常のショットやアプローチでは行わない動作をバンカーショットで見せることがある。タイガー・ウッズはバンカーショットの練習の際に、ダウンスイングの途中で手元の動きを止め、クラブヘッドを先行させるような動作を行いながら素振りを行うことがある。手首を極端に使ってハンドレイトのインパクトをイメージしながら素振りをしているように見えるため、一見すると奇妙な動きをしているように感じると思う。「手打ちにならないように」「手ですくい打ちをしないように」と口酸っぱく言われてきた人たちは「タイガーはいったい、何をしているのだ」と思うことだろう。

しかし、ウッズの見慣れない素振りはバンカーショットに欠かせない動きをイメージしている。このウッズの少し変わった素振りの意味とポイントを解説しよう。

【ヘッドを走らせバウンスを使う】

ウッズがバンカーショットの前に行っている素振りには2つの目的がある。

1つめは、手元が目標方向に流れるのを防ぐことだ。手元がインパクトで目標に流れてハンドファーストの状態が強くなると、刃の部分の「リーディングエッジ」が接地しやすくなり、クラブの裏面にある出っ張りの部分の「バウンス」が使いにくくなる。このような状態になると、リーディングエッジが砂に刺さりやすくなり、ダフリやトップのミスにつながりやすい。加えて、ロフトが立つためボールをフェースに乗せて運ぶ打ち方がしづらくなる。ハンドレイトのイメージで素振りをすることで、手元が目標方向に流れるのを防ぎ、バウンスを砂の上を滑らせながら、ロフトを適切に管理することができる。

もう一つはヘッドを走らせる意識を持つことだ。インパクト前に手元を追い越すようにクラブのヘッドをリリースして走らせることで、砂の抵抗に負けずにバウンスを滑らせることができる。ダウンスイングでクラブが地面と平行になったあたりで手元を止めてクラブヘッドをリリースするイメージを持つといいだろう。

この素振りでは体の動きより手の動きがメインとなるが、「手先を使ってクラブをコントロールするのは良くないのではないか」と思う人もいるだろう。

バンカーショットでは、ヘッドを走らせることやバウンスを使うことを最優先にしてほしい。そのため、バンカーショットでは考え方を変えて、手を使うという発想ではなく、クラブヘッドの動きをできるだけ大きくすると考えるといいだろう。クラブヘッドを大きく動かすためには、支点となるグリップエンドの動きを少なくしてクラブヘッドの動きを大きくする必要がある。ダウンスイングで手元の動きを少なくしてヘッドを最大限使うことを考えると、ウッズのように手元を止めてヘッドをリリースする動きは理にかなっている。

これまでウッズの行っているバンカーショットの素振りのメリットを述べてきたが、くれぐれも注意してほしいのは、本当にインパクトがハンドレイトになっている「すくい打ち」の状態でバンカーショットを打っていいというわけではないことだ。ウッズのバンカーショットの素振りと実際のインパクトの動きは異なり、右手首が手のひら側に折れるようなすくい打ちの状態にはなっていない。この練習はあくまでも素振りでヘッドを加速させることやバウンスを使うイメージを養うことが目的だ。普段手先だけですくい打ちをしてしまう人は、ウッズのイメージで素振りをすることですくい打ちが助長される可能性があるので注意が必要だ。

バンカーショットは、極論すると「手打ち感覚」で打つと考えてもらっていいだろう。ウッズの素振りを参考にして、バウンスを滑らせてヘッドを走らせる打ち方を身に付けてほしい。そうすれば、スピンの効いた柔らかなバンカーショットを打てるようになり、バンカーへの苦手意識も払しょくできるはずだ。

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連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……
世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子によるゴルフレッスン。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

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TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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